
37条書面は、宅地建物取引業法第37条に基づいて不動産取引の契約が成立した後に交付される重要な契約書面です。この書面は、売買契約や賃貸借契約の内容を明確にし、後のトラブルを防止するために宅建業者が契約当事者に対して遅滞なく交付することが義務付けられています。
2018年4月の宅建業法改正により、既存住宅取引におけるインスペクション(建物状況調査)に関する事項が37条書面の記載事項として追加されました。この改正は、既存住宅の流通促進と、売買後のトラブル防止を目的としています。
外壁塗装業者にとって、このインスペクション制度は重要なビジネスチャンスとなります。なぜなら、建物の外壁状態も調査対象となるため、インスペクションの結果に基づいて外壁塗装の必要性が明確になるからです。また、インスペクション業務自体に参入する可能性も広がっています。
37条書面には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」があります。特に既存建物の売買契約では、以下の6項目が絶対的記載事項として定められています:
特に注目すべきは3番目の項目です。2018年4月の法改正により追加されたこの項目は、インスペクション(建物状況調査)の結果を契約書に反映させることを義務付けています。
外壁塗装業者としては、この項目に記載される外壁の状態に関する情報が、お客様への提案の重要な根拠となります。例えば、「2階南東側外壁に塗膜の剥がれが確認された」といった記載があれば、その部分を重点的に調査し、適切な塗装プランを提案することができます。
なお、建物の賃借契約の場合は、3番目と6番目の項目は記載不要となっています。これは賃貸借契約の性質上、建物の構造に関する責任が売買契約とは異なるためです。
37条書面と混同されやすいのが35条書面(重要事項説明書)です。両者の違いを明確に理解することは、外壁塗装業者がインスペクション業務に関わる際に非常に重要です。
主な違いは以下の通りです:
項目 | 35条書面(重要事項説明書) | 37条書面(契約書) |
---|---|---|
交付時期 | 契約成立前 | 契約成立後遅滞なく |
交付対象 | 買主・借主(売買の場合は買主のみ) | 契約の両当事者(売主・買主、貸主・借主) |
説明義務 | 宅地建物取引士による説明が必要 | 説明義務なし(交付のみ) |
インスペクション関連の記載 | インスペクション実施の有無とその結果の概要 | 建物の構造上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項 |
37条書面におけるインスペクション結果の記載は、具体的にどのように行われるのでしょうか。国土交通省が示している記載イメージを参考に見ていきましょう。
基本的な記載フォーマットは以下のようになります:
外壁塗装に関連する記載例としては、以下のようなものが考えられます:
インスペクションを実施しなかった場合や、実施したが特に問題が見つからなかった場合は、「建物の構造耐力上主要な部分等の状況について双方が確認した事項:無」と記載します。
外壁塗装業者としては、このような記載内容を理解し、インスペクション結果に基づいた適切な提案ができるよう準備しておくことが重要です。また、インスペクション業務に参入する場合は、記載内容が法的な効力を持つことを認識し、正確かつ専門的な調査報告書を作成する能力が求められます。
インスペクション制度の義務化は、外壁塗装業者にとって様々なビジネスチャンスをもたらします。具体的には以下のような機会が考えられます:
特に注目すべきは、インスペクション結果が37条書面に記載されることで、外壁の状態が契約内容の一部となる点です。これにより、「契約書に記載された外壁の状態を改善するための塗装工事」という、より説得力のある提案が可能になります。
また、インスペクション業務自体に参入することで、物件の売買前に関わることができ、早い段階からお客様との関係構築が可能になります。外壁塗装の専門知識を持つ事業者によるインスペクションは、より詳細な外壁状態の評価ができるという付加価値を提供できます。
外壁塗装業者がインスペクション業務に関わる際、または37条書面に基づいて提案を行う際に注目すべき外壁調査のポイントを解説します。
インスペクションにおける外壁調査では、主に以下の点に注目します:
これらの調査結果は、37条書面の「建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項」として記載されます。外壁塗装業者としては、これらの項目について専門的な知見を持ち、適切な調査と報告ができることが重要です。
特に、単なる美観上の問題と構造耐力に影響する劣化を区別して説明できることが、信頼性の高いインスペクション業務につながります。例えば、「南面外壁のチョーキングは美観上の問題であり構造上の問題はない」「西面外壁のひび割れから雨水が侵入し、木部の腐食リスクがある」といった具体的な説明ができると、お客様の理解と信頼を得やすくなります。
また、37条書面に記載された外壁の状態に基づいて塗装提案を行う際は、記載内容と提案内容の整合性を明確にすることが重要です。「37条書面に記載された外壁のひび割れを修繕し、雨水侵入のリスクを低減するための塗装工事」といった形で、契約書の内容と提案を結びつけることで、説得力のある営業活動が可能になります。
37条書面に記載されたインスペクション結果を活用した外壁塗装提案の具体例を紹介します。これらの事例は、実際の業務に応用できるモデルケースとなります。
ケース1: 外壁ひび割れが確認された物件
37条書面の記載:
提案アプローチ:
ケース2: 塗膜の剥がれが確認された物件
37条書面の記載:
提案アプローチ:
ケース3: 特に問題が確認されなかった物件
37条書面の記載:
提案アプローチ:
これらの提案では、37条書面に記載された内容を出発点として、専門家としての知見を加えた付加価値の高い提案を行うことがポイントです。単なる見積もり提示ではなく、契約書に記載された状況を踏まえた「問題解決型」の提案を行うことで、お客様の信頼を獲得しやすくなります。
また、インスペクション結果に基づく提案であることを明確にすることで、「売買契約の一部となっている建物状態の改善」という位置づけで工事の必要性を伝えることができます。これにより、単なる営業活動ではなく、契約履行の支援という