
アルキド樹脂塗料は、ポリエステル樹脂の一種で、一般的に「ペンキ」と呼ばれる塗料の主成分として広く知られています。この樹脂は、無水フタル酸や無水マレイン酸などをエチレングリコールやグリセリンなどのアルコールと反応させ、水などを離脱させる縮合反応によって生成されます。
アルキド樹脂の特徴的な性質として、油や脂肪酸による変性が容易であることが挙げられます。この変性に使用される油の量(油長)によって、塗膜の性質が大きく変わります。
特に「中油性アルキド樹脂」は溶剤で希釈可能で、溶剤が蒸発すると空気中の酸素を吸収して樹脂が酸化重合し、硬化して皮膜を形成します。このプロセスにより、光沢が良く、ある程度の耐候性と付着性を持つ塗膜が形成されます。
ホームセンターなどで見かける日曜大工用の塗料は、このフタル酸塗料を「長油」とした主成分にして、素人でも扱いやすいように調整されたものが多いです。
アルキド樹脂塗料は、外壁塗装において最も耐用年数が短い樹脂の一つです。一般的な耐用年数は約3~5年程度で、他の樹脂系塗料と比較すると明らかに短いことがわかります。
外壁塗装における各樹脂の耐用年数比較。
樹脂の種類 | 耐用年数 | 特徴 |
---|---|---|
アルキド樹脂 | 3~5年 | 最も耐用年数が短い、DIY向け |
アクリル樹脂 | 5~7年 | 新築時の外壁塗装に多用 |
ウレタン樹脂 | 8~10年 | 下地との密着性が高い |
シリコン樹脂 | 10~15年 | 現在の外壁塗装の主流 |
フッ素樹脂 | 15~20年 | 高級塗料、耐久性最高 |
アルキド樹脂塗料の最大の限界点は、耐アルカリ性の低さです。このため、アルカリ性の強いコンクリート外壁には適していません。また、紫外線や雨風にさらされる外部環境では、比較的早く劣化してしまうため、外壁塗装の主材料としては現在ではほとんど使用されていません。
耐用年数が短いことから、頻繁な塗り替えが必要となり、長期的に見るとコストパフォーマンスが悪くなる点も大きな欠点です。外壁塗装は足場の設置など初期費用がかかるため、できるだけ塗り替え頻度を減らせる塗料を選ぶことが経済的です。
アルキド樹脂塗料は、プロの外壁塗装には向いていませんが、DIYでの小規模な塗装作業には適しています。特に初心者でも扱いやすい特性があり、ホームセンターで手軽に購入できることから、DIY愛好家に人気があります。
DIYでアルキド樹脂塗料を活用する際のポイント。
DIYで外壁の一部を補修する場合でも、できればウレタン系やシリコン系など、より耐久性の高い塗料を選ぶことをお勧めします。特に雨風にさらされる部分や、日当たりの良い南面などは、アルキド樹脂塗料では早期に劣化する可能性が高いです。
外壁塗装を検討する際には、アルキド樹脂塗料と他の樹脂系塗料の特性を比較し、最適な選択をすることが重要です。それぞれの樹脂系塗料には固有の特徴があり、用途や予算に応じて選ぶ必要があります。
アルキド樹脂塗料 vs アクリル樹脂塗料
アクリル樹脂塗料は、アルキド樹脂塗料よりも耐候性に優れており、特に和風建築などの外観に艶のない仕上がりを希望する場合に選択されることが多いです。新築時の外壁塗装で使用されることが多く、アルキド樹脂よりも2~3年長い耐用年数を持ちます。
アルキド樹脂塗料 vs ウレタン樹脂塗料
ウレタン樹脂塗料は、下地との密着性が高く、アルキド樹脂塗料の約2倍の耐用年数(8~10年)を持ちます。かつては外壁塗装の主流でしたが、現在ではシリコン系樹脂に取って代わられつつあります。ウレタン系特有の臭いがあり、溶剤型と水性型があります。
アルキド樹脂塗料 vs シリコン樹脂塗料
シリコン樹脂塗料は現在の外壁塗装の主流で、10~15年の耐用年数があります。アルキド樹脂塗料と比較して約3倍の耐久性を持ち、耐用年数と費用のバランスが良いことから、多くの外壁塗装工事で採用されています。
アルキド樹脂塗料 vs フッ素樹脂塗料
フッ素樹脂塗料は最高級の外壁塗料で、15~20年という長い耐用年数を持ちます。アルキド樹脂塗料の約4倍の耐久性がありますが、その分価格も高額です。ビルや橋梁など、長期間メンテナンスが困難な構造物に適していますが、一般住宅では費用対効果の観点から選択されることは少ないです。
各樹脂系塗料の価格比較(平米あたり)。
アルキド樹脂塗料は、従来型の塗料として長い歴史を持ちますが、環境への影響という観点では課題も抱えています。特に溶剤型のアルキド樹脂塗料は、揮発性有機化合物(VOC)を多く含んでおり、大気汚染や健康被害の原因となる可能性があります。
近年、環境負荷の低減を目指した新しい技術開発が進んでおり、アルキド樹脂塗料の代替となる環境配慮型の塗料が登場しています。
水性アルキド樹脂塗料の開発
従来の溶剤型アルキド樹脂塗料に代わり、水を溶媒とした水性アルキド樹脂塗料の開発が進んでいます。これにより、VOC排出量を大幅に削減しつつ、アルキド樹脂の持つ良好な塗膜形成能力を維持することが可能になっています。
バイオベースのアルキド樹脂
石油由来の原料ではなく、植物油などの再生可能な資源から製造されるバイオベースのアルキド樹脂も注目されています。これらは、カーボンフットプリントの削減に貢献し、持続可能な塗料として期待されています。
ナノコンポジット技術の応用
水谷ペイントと京都工芸繊維大学、科学技術振興機構による産学官連携によって開発された「ナノコンポジットW」は、ナノレベルで分散したコロイド状のシリカを利用した革新的な塗料です。この技術により、外壁用汎用エマルション塗料の弱点であった耐汚染性が大幅に向上し、樹脂部をナノ分散シリカに置き換えることで石油系資源の使用量を減らし、環境負荷の低減に貢献しています。
ハイブリッド塗料の登場
アルキド樹脂の特性を活かしつつ、他の樹脂と組み合わせたハイブリッド塗料も開発されています。例えば、アルキド-アクリルハイブリッド塗料は、アルキド樹脂の良好な塗膜形成能力とアクリル樹脂の耐候性を兼ね備えており、より環境に優しく耐久性の高い選択肢となっています。
これらの新技術は、従来のアルキド樹脂塗料の限界を克服し、より持続可能で高性能な塗料システムへの移行を促進しています。環境意識の高まりとともに、今後もこうした技術革新が進むことが期待されます。
ナノコンポジット技術の詳細については水谷ペイント公式サイトで確認できます
アルキド樹脂塗料は一般的な外壁塗装には向いていませんが、特定の用途や小規模な塗装作業には適しています。塗料選びと同時に、信頼できる外壁塗装業者の選定も重要です。ここでは、両方のポイントについて解説します。
アルキド樹脂塗料を選ぶ際のポイント
外壁塗装業者を選ぶ際のポイント
外壁塗装は、塗料の選択だけでなく、施工する業者の技術力や信頼性も非常に重要です。特に、アルキド樹脂塗料よりも耐久性の高い塗料を推奨してくれる誠実な業者を選ぶことが大切です。
外壁塗装は家の寿命を左右する重要な工事です。アルキド樹脂塗料は一般的な外壁塗装には向いていませんが、業者との相談の中で、あなたの家に最適な塗料を選ぶことが大切です。信頼できる業者は、コストだけでなく、耐久性や環境への影響も考慮した適切な塗料を提案してくれるでしょう。