ISM規定安全管理システム導入で現場安全性向上

ISM規定安全管理システム導入で現場安全性向上

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ISM規定安全管理の基本理念

ISM規定安全管理システムの概要
国際安全管理コードの目的

船舶の安全航行と汚染防止を目的とした包括的管理システム

📋
安全管理システムの構築

文書化された体系的な安全管理手順の確立

🔍
継続的な監査と改善

定期的な内部監査による安全管理システムの維持・向上

ISM規定による安全管理システムの構築方法

ISM(International Safety Management)コードは、船舶の安全航行及び汚染防止のための国際管理コードとして、SOLAS条約IX章に取り入れられた重要な規定です。この規定は、海難事故防止のため人的要因の重要性が国際的に認識されたことにより制定されました。

 

安全管理システム(SMS)の構築においては、以下の要素が不可欠です。

  • 明確な安全方針の策定 - 会社の安全及び環境保護に関する基本方針を明文化
  • 責任体制の確立 - 各階層における安全管理責任の明確化
  • 手順書の整備 - 安全作業手順の詳細な文書化
  • 教育訓練計画 - 従業員の安全意識向上と技能習得
  • 緊急事態対応 - 事故・災害発生時の対応手順

安全管理システムは、会社が最も効果的と判断する様式で文書化する必要があり、各船舶は自船に関する全文書を船内に備えなければなりません。この文書化の考え方は、建設現場においても安全管理手順を明確にする上で参考になる要素が多く含まれています。

 

適合証書と安全管理証書の取得プロセス

ISM規定では、適合証書と安全管理証書という2つの重要な証書の取得が義務付けられています。適合証書は、ISMコードの要件に適合している会社に対して発行される文書で、5年を超えない有効期間で発行されます。

 

適合証書取得のプロセス。

  • 初回審査の実施 - 安全管理システムの構築状況確認
  • 文書審査 - 安全管理マニュアルの内容検証
  • 実地検証 - 実際の運用状況の確認
  • 不適合事項の是正 - 指摘事項への対応完了
  • 証書発行 - 主管庁による最終承認

一方、安全管理証書は船舶に対して発行される証書で、会社並びに船舶の管理が承認された安全管理システムに従って行われていることを検証した上で発行されます。この証書の有効性は、少なくとも1回の中間検証を受けることが条件となっており、継続的な安全管理の実施が求められています。

 

ClassNKなどの認定機関が、旗国政府の代行として審査を実施し、証書を発行すると共に安全管理システム登録を行っています。

 

船舶の安全管理における適合証書と安全管理証書の詳細情報
https://www.classnk.or.jp/hp/ja/activities/statutory/ism/index.html

内部安全監査の実施手順と効果

ISM規定における内部安全監査は、安全管理システムの有効性を維持する上で極めて重要な要素です。会社は、安全及び汚染防止活動が安全管理システムに従っているかどうかを検証するため、12ヶ月を超えない間隔で内部安全監査を実施しなければなりません。

 

内部安全監査の実施手順。

  • 監査計画の策定 - 年間監査スケジュールの作成
  • 監査員の選定 - 被監査部署から独立した監査員の配置
  • 監査の実施 - 客観的証拠に基づく現状確認
  • 不適合事項の特定 - 規定要求事項との乖離点の把握
  • 是正措置の実施 - 発見された欠陥への対応
  • フォローアップ - 是正措置の効果確認

監査及び是正措置は、文書化した手順に従って実施し、監査及び見直しの結果について関係する部署のすべての責任者に対して注意喚起を行います。このような体系的な監査システムは、継続的な安全管理の改善を実現する上で不可欠です。

 

特別な場合には、監査間隔を3ヶ月を超えない範囲で延期することも可能ですが、原則として定期的な実施が求められています。

 

建築業におけるISM規定応用の可能性

ISM規定は船舶運航に特化した安全管理システムですが、その基本理念や手法は建築業界の安全管理にも応用可能な要素を含んでいます。特に、体系的な安全管理アプローチは建設現場での事故防止に有効です。

 

建築業への応用可能な要素。

  • 文書化された安全手順 - 作業手順書の標準化と周知徹底
  • 定期的な安全監査 - 現場安全状況の客観的評価
  • 教育訓練システム - 作業員の安全意識向上
  • 緊急時対応計画 - 事故発生時の迅速な対応体制
  • 継続的改善 - PDCAサイクルによる安全管理の向上

実際に、運輸安全マネジメント制度では、ISMコードとの関連性が議論されており、既存のISM取得事業者に対する制度適用についても検討されています。これは、安全管理の基本的な考え方が業界を超えて共通していることを示しています。

 

建築現場における安全管理では、以下のようなISM的アプローチが効果的です。
🏗️ 現場責任者の明確化 - 各工程における安全責任者の配置
📊 安全パフォーマンス指標 - 事故率、ヒヤリハット件数等の定量的管理
🔧 標準作業手順 - 危険作業における詳細な手順書作成
👥 安全文化の醸成 - 全従業員による安全意識の共有

不適合事例から学ぶ安全管理の改善点

ISM規定では、不適合と重大な不適合を明確に区分し、それぞれに応じた対応を求めています。不適合とは規定されている要求事項が満たされていないことを示す客観的証拠が観察された状況であり、重大な不適合は人または船舶の安全に重大な脅威を生じさせる明確な違反を指します。

 

典型的な不適合事例。

  • 手順書の不備 - 作業手順が不明確または実情に合わない
  • 教育訓練記録の欠如 - 従業員への安全教育実施記録なし
  • 監査頻度の不足 - 規定間隔での内部監査未実施
  • 是正措置の未完了 - 指摘事項への対応が不十分
  • 文書管理の不備 - 最新版の手順書が現場に配布されていない

重大な不適合の例。

  • 安全装備の重大な欠陥 - 救命設備の機能不全
  • 緊急時対応の欠如 - 事故発生時の対応手順未整備
  • 資格者の配置不備 - 必要な有資格者の未配置
  • 危険物管理の不備 - 化学物質等の不適切な取扱い

これらの不適合事例から得られる教訓は、建築業界においても十分活用できます。特に、文書化された手順の重要性や定期的な教育訓練の必要性は、どの業界においても共通する安全管理の基本です。

 

PSC(ポートステートコントロール)での指摘事例を参考にすることで、実際の現場で発生しやすい安全管理上の問題点を事前に把握し、予防的な対策を講じることが可能になります。

 

効果的な改善策。

  • 根本原因分析 - 表面的な問題ではなく真の原因を特定
  • 予防措置の実施 - 同様の問題の再発防止策を講じる
  • 横展開の実施 - 他の現場や部門への教訓共有
  • 継続的監視 - 改善措置の効果を定期的に確認
  • 文化的変革 - 安全を最優先とする組織文化の構築

安全管理における不適合管理は、単なる問題解決にとどまらず、組織全体の安全文化向上につながる重要な取り組みです。ISM規定で確立された体系的なアプローチを参考にすることで、建築業界においても より効果的な安全管理システムの構築が可能になります。