新古典主義建築アメリカの特徴と代表的建築物

新古典主義建築アメリカの特徴と代表的建築物

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新古典主義建築アメリカの特徴と歴史

新古典主義建築アメリカの要点
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古代ローマ様式の採用

アメリカ独立後、共和制ローマに範を取った列柱とドームが特徴的なデザインを確立

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国家威信の象徴

18世紀後期から20世紀初頭にかけて公共建築の主流様式として広く採用

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ボザール様式の影響

パリのエコール・デ・ボザールで学んだ建築家が技術を本国に持ち帰り発展

新古典主義建築アメリカにおける成立背景と特徴

新古典主義建築は18世紀後期にフランスで興った建築様式で、アメリカでは独立後の国家形成期に重要な役割を果たしました。アメリカでは古代ギリシアよりも古代ローマのスタイルに範を取ることが多く、これはローマの共和制がアメリカの連邦制に近いと考えられたためです。1797年に完成したマサチューセッツ州議事堂は、正面に列柱と三角形のペディメント、その上にドームが載るフェデラル(連邦)スタイルの典型例となっています。
参考)https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_01367/

この様式は装飾過多で軽薄なロココ様式に対する反動として、論理的で厳粛な啓蒙的性格を持つものでした。アメリカとフランスに共和国が樹立されると、古代ギリシャや共和政時代の古代ローマの民主主義との結びつきから、新政府の指導者たちは公式の美術として新古典主義を採用しました。対称性、列柱、ドーム、ペディメントといった古典的要素が建築の基本構成となり、国家の威信と安定性を視覚的に表現する手段として機能しました。
参考)新古典主義建築 - Wikipedia

新古典主義建築の特徴として、考古学的研究の成果に基づいて古代建築をより正確に再現しようとした点が挙げられます。ルネサンス建築と似た動きではありますが、新古典主義は単なる模倣ではなく、科学的なアプローチで古典建築の本質を追求しました。この様式は19世紀後半から20世紀初頭にかけてアメリカの公共建築で多く見られ、1893年のシカゴ万博で披露されてアメリカ各地に広まっていきました。
参考)新古典主義建築 - kenchikuchishiki 西洋建…

新古典主義建築アメリカの代表的建築物と設計者

アメリカ合衆国議会議事堂は新古典主義建築の最も象徴的な建築物です。高さ約88メートル、直径約29メートルの巨大なドームが特徴的で、初代議事堂建築監ウィリアム・ソーントンの設計により1793年に建設が開始されました。ロタンダ(円形建築物)とドームを中心に、南側が下院、北側が上院の棟となっており、ワシントンD.C.の住所の東西南北は議事堂を基準に定められています。
参考)アメリカ合衆国議会議事堂 - Wikipedia

第3代大統領トーマス・ジェファーソンは政治家としてだけでなく、建築家としても優れた才能を持ち合わせていました。彼が設計した自邸モンティチェロは、ネオクラシック(新古典主義)様式を採用し、古代ギリシャ・ローマ建築の特徴を示す造りとなっています。赤レンガ造りの建物には中央に白いドーム天井が据えられ、ドーリア式円柱で支えられたポーチコや左右対称のデザインが見られます。ジェファーソンはフランス在勤中にボザール流の建築を学び、バージニア州議会議事堂の設計にも貢献しました。
参考)トーマス・ジェファーソン - Wikipedia

ホワイトハウスもアメリカを代表する新古典主義建築のランドマークです。連邦議会議事堂、リンカーン記念堂とともに、首都ワシントンの新古典主義建築を代表する建物として、アメリカの伝統的建築様式の規範となっています。トーマス・ジェファーソン記念館は1925年にジョン・ラッセル・ポープによって設計され、ローマのパンテオンに似た新古典主義建築を改作したもので、ジェファーソン自身が好んだ様式を体現しています。
参考)連邦政府が新設する建物は「美しい」ものに限る、トランプ氏が命…

新古典主義建築アメリカのボザール様式と建築家

ボザール様式とは、フランス・パリにあるフランス国立美術学校エコール・デ・ボザールで建築を学んだアメリカ合衆国人卒業生が本国で披露した建築様式を指します。この様式はアメリカンボザール、アメリカンルネッサンスとも呼ばれ、19世紀後半から20世紀初頭にかけてアメリカの公共建築および半公共建築を代表する様式となりました。マンサード屋根、ペディメント、スワンネック、パラディズム、オーダーに列柱などの古典様式が特徴です。
参考)アメリカン・ルネサンス href="https://artscape.jp/artword/5523/" target="_blank">https://artscape.jp/artword/5523/amp;#8211; artscape

リチャード・モリス・ハントは、エコール・デ・ボザールに米国から最初に留学した建築家で、その後のアメリカ建築界をリードしました。代表的な建築家としては、チャールズ・F・マッキム、ウィリアム・R・ミード、スタンフォード・ホワイトらが挙げられ、彼らは共同で建築設計事務所マッキム、ミード&ホワイトを主宰しました。この事務所は当時世界最大級の規模で、ニューヨークを中心に東部地区一帯で活動し、ボストン公共図書館、マンハッタン市庁舎、ニューヨークのグランド・セントラル駅などを手がけました。
参考)ボザール様式 - Wikipedia

新興国家であったアメリカが歴史と威信のあるデザインの建築を求める中で、建築家たちは18世紀初頭に設立されたエコール・デ・ボザールに留学しルネッサンス建築を学び、その成果を新興国アメリカの誇るべきデザインとして建設しました。ボザール様式は古代ローマのヴィトルビウスの「建築十書」をルネッサンス時代にアンドレア・パラディオが復興しまとめた「建築四書」に基づくパラディアン様式と基本的に同じで、ルネサンス建築様式を米国において実現したものです。記念建造物的な堂々とした外観、陸屋根、カートーシュ(円形装飾)、ピラスター(壁付柱)で支持されたバルコニーなどが特徴的です。
参考)ボザール様式BEAUX-ARTS

新古典主義建築アメリカの設計要素とデザイン原則

新古典主義建築の設計要素として最も重要なのは、古典的オーダー(柱式)の正確な適用です。ドーリア式、イオニア式、コリント式といった古代ギリシャ・ローマの柱式が、建物の威厳と秩序を表現する基本要素となっています。列柱は単なる装飾ではなく、建物の構造的支えと視覚的バランスを両立させる重要な役割を果たしています。
参考)アメリカ合衆国議会議事堂

対称性と幾何学的均衡は新古典主義建築の根本原則です。建物の平面計画は厳密に矩形に展開され、中央にドームやロタンダを配置し、左右対称の構成を取ることで、秩序と安定性を視覚化しています。この幾何学的構成は、単なる美的追求ではなく、啓蒙思想における理性と論理の表現でもありました。
参考)アメリカ合衆国の建築 - Wikipedia

装飾要素としては、ペディメント(三角形の破風)、コーニス(軒蛇腹)、エンタブラチュア(柱上部の水平部材)などが重要です。これらの要素は古代建築の正確な再現を目指しつつ、アメリカの気候や建設技術に適応させる形で応用されました。ドームは国家の統一と権威を象徴する要素として特に重視され、議事堂や記念建築物の中心的な視覚的焦点となっています。
参考)ワシントンDCのトーマスジェファーソン記念館を訪問

新古典主義建築アメリカの都市計画への影響

新古典主義建築は単独の建物だけでなく、都市計画にも大きな影響を与えました。アメリカン・ルネサンスの思想は形式美や統一感を重視したため、その思想は都市美運動(City Beautiful Movement)につながっていきました。1893年のシカゴ万博は、この運動の契機となり、新古典主義建築と幾何学的な都市計画が融合した壮大なビジョンを提示しました。
参考)https://core.ac.uk/download/pdf/61351211.pdf

ワシントンD.C.の首都計画は、新古典主義の導入とヴィスタ(眺望軸線)の明確化によって、19世紀の自然風景式に基づく構成を一掃し、国家統合の象徴としての都市景観を創出しました。マクミラン委員会による計画は、新古典主義建築を中心軸に配置し、記念建造物、公共広場、緑地を有機的に結びつけることで、首都としての威厳と機能性を両立させました。
参考)http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00044/1992/12-0037.pdf

都市美運動は公共建築だけでなく個人の邸宅にも影響を及ぼし、ロードアイランド州ニューポートには新古典主義様式の別荘群が多数建設されました。これらの建築物は今日でも保存されており、一部は一般公開されています。新古典主義建築は都市のスカイラインを形成し、公共空間の質を高めることで、アメリカの都市景観に永続的な影響を与えました。
参考)古典主義建築礼賛!トランプ大統領令「美しい連邦公共建築」で振…

新古典主義建築アメリカの現代的意義と保存活動

20世紀半ばには、フランク・ロイド・ライトの系譜を継ぐモダニズム様式が主流となり、古典的な様式は時代遅れと見なされるようになりました。しかし1979年にブルックリン美術館が開催した展覧会「アメリカン・ルネサンス:1876-1917」は、新古典主義建築に歴史的な文脈を与え、再評価する契機となりました。この展覧会以降、新古典主義建築の文化的価値と歴史的重要性が再認識されるようになりました。​
アメリカにおける建築保存は、当初は建国にかかわった建物や有名人に関係のある建物、いわゆる権威の象徴が対象でした。最初の保存事例はフィラデルフィアの昔の州庁舎(現在の独立記念館)で、1800年代のはじめに塔が建て直されています。近年では近過去の保存という概念が広まり、新古典主義建築も積極的な保存対象となっています。
参考)https://book.gakugei-pub.co.jp/kanren/rekisi/r01001.htm

現代において新古典主義建築の価値は、単なる歴史的記念物としてだけでなく、建築デザインの多様性と文化的アイデンティティの表現として再評価されています。トランプ大統領(第一期政権)は2020年に、連邦政府が新設する建物は「美しい」ものでなければならず、新古典主義建築が望ましいとする大統領令を出しました。この大統領令は建築界で賛否両論を呼びましたが、新古典主義建築が持つ理性的で秩序立った美学が、現代においても一定の支持を得ていることを示しています。
参考)トランプ大統領が政府庁舎の建築様式に関する大統領令に署名。「…

建築史家が語るボストンの新古典主義建築の詳細解説 - LIFULL HOME'S
アメリカン・ルネサンスの建築様式と歴史的背景 - artscape
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アメリカ合衆国議会議事堂の見学ガイドと建築的特徴 - Link-USA