カーボンフットプリント 建築 サプライチェーン CO2排出量 見える化 削減対策

カーボンフットプリント 建築 サプライチェーン CO2排出量 見える化 削減対策

記事内に広告を含む場合があります。

カーボンフットプリント 建築

建築物のカーボンフットプリントとは
🏗️
CO2排出量の可視化

建築物のライフサイクル全体(原材料調達から廃棄・リサイクルまで)のCO2排出量を数値化したもの

📊
建築業界の責任

建築関連のCO2排出量は国内全排出量の約4割を占め、低炭素社会実現に大きな役割を担う

🌱
環境配慮の指標

カーボンフットプリントの算定・表示により、環境に配慮した建築物の評価や選択が可能に

カーボンフットプリント 建築物のCO2排出量の内訳

建築物のカーボンフットプリントを理解するには、まずCO2排出量の内訳を把握することが重要です。九州大学の研究によると、平均的な木造住宅1軒分(延べ床面積:119m²)のカーボンフットプリントは約38 t-CO₂にもなります。

 

この排出量の内訳は以下のようになっています。

  • 電力部門由来:全体の32%(最も高い割合)
  • 製鉄プロセス関連部門:全体の約15%
  • その他の建材製造・輸送・施工過程など

建築物のライフサイクルを段階別に見ると、CO2排出量は次のように分布しています。

  1. 資材製造段階:約1,500 t-CO₂
  2. 施工段階:約740 t-CO₂
  3. 修繕・改修段階:約620 t-CO₂
  4. 廃棄・リサイクル段階:約110 t-CO₂

これらの数値は建築物の規模や構造によって異なりますが、一般的に資材製造段階での排出量が最も多いことがわかります。特に鉄鋼材料の製造過程は、CO2排出量が多い工程として知られています。

 

カーボンフットプリント 建築業界における算定方法と認証制度

建築物のカーボンフットプリントを算定するには、一般的に以下のステップが必要です。

  1. システム境界の設定:どの範囲までを計算に含めるかを決定
    • Cradle to Grave(原材料調達から廃棄・リサイクルまで)
    • Cradle to Gate(原材料調達から生産段階まで)
  2. データ収集:各段階での資材・エネルギー使用量の把握
    • 建材の製造に関するデータ
    • 施工時のエネルギー使用量
    • 輸送に関するデータ
    • 廃棄・リサイクル処理に関するデータ
  3. CO2排出量の算定:収集したデータを基にCO2排出量を計算
  4. 第三者検証:算定結果の信頼性を確保するための検証

日本では、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)が運営する「カーボンフットプリントコミュニケーションプログラム」が代表的な認証制度です。この制度を通じて、建築物のカーボンフットプリントを「見える化」し、環境ラベルとして表示することができます。

 

安藤ハザマは、建築物(躯体および仕上材)を対象に、国内の建設会社で初めて「カーボンフットプリント宣言認定」を取得しました。これにより、建築物の環境性能を客観的に評価し、環境配慮型の建築物を推進する動きが加速しています。

 

カーボンフットプリント 建築サプライチェーン全体での取り組み事例

建築業界では、サプライチェーン全体でのカーボンフットプリント削減に向けた様々な取り組みが進められています。以下に代表的な事例を紹介します。

 

1. 安藤ハザマの取り組み
安藤ハザマは、自社の研修施設「TTCつくば」において、建築物のカーボンフットプリント評価を実施し、CO2排出量の「見える化」を行いました。この施設では、カーボンオフセットと組み合わせることで、建物における「実質CO2排出量ゼロ」を実現しています。

 

2. 木造住宅メーカーの取り組み
木造住宅のサプライチェーンに焦点を当て、CO2排出に寄与している部門を特定し、効果的な削減策を講じる取り組みが進められています。九州大学の研究グループは、木造住宅の建築に関わる部門のグループ分けを行い、CO2排出量の多い部門群を特定しました。

 

3. 建材メーカーの取り組み
建材メーカーは、自社製品のカーボンフットプリントを算定・表示することで、環境配慮型の製品開発を推進しています。CFPマーク表示認定を受けている建築材料も増えており、施主側もそれらを選ぶことで環境問題解決への貢献度が「見える化」できるようになっています。

 

4. 国産材活用の推進
製造・加工にかかるCO2排出量の少ない木材、特に国産材の利用は、カーボンニュートラル実現に効果的とされています。国産材を使った建築材料の採用を推進することで、建物のライフサイクルCO2量を最小限に抑える取り組みが広がっています。

 

これらの取り組みは、建築業界全体でのカーボンフットプリント削減に貢献しており、今後さらに拡大していくことが期待されています。

 

カーボンフットプリント 建築物における効果的なCO2削減対策

建築物のカーボンフットプリントを削減するためには、ライフサイクル全体を通じた効果的な対策が必要です。以下に、各段階での具体的な削減対策を紹介します。

 

1. 設計・計画段階での対策

  • 低炭素建材の選択:CO2排出量の少ない建材を積極的に採用
  • 長寿命設計:建物の耐久性を高め、修繕・改修の頻度を減らす
  • 省エネ設計:断熱性能の向上や自然エネルギーの活用を考慮した設計

2. 資材調達・製造段階での対策

  • 国産材・地域材の活用:輸送距離の短縮によるCO2排出量削減
  • リサイクル材の使用:新材製造に比べてCO2排出量が少ないリサイクル材の活用
  • 低炭素製造プロセスの採用:製造時のエネルギー効率向上や再生可能エネルギーの導入

3. 施工段階での対策

  • 施工効率の向上:工期短縮による機械稼働時間の削減
  • 省エネ型建設機械の使用:燃費の良い機械や電動機械の導入
  • 現場でのエネルギー管理:無駄な電力使用の削減や再生可能エネルギーの活用

4. 運用・メンテナンス段階での対策

  • エネルギー効率の高い設備の導入:高効率空調・照明設備の採用
  • 適切なメンテナンス計画:定期的な点検・修繕による性能維持
  • 再生可能エネルギーの導入:太陽光発電や地中熱利用などの導入

5. 廃棄・リサイクル段階での対策

  • 解体時の分別徹底:リサイクル率向上のための適切な分別
  • リユース可能な部材の活用:再利用可能な部材の積極的な活用
  • 廃棄物の適正処理:環境負荷の少ない処理方法の選択

これらの対策を総合的に実施することで、建築物のライフサイクル全体を通じたCO2排出量の大幅な削減が可能になります。特に、設計・計画段階での対策は、その後のライフサイクル全体に影響を与えるため、非常に重要です。

 

カーボンフットプリント 建築業界の未来と技術革新

建築業界におけるカーボンフットプリントへの取り組みは、今後さらに進化していくことが予想されます。ここでは、建築業界の未来と期待される技術革新について考察します。

 

1. デジタル技術の活用
BIM(Building Information Modeling)やAI技術の発展により、設計段階からカーボンフットプリントを予測し、最適な設計・材料選択が可能になります。これにより、建築物の計画段階からCO2排出量を最小化する取り組みが加速するでしょう。

 

2. 新素材の開発と普及
CO2排出量の少ない新素材や、CO2を吸収・固定化する建材の開発が進んでいます。例えば、CO2を吸収するコンクリートや、木材と他の素材を組み合わせたハイブリッド建材などが注目されています。これらの新素材の普及により、建築物のカーボンフットプリントは大幅に削減される可能性があります。

 

3. サーキュラーエコノミーの実現
建築業界では、資源の循環利用を前提としたサーキュラーエコノミー(循環経済)の考え方が広がっています。建物を解体する際に発生する廃材を新たな建材として再利用するシステムの構築や、建物自体をリユース可能なモジュール構造にするなど、資源の無駄をなくす取り組みが進んでいます。

 

4. カーボンニュートラル建築の標準化
現在は先進的な取り組みとして注目されているカーボンニュートラル建築が、将来的には標準となる可能性があります。建築基準や認証制度にカーボンフットプリントの基準が組み込まれ、低炭素建築が当たり前となる社会が実現するでしょう。

 

5. 国際的な連携の強化
カーボンフットプリントの算定方法や評価基準の国際的な統一が進み、グローバルなサプライチェーンにおけるCO2排出量の管理が容易になります。これにより、国境を越えた建築材料の調達や建設プロジェクトにおいても、カーボンフットプリントの削減が促進されるでしょう。

 

建築業界は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて大きな役割を担っています。技術革新と意識改革により、建築物のカーボンフットプリントを大幅に削減し、持続可能な社会の構築に貢献することが期待されています。

 

カーボンフットプリント 建築プロジェクトにおける実践的なアプローチ

建築プロジェクトでカーボンフットプリントを実際に削減するための実践的なアプローチを紹介します。これらの方法は、すぐに実践できるものから長期的な取り組みまで様々です。

 

1. カーボンフットプリント評価の導入
まずは自社の建築プロジェクトのカーボンフットプリントを評価することから始めましょう。現状を把握することで、効果的な削減策を検討することができます。

 

  • 簡易評価ツールの活用:初期段階では、既存の簡易評価ツールを活用して概算値を把握
  • 詳細評価の実施:プロジェクトの進行に合わせて、より詳細な評価を実施
  • ベンチマークの設定:同種・同規模の建築物と比較し、目標値を設定

2. サプライヤーとの協働
建材サプライヤーと協力して、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減に取り組みましょう。

 

  • 低炭素建材の調達:カーボンフットプリントが明示された建材を優先的に調達
  • サプライヤーへの情報提供要請:使用する建材のCO2排出量データの提供を要請
  • 共同開発の推進:サプライヤーと協力して低炭素建材の開発を推進

3. 設計・施工プロセスの最適化
設計・施工プロセスを見直し、CO2排出量の削減を図りましょう。

 

  • モジュール化・標準化:部材のモジュール化・標準化による無駄の削減
  • プレファブ工法の採用:工場生産による施工効率の向上と廃棄物の削減
  • BIMの活用:設計段階からのCO2排出量シミュレーションと最適化

4. 施主・利用者への情報提供
施主や建物利用者に対して、カーボンフットプリントに関する情報を提供し、理解と協力を得ることが重要です。

 

  • 見える化ツールの活用:グラフや図表を用いた分かりやすい情報提供
  • 環境性能のアピール:環境配慮型建築物としての付加価値の提示
  • ライフサイクルコストの説明:初期投資と長期的なコスト削減効果の説明

5. 継続的な改善とフィードバック
プロジェクト完了後も継続的に改善を図り、次のプロジェクトに活かしましょう。

 

  • 実績データの蓄積:プロジェクトごとのカーボンフットプリントデータを蓄積
  • ベストプラクティスの共有:成功事例を社内外で共有
  • PDCAサイクルの実施:定期的な評価と改善策の検討

これらの実践的なアプローチを組み合わせることで、建築プロジェクトのカーボンフットプリント削減を効果的に進めることができます。重要なのは、一度に全てを実施しようとするのではなく、できることから段階的に取り組むことです。

 

安藤ハザマのCFP(カーボンフットプリント)への取り組み事例
建築業界におけるカーボンフットプリントへの取り組みは、地球温暖化対策の重要な一環として今後ますます注目されるでしょう。建築に携わる全ての関係者が協力して、低炭素社会の実現に向けた取り組みを推進していくことが求められています。