保有水平耐力構造設計と崩壊形耐震性能バランス解析

保有水平耐力構造設計と崩壊形耐震性能バランス解析

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保有水平耐力構造設計の基準と解析

保有水平耐力構造設計と崩壊形耐震性能バランス解析
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保有水平耐力構造設計の基準とルート3の特徴

保有水平耐力構造設計は、建築基準法施行令第82条に基づき、主に大規模建築物や高層建築物で採用される構造計算基準の一つです。いわゆる「ルート3」と呼ばれ、1次設計(許容応力度計算など)と2次設計(層間変形角や保有水平耐力の確認)からなります。ルート3は、60m以下の建築物に適用でき、合理的かつ経済的な設計が可能となるのが特徴です[1][2]。
1次設計では、許容応力度計算や使用上の支障の確認、屋根ふき材等の構造計算が行われます。2次設計では、層間変形角の確認と「保有水平耐力≧必要保有水平耐力(Qu≧Qun)」の成立確認が中心となります。ここでQuは建物が崩壊形に達したときの各階の主要構造部材が負担する水平力の和を指します[1][4]。

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保有水平耐力計算の流れと崩壊形の定義

保有水平耐力計算は、静的増分解析(荷重増分解析)を用い、建物に水平方向の外力を段階的に加え、崩壊形に至るまでの各階の水平力の和を算出します。崩壊形とは、構造耐力上主要な部分(柱・耐力壁・梁など)が塑性変形し、建物が耐力を失う状態を指します[1][3][6]。
崩壊形には全体崩壊形、部分崩壊形、層崩壊形などがあり、それぞれ部材の応力状態や変形の進展に応じて分類されます。崩壊形の判定は、建物の設計方針や構造形式によって異なり、崩壊形を適切に想定することが耐震性能評価の要です[6]。
崩壊形や部材応力の詳細な分類と設計フローの参考資料

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必要保有水平耐力の算定式とバランス・靭性の影響

必要保有水平耐力(Qun)は、次の式で算定されます:
Qun = Ds × Fes × Qud
・Ds:構造特性係数(靭性に優れた建物ほど小さくなり、必要耐力が低減される)
・Fes:形状係数(剛性率や偏心率によるバランス評価。バランスが悪いと合格ラインが上がる)
・Qud:地震層せん断力(Co≧1.0で再計算)

靭性(変形能力)が高い建物はDsが小さくなり、必要保有水平耐力が下がります。逆に、耐力壁を多く設けるなどして強度を高めても、靭性が低下するとDsが大きくなり、必要保有水平耐力も上昇する場合があります[4][5][8]。
保有水平耐力計算の詳細な基準や式の解説

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保有水平耐力設計における部材・材料強度と保証設計

保有水平耐力の算定には、建築物の主要部材(柱・梁・耐力壁など)の材料強度が重要な役割を果たします。建築基準法施行令第4款の規定により、崩壊荷重時の材料強度で計算する点が特徴です。
また、保証設計やせん断破壊の取扱いも重要で、ラーメン構造ではせん断破壊部材が先行しないようにし、崩壊メカニズムを形成するまで押し切った場合の応力を保有水平耐力時応力と定義します[7]。
保証設計やせん断破壊、応力状態の参考解説

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保有水平耐力構造設計の応用と意外な落とし穴

保有水平耐力構造設計では、建物全体の耐力バランスや靭性評価が合格ラインに大きく影響します。意外な落とし穴として、耐力壁やブレースを増やし強度を上げ過ぎると、靭性が低下し、結果として必要保有水平耐力が上昇し不利になる場合があります。
また、設計段階で崩壊形の想定を誤ると、実際の地震時に想定外の部分崩壊や層崩壊が発生し、耐震性能が著しく低下するリスクもあります。
さらに、保有水平耐力計算を行った場合でも、耐久性等関係規定や一部の構造仕様規定は適用除外とならないため、法規の読み違いに注意が必要です[1][5][8]。