
漏電遮断器は、電気設備の安全を守るための重要な保護装置です。主な構成要素は、零相変流器(ZCT)、電子回路、電磁装置、そして遮断器部です。回路内の「行き」と「帰り」の電流値を常時監視し、正常時は両者が一致しています。しかし、絶縁劣化や機器の故障などで漏電が発生すると、行きと帰りの電流値に差が生じます。この差(漏れ電流)をZCTが検知し、電子回路が増幅して遮断信号を生成、電磁装置が作動して回路を瞬時に遮断します。一般的な家庭用では15mA~30mA程度の漏電電流を0.1秒以内に検知し遮断するため、感電や火災事故を未然に防ぐ役割を果たします[1][3][4]。
漏電遮断器は、感電事故や漏電火災を防ぐために不可欠な装置です。電気設備の規模や用途に応じて適切なタイプを選定することが重要で、特に水回りや湿気の多い場所では必須となります。漏電遮断器が設置されていない場合、漏電による感電や火災リスクが大幅に高まります。住宅や工場、商業施設など、あらゆる電気設備において法令や基準に基づいた設置が求められています[2][6][8]。
漏電遮断器の設置基準は、電気設備技術基準や電気用品安全法などで細かく定められています。特に金属製外箱を持つ機械器具や、湿気・水気の多い場所、対地電圧が150Vを超える場合には設置が義務付けられています。住宅用分電盤の主開閉器には原則として漏電遮断器を設置することが求められ、感度電流や動作時間、過電流保護機能の有無など用途に応じた選定が必要です。また、防雨型や防浸型など、設置環境に応じた製品選定も重要です。設置場所は点検が容易な場所を選び、高温・多湿・振動の激しい場所は避けるべきです[6][7][8]。
漏電遮断器を複数設置する場合は「保護協調」が非常に重要です。上位(主幹)と下位(分岐)の遮断器で感度や動作時間を調整しないと、局所的な漏電でも建物全体が停電するリスクがあります。例えば、主幹には感度が低く動作時間が遅いタイプを、分岐には高感度・高速動作型を設置することで、漏電発生時の影響範囲を最小限に抑えられます。これにより、必要な回路のみを遮断し、他の設備の稼働を維持できます[3][8]。
漏電遮断器は定期的な保守点検が不可欠です。感度電流試験や動作時間試験を実施し、定格感度電流の50%以上で動作し、定格感度電流以下で確実に遮断できるかを確認します。長期間の使用や頻繁な開閉、過電流トリップなどにより絶縁性能や機構部が劣化するため、異常動作時や短絡電流遮断後には臨時点検も必要です。最近ではIoT対応の漏電遮断器や、遠隔監視・自動点検機能を搭載した製品も登場しており、設備管理の効率化や安全性向上が進んでいます[1][5]。
【参考リンク】
設置基準や選定方法の詳細解説(設置場所・防雨型などの要件も記載)
設置基準・選定方法の詳細解説
【参考リンク】
保守点検の具体的な方法や判定基準(感度電流試験・動作時間試験)
保守点検・試験方法の詳細