
日本には交通工学や鉄道工学を専門的に学べる大学がいくつか存在します。特に注目すべきは、日本大学理工学部交通システム工学科で、交通工学のパイオニアとして長い歴史を持ち、自動車交通、鉄道、航空、海運など幅広い交通分野の総合技術を教育しています。名城大学理工学部交通機械工学科には鉄道工学研究室があり、機械工学とは別に交通機械工学の専門学科として鉄道や自動車・航空機などの運輸系の勉強ができる環境が整っています。大阪産業大学工学部交通機械工学科には鉄道工学コースがあり、元々鉄道関係の学校から始まった伝統を持つ大学として関西圏で有名です。
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これらの大学の特徴として、機械工学科とは別に「交通機械工学科」や「交通システム工学科」という専門学科を設置している点が挙げられます。通常の機械工学では製造業全般を扱いますが、交通機械工学科では鉄道車両、自動車、航空機、船舶といった交通機械に特化した教育を受けることができます。工学院大学電気電子工学科も鉄道分野で実績があり、東京・新宿駅前という立地の良さも魅力です。
参考)カリキュラム|交通機械工学科|理工学部|名城大学
国公立大学では、広島大学工学部第一類輸送システムプログラムがあり、船舶・鉄道・航空機・自動車と様々な輸送システムについて総合的に学ぶことができます。東京工業大学や秋田県立大学でも鉄道工学を学べる環境が整っています。
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交通機械工学科のカリキュラムは、教養科目、機械工学基礎科目、ものづくり科目、交通機械(自動車、航空・宇宙機、鉄道)関連科目、そして卒業研究に分類されています。1年次から段階的に専門性を高めていく体系的なプログラムが組まれており、学生は交通機械を通して社会に貢献できる機械技術者として育成されます。
参考)教育方針
日本大学理工学部交通システム工学科では、交通工学に関する幅広い分野を網羅したカリキュラムが用意されています。学生は交通ネットワークのデザインや都市に必要な新しい鉄道路線の設計など、実践的なスキルを身につけることができます。普通の授業では味わえない実習など実践的な内容の授業が多く、プレゼンテーションやフィールドワークを通じて実際の業務に近い経験を積むことが可能です。
参考)http://www.trpt.cst.nihon-u.ac.jp/pdf/shiorip5and6.pdf
大阪産業大学では2023年度から新カリキュラムが導入され、自動車および鉄道に関する科目群を整理・統合・再構成して、より実践的な教育体制を構築しています。鉄道工学コースでは鉄道工学を基礎から学び、フィールドワークで実践することを重視しており、鉄道の運行や管理業務、車両の設計や製造の仕事を目指す学生に最適な環境です。
参考)https://www.osaka-sandai.ac.jp/fc/en/tm/
名城大学では、機械工学の基礎と自動車工学、航空工学、鉄道工学などの応用科目を学び、さまざまな実験実習を通して講義で学んだ知識を体験・実感し、技術者としてのセンスを磨くことができます。
各大学の鉄道工学研究室では、最先端の研究が行われています。名城大学には日本で唯一、鉄道用に開発された竜巻発生装置があり、竜巻が鉄道車両に及ぼす空気力を解析する研究を行っています。この鉄道車両空力研究室では、竜巻による脱線・転覆事故の防止に貢献する研究に取り組んでおり、地球温暖化の影響で増加が予想される竜巻事故への対策を研究しています。
参考)全国でも珍しい鉄道工学を学ぶ研究室 空気力学で鉄道の安全に貢…
大阪産業大学の鉄道計算工学研究室では、計算工学の鉄道への応用を目指しており、大規模並列計算や解析手法の統合など高度シミュレーション技術を導入して、これまで未解明であった様々な鉄道固有現象の問題解決に取り組んでいます。シミュレーションの「予測」能力を活用し、現象を正確にモデル化して未来予測を行う研究が進められています。
参考)https://www.osaka-sandai.ac.jp/fc/en/tm-labo.html
大阪産業大学の鉄道工学研究室では、高速で走行する鉄道車両の空力的作用による沿線環境への影響、走行安全性や乗り心地、積雪時の走行、運転士の支援、LRTなど幅広い領域を研究対象としています。交通システム工学研究室では、自動車、鉄道、船舶、航空機など従来それぞれの工学分野で個別に扱われてきた交通機関の技術的課題を、他の交通機関も視野に入れて総合的・体系的にとらえる試みを行っています。
名城大学の鉄道車両振動研究室では、軽量化や構造簡素化、高速化などにより顕著となる「弾性振動」を低減する研究に力を入れており、鉄道車両の車体弾性振動に関する専門的な研究を展開しています。
参考)研究室紹介|交通機械工学科|理工学部|名城大学
交通工学や鉄道工学を学んだ学生は、JR各社や私鉄、鉄道車両メーカーなどへの就職が可能です。鉄道業界の技術職には、開発部門、土木部門、建築部門の3つの主要な部門があり、建築土木系の学生が多く活躍しています。
参考)職種・系統紹介
JR東海の採用では、総合職とプロフェッショナル職の2つの区分があります。車両・機械系統の総合職は、鉄道車両の開発、設計、メンテナンスなどを行う車両部門と、駅の機械設備や車両メンテナンス設備の開発、設計、管理などを行う機械部門に加え、技術開発や投資計画策定といった経営企画、営業、総務、人事、広報、安全対策など幅広い業務に従事します。プロフェッショナル職は、車両・機械系統の技術を支えるスペシャリストとして、新幹線、在来線、超電導リニア車両のメンテナンスや走行試験業務などにより専門技術を習得します。
鉄道業界の就職活動では、リクルーター面談や人事面談などの独自の選考方法を取り入れているという特徴があります。土木部門に就職するためには土木工学、社会基盤工学、都市工学など主に土木に関する分野を専攻している学生が中心に採用されています。
参考)鉄道業界の技術職になるためには? ESから面接までの傾向や対…
日本大学理工学部交通システム工学科は、交通工学のパイオニアとして長い歴史があり、JABEE認定学科でもあるため、鉄道業界への就職に有利な環境が整っています。学生は同級生や先輩に車好きや鉄道好きなど同じ興味を持つ仲間が多く、交通に関係する仕事を目指す学生にとって理想的な環境です。
参考)http://www.trpt.cst.nihon-u.ac.jp/assets/images/page/link/pdf/TRPT2025Sogogata.pdf
大阪産業大学システム工学部鉄道工学コースの偏差値は35.0~37.5で、共通テスト得点率は48~62%程度となっています。比較的入りやすい偏差値帯であり、鉄道工学を学びたい学生にとって現実的な選択肢となっています。前期AB選択教科や共通テスト利用など、複数の入試方式が用意されているため、自分に合った受験方法を選ぶことができます。
参考)大阪産業大学/システム工学部の偏差値・共通テスト得点率(入試…
日本大学理工学部交通システム工学科では、総合型選抜という入試方式があり、大学入学希望理由書、活動報告書、プレゼンテーション、面接から構成される試験が実施されています。交通システム工学科のアドミッション・ポリシーに適合しているかが重視され、交通工学への興味や熱意をアピールすることが重要です。
受験準備としては、出題された課題テーマに対して自分なりの研究や提案をまとめ、プレゼンテーション資料を作成することが求められます。文章を作成する課題は、友人や高校の先生に見てもらい改善点を洗い出して修正することを繰り返す必要があります。プレゼンや面接試験は、数週間前から何度も練習し、本番に近い形で緊張感を持って準備することが合格への近道です。
鉄道のことを学問的に勉強するためには、機械工学、電気工学、土木工学など様々な分野からアプローチする方法があります。ブレーキの仕組みや新たな制御方法の考案などに興味がある場合は、電気電子工学科や機械工学科でも鉄道に関連する研究を行っている研究室を探すことができます。
参考)鉄道のことを学問的に勉強したいと思ったら? - 鉄道のことを…
名城大学理工学部交通機械工学科公式サイト
名城大学の交通機械工学科のカリキュラムや研究室の詳細情報が確認できます。鉄道工学を含む交通機械全般について学べる環境が紹介されています。
日本大学理工学部交通システム工学科公式サイト
交通工学のパイオニアとして知られる日本大学の交通システム工学科の情報が掲載されています。カリキュラムや入試情報を確認する際の参考リンクとして有用です。
大阪産業大学工学部交通機械工学科鉄道工学コース
日本で唯一の鉄道工学コースについての詳細情報が確認できます。鉄道の運行や管理業務、車両の設計や製造を学びたい方向けの情報が掲載されています。