板金塗装 ガン
板金塗装におけるスプレーガンの重要性
🔧
適切な選択
用途に合ったスプレーガンの選択が塗装品質を左右します
🎯
正確な操作
均一な塗装を実現するためのガン操作技術が必要です
✨
美しい仕上がり
適切なメンテナンスと技術で高品質な塗装が可能になります
板金塗装 ガンの種類と特徴を比較
板金塗装で使用されるスプレーガンには、大きく分けて3種類あります。それぞれの特徴を理解することで、作業内容に最適なガンを選ぶことができます。
- 重力式スプレーガン(上カップ式)
- 特徴:ガン上部にカップがあり、塗料が自重で落ちる仕組み
- メリット:塗料の利用効率が良く、少量の塗料でも使い切れる
- 用途:細かい部分の塗装や少量塗装に最適
- 口径:通常1.3〜1.4mmが自動車補修では主流
- 吸上げ式スプレーガン(下カップ式)
- 特徴:ガン下部にカップがあり、エアの力で塗料を吸い上げる
- メリット:カップ容量が大きく、広範囲の塗装に向いている
- 用途:大きな面積の塗装作業に適している
- 操作性:上カップ式に比べてやや重いが安定感がある
- 圧送式スプレーガン
- 特徴:塗料を圧送タンクから供給する方式
- メリット:大量の塗料を連続して使用可能
- 用途:同色の大面積塗装に最適
- 特性:プロの現場で使われることが多い
センターカップのガンはサイドカップのものに比べてパワーがあり、パターンも広く開くため、新品パネルのブロック塗装などに非常に適しています。また、塗料の通路が直線的で洗浄性に優れているという特長もあります。
板金塗装 ガンの正しい選び方と口径の重要性
スプレーガンを選ぶ際には、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。特に口径は塗装の仕上がりに大きく影響します。
口径選びのポイント
- ベースコート用:1.3〜1.4mmが標準的
- クリヤーコート用:1.4mm前後が一般的
- サフェーサー用:やや大きめの口径が適している
用途別ガン選びの基準
- 塗装する面積
- 小面積:重力式(上カップ式)が操作しやすい
- 大面積:吸上げ式(下カップ式)や圧送式が効率的
- 塗料の種類
- メタリック塗料:均一な塗布が必要なため高品質なガンが望ましい
- ソリッド(単色):比較的扱いやすい
- クリヤー:肌の調整がしやすいフラットで広いパターンのガンが適している
- 作業頻度と予算
- プロ用途:耐久性と精度の高い高級モデル
- DIY用途:コストパフォーマンスの良いモデル
プロの現場では、メタリックとソリッド用に別々のガンを用意することが一般的です。これは、メタリックの粒子が完全に洗い流せないことがあるためです。ただし、センターカップのガンは洗浄性が高いため、1丁で両方に対応できる場合もあります。
板金塗装 ガンの基本操作とムラのない塗装テクニック
美しい塗装仕上げを実現するためには、スプレーガンの基本操作を習得することが不可欠です。ムラのない均一な塗装を行うためのテクニックを紹介します。
スプレーガン操作の基本
- 距離の保持
- 適切な距離:対象物から15〜20cm程度
- 近すぎると:厚塗りになりタレやすい
- 遠すぎると:表面がざらついた仕上がりになる
- スピードの一定化
- 一定のスピードで動かす
- 遅すぎると:塗料が厚く付き、タレの原因に
- 速すぎると:塗料が薄く、ムラの原因に
- パターンの重ね方
- オーバーラップ:前回塗った部分の1/2〜2/3を重ねる
- 均一な塗布量:ムラのない仕上がりのカギ
ムラを防ぐための具体的テクニック
- 捨て吹き
- 本塗装前に軽く塗る工程
- 目的:下地の状態を確認し、塗料の付き具合を見る
- 本塗り
- 捨て吹きよりもガンを近づける
- 3回程度に分けて塗り重ねる
- 各工程の間に適切な乾燥時間を設ける
- パターン調整
- 縦長の対象:横吹きパターン
- 横長の対象:縦吹きパターン
- 対象物に対して常に垂直を保つ
塗装中にゴミや虫が付着した場合は、ピンセットやエアブローで丁寧に取り除くことが大切です。また、塗装の仕上がりを左右する重要な要素として、塗料の適切な希釈も忘れてはなりません。塗料メーカーの指定する希釈率を守ることで、ムラのない美しい仕上がりを実現できます。
板金塗装 ガンのメンテナンス方法と長持ちさせるコツ
スプレーガンは精密機器です。適切なメンテナンスを行うことで、長期間にわたって高品質な塗装を維持することができます。日常的なケアから定期的なメンテナンスまで、ガンを長持ちさせるコツを解説します。
使用後の基本的な洗浄手順
- 速やかな洗浄
- 使用後はすぐに洗浄する
- 塗料が乾燥・固着すると除去が困難になる
- 分解洗浄の手順
- ①カップ内の残った塗料を処理
- ②シンナーでカップ内を洗浄
- ③ノズル、ニードル、エアキャップを取り外し
- ④専用の洗浄液で各部品を丁寧に洗う
- ⑤エアブローで水分や洗浄液を完全に除去
- 注意点
- Oリングやパッキンを傷つけない
- 金属ブラシや硬いものでこすらない
- ノズルの先端は特に繊細なので丁寧に扱う
定期的なメンテナンス
- パーツの点検と交換
- ニードルとノズルのセットは摩耗したら同時に交換
- パッキン類は定期的に点検し、劣化したら交換
- 潤滑油の適用
- 可動部には専用の潤滑油を少量塗布
- 過剰な油は塗料に混入する恐れがあるので注意
- 保管方法
- 清潔で乾燥した場所に保管
- ホコリや湿気から守るためにケースに入れる
特に明治製のスプレーガンはメッキが弱い傾向があり、使用開始から半年程度でくすみが出ることがあります。メッキ部分は磨くとかえって寿命を縮める可能性があるため、機能に問題がなければそのまま使用するのが良いでしょう。
板金塗装 ガンの高度な使い分けとプロの現場事例
プロの現場では、作業内容や塗料の種類によって複数のスプレーガンを使い分けています。実際の現場事例から、効率的なガンの使い分け方と高度な塗装テクニックを学びましょう。
プロが使い分ける複数のガン
多くのプロは以下のように用途別にガンを使い分けています:
- ベースコート用
- 口径:1.3〜1.4mm
- 特徴:均一な塗布が可能なもの
- メタリック用とソリッド用で分ける場合も
- クリヤーコート用
- 口径:1.4mm前後
- 特徴:パターンがフラットで広いタイプ
- 肌の調整がしやすいものを選択
- サフェーサー用
- 特徴:洗浄性の高いセンターカップタイプが人気
- 理由:サフェーサーは粘度が高く詰まりやすいため
高級車塗装のテクニック
高級車の塗装では、特に滑らかな塗り肌を実現するために「ハイデリバリーモデル」と呼ばれる塗料の吐出量が多いスプレーガンが使用されることがあります。これにより、輸入車などの膜厚のある滑らかな塗り肌を再現することが可能です。
プロの現場での評価基準
プロの現場では、スプレーガンの性能を以下の3点で評価しています:
- 高光沢の塗り肌を継続して実現できるか
- スプレー時のドライミストと塗り残しがないか
- 塗り肌の観察からガン操作のコントロールができるか(ガンさばき)
これらの基準を満たすことができれば、プロレベルの塗装技術を習得したと言えるでしょう。
実際の使用例
あるプロの板金塗装職人は、4丁のスプレーガンを使い分けています。ベースコート用、クリヤーコート用、アンダークリヤー用、サフェーサー用と、それぞれの工程に最適なガンを選択することで、効率的かつ高品質な塗装を実現しています。
特に興味深いのは、メタリックとソリッドの塗装において、センターカップのガンは洗浄性が高いため1丁で対応できるという点です。一方、サイドカップのガンは洗浄性に劣るため、メタリック用とソリッド用で分けて使用するという工夫がされています。
板金塗装の世界では、道具の選択と使い方が仕上がりを大きく左右します。プロの技術を学び、適切なガンの選択と操作技術を身につけることで、DIYでも美しい塗装仕上げを実現することができるでしょう。
プロの世界では「ガン」と呼ばれ、数える単位も「1丁、2丁」と特殊です。これは業界特有の言い回しで、道具に対する敬意と愛着が感じられる呼び方です。道具を大切にし、技術を磨くことが、美しい塗装の秘訣なのです。