
障子の寸法設計において最も重要な基準となるのが、3尺×6尺(900×1800mm)の基本規格です。この寸法は日本の建築において長年にわたって標準化されており、多くの襖紙や障子紙もこの寸法を基準として製造されています。
基本的なサイズ分類は以下の通りです。
特注対応として巾広品で4尺(1200mm)、丈長品で8尺(2400mm)のものも存在しますが、材料選択の範囲が狭まることに注意が必要です。設計時は市場に供給されている材料規格に合わせることが、施工をスムーズに進めるための重要なポイントとなります。
建具業界では、掃き出し障子(W900×H1800mm)を基準として、横方向に4等分、高さ方向に6等分して組子を配置するのが一般的な手法です。この基準寸法を理解することで、効率的な設計と施工が可能になります。
障子の美観と機能性を決定する重要な要素が組子の寸法です。組子の寸法は「見付」と「見込み」という建築用語で表現されます。
見付寸法の基準値。
見込み寸法の基準値。
組子の配置については、1面に横子を5~6本入れるのが基本とされています。格子が細かい(繁る)ほど組子は細く、少ないほど太くなる傾向があります。美濃紙1枚分(縦9寸×横1尺3寸)の縦サイズを基本に割り付けられるのが伝統的な手法です。
見込み寸法は建具の耐久性や耐風性に直接関係するため、設計時には建物の立地条件や使用環境を考慮した適切な寸法設定が求められます。
腰板の高さ設定は、障子の機能性と美観の両面に大きく影響する重要な要素です。伝統的な基準では、腰の高さは尺二寸(36.3cm)から八寸(24.2cm)までの範囲で設定されます。
腰板高さの分類。
書院座敷では、書院の地袋の高さと座敷の障子の腰板の高さを揃える手法が見られます。これは空間全体の統一感を創出する重要な設計手法です。
近年の傾向として、腰板のない水腰障子が増加していますが、これは現代の生活様式の変化と関連しています。座敷での生活が減り、立位での使用が多くなったことが背景にあります。
設計時には以下の要素を考慮する必要があります。
障子の選定は用途と設置場所に応じた適切なサイズ分類の理解が重要です。ワーロン紙の有効サイズが900mm以内という制約もあり、材料特性を考慮した設計が必要です。
用途別サイズ選定指針。
🏠 住宅用途
🏢 商業・業務用途
障子の種類による分類も重要な選定要素です。
ホームワーロン紙は厚みがあるため、摺り上げのある雪見障子には使用できない場合が多いことも設計時の重要な留意点です。
実際の施工現場では、理論的な寸法だけでなく、施工性や将来のメンテナンス性を考慮した寸法設定が求められます。
材料調達との整合性。
市場で入手可能な障子紙や建具材料の規格に合わせた設計が重要です。特殊寸法の採用は、材料コストの増加と納期の延長を招く可能性があります。
建築用語の正確な理解。
框戸との寸法関係。
框戸の場合、基本となる框の見付寸法は和風で75mm、洋風で100~120mmとされています。障子設計時にはこれらとの調和も考慮が必要です。
施工精度の確保。
組子の精密な組み込みには高度な技術が必要で、現在では伝承者が減少している状況です。設計時には施工業者の技術レベルも考慮した仕様決定が重要です。
メンテナンス性の考慮。
これらの要素を総合的に検討することで、美観と機能性を両立した障子の設計が可能になります。設計者は伝統的な寸法体系を理解しつつ、現代の施工環境や使用条件に適応した柔軟な対応が求められます。
建築業界における障子寸法の標準化は、日本の伝統的な建築技術の継承と現代建築への適用という二つの側面を持っています。適切な寸法設計により、機能性と美観を兼ね備えた建具の実現が可能となります。