キセノンアークランプ式耐候性試験と塗料の耐久年数の評価方法

キセノンアークランプ式耐候性試験と塗料の耐久年数の評価方法

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キセノンアークランプ式耐候性試験の基本と塗料評価

キセノンアークランプ式耐候性試験の基本
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試験の目的

塗膜の耐久性を短期間で評価し、製品寿命を予測するための促進試験

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太陽光の再現性

紫外線から可視光線まで太陽光に近似した分光分布を持つ光源を使用

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環境再現

光照射、水噴霧、温湿度制御により屋外環境を人工的に再現

キセノンアークランプ式耐候性試験は、外壁塗装をはじめとする各種塗料の耐久性を科学的に評価するための重要な試験方法です。この試験は、自然環境下での劣化を人工的に促進させることで、製品の寿命予測や品質保証に役立てられています。
特に外壁塗装に携わる専門家にとって、この試験方法を理解することは、お客様に対して塗料の耐久性を正確に説明するための基礎知識となります。自然環境では数年から十数年かかる劣化プロセスを、わずか数百時間から数千時間で再現できるため、新製品開発や品質管理において欠かせない技術となっています。

キセノンアークランプ式耐候性試験の仕組みと特徴

キセノンアークランプ式耐候性試験の最大の特徴は、太陽光の分光分布に極めて近い光を再現できる点にあります。キセノンアークランプは、紫外線から可視光線にかけての波長域で太陽光に非常に近似した分光放射照度分布を持っています。これにより、実際の屋外環境での劣化現象を高い精度で再現することが可能です。
試験の基本的な仕組みは以下のとおりです:

  1. キセノンアークランプによる光照射
  2. 断続的な水噴霧(降雨の再現)
  3. 温度・湿度の制御
  4. これらの条件を繰り返し与えることによる劣化促進

試験機内では、塗膜サンプルを回転させながらキセノンアークランプの光を照射し、一定間隔で脱イオン水の霧を吹き付けます。この過程で、実際の屋外環境で起こる日光暴露、雨、温度変化、湿度変化などの要因による劣化を促進的に再現します。
JIS K 5600-7-7:2008「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第7節:促進耐候性及び促進耐光性(キセノンランプ法)」に基づく標準的な試験条件では、放射照度60W/m²(300〜400nm)、ブラックパネル温度63±2℃、湿度40〜60%の環境下で、120分の照射中に18分間の水噴霧を行います。

キセノンアークランプ式耐候性試験機の構造と操作条件

キセノンアークランプ式耐候性試験機は、高精度な試験環境を実現するために複雑な構造を持っています。代表的な試験機の構成要素と操作条件を見ていきましょう。
主要な構成要素:

  • 光源:7.5kW水冷式キセノンランプ(一般的な機種の場合)
  • フィルターシステム:光の波長特性を調整するためのインナーフィルタとアウターフィルタ
  • 試料回転機構:均一な照射を実現するための回転枠
  • 水噴霧装置:降雨を再現するためのノズル
  • 温湿度制御システム:試験環境の温度と湿度を制御する装置
  • 放射照度計:光の強度を測定・制御するセンサー

操作条件は試験目的や対象材料によって異なりますが、代表的な条件としては以下のようなものがあります:

試験項目 標準的な条件
放射照度 60W/m²(300〜400nm)、高促進試験では180W/m²まで
ブラックパネル温度 63±2℃(標準)、50〜95℃(範囲)
湿度 40〜60%RH(照射時)、95%RH(水噴霧時)
水噴霧サイクル 120分照射中に18分間の水噴霧(標準)
試験片寸法 70×150mm(標準サイズ)