道路交通法施行令改正で生活道路の法定速度と自転車の罰則が変化

道路交通法施行令改正で生活道路の法定速度と自転車の罰則が変化

記事内に広告を含む場合があります。
道路交通法施行令 改正のポイント
🚲
自転車の青切符導入

2026年4月から導入決定。16歳以上の違反者に反則金を適用。

🚗
生活道路の30キロ規制

センターラインのない道路等の法定速度が60キロから30キロへ。

🍺
アルコール検知器の継続

白ナンバー事業者への検知器義務化は継続して厳格運用。

道路交通法施行令の改正

建設業界の日々の業務において、車両の移動や現場への通勤は切っても切り離せない重要な要素です。近年、相次ぐ交通事故の増加や物流の課題に対応するため、道路交通法および道路交通法施行令の改正が頻繁に行われています。特に2025年現在、建設業の皆様が直面しているのは、単なる「運転ルールの変更」にとどまらず、現場までのルート選定や従業員の通勤管理そのものを根本から見直す必要に迫られるような大きな変革です。
今回の記事では、建設現場の管理者や職人の方が特に押さえておくべき、最新の「道路交通法施行令」の改正ポイントを深掘りします。特に注目すべきは、これまで曖昧だった「生活道路」での速度規制の明確化と、現場への通勤手段として利用される「自転車」に対する罰則の強化です。これらは、知らなかったでは済まされない重大なコンプライアンスリスクを含んでいます。

道路交通法施行令改正による生活道路の法定速度の引き下げ

建設車両が現場へ向かう際、幹線道路から一本入った住宅街の道を走行することは珍しくありません。今回の道路交通法施行令改正で最も衝撃的な変更点の一つが、いわゆる「生活道路」における法定速度の見直しです。これまで、標識などで速度指定がない一般道路の法定速度は一律で時速60キロメートルとされていました。しかし、改正により、センターライン(中央線)や中央分離帯がない道路などについては、法定速度が時速30キロメートルへと引き下げられることが決定しています 。
参考)生活道路の法定速度が60km/hから30km/hへ|コラム|…

この改正の背景には、住宅街などでの歩行者事故を減らす狙いがあります。建設業への影響は甚大です。


  • 配送ルートの再考: これまで抜け道として使っていた細い道路が、実質的に使用しづらくなります。30キロ制限を守りながら大型の資材運搬車で走行することは、到着時間の遅延に直結します。

  • 工期の見直し: 移動時間の増加は、作業開始時間の遅れや、一日に回れる現場数の減少を招きます。「2024年問題」ですでに厳しい物流事情に、さらなる制約が加わる形となります 。
    参考)なぜ狭い生活道路の法定速度60kmから30kmに引き下げられ…

警察庁:道路交通法施行令の一部を改正する政令等について(警察庁ウェブサイト)
※生活道路の定義や施行時期の詳細な資料が掲載されています。
また、この30キロ規制は、標識がなくても適用される「法定速度」の変更である点が重要です。「標識がなかったから60キロで走った」という言い訳は通用しません。現場監督は、新規現場の入場ルート計画において、可能な限り幹線道路を使用するよう指示を徹底する必要があります。

道路交通法施行令改正で決まる自転車の青切符と罰則

建設現場への通勤手段として、あるいは現場周辺でのちょっとした移動に自転車を利用している作業員の方は多いのではないでしょうか。2025年6月頃までに正式決定された道路交通法改正により、2026年4月1日から自転車に対する「青切符(交通反則通告制度)」が導入されます 。これまで自転車の違反は、軽微なものでも刑事罰(赤切符)か、あるいは警告で済まされるかの両極端でしたが、今後は自動車同様に反則金を納める制度が適用されます。
参考)自転車の交通違反の青切符による取り締まり、2026年4月に施…

対象となるのは16歳以上で、建設現場で働く若い見習い職人からベテランまでほぼ全員が含まれます。特に注意すべき違反と反則金の目安は以下の通りです。

違反内容 反則金の目安 現場でのよくあるシチュエーション
ながらスマホ 12,000円 現場地図を確認しながらの走行
信号無視 6,000円 朝の急いでいる時の赤信号突破
右側通行・逆走 6,000円 現場ゲートへ近道するための逆走
一時停止無視 5,000円 路地から現場へ出る際の一時停止無視
傘差し運転 5,000円 雨天時の現場移動


これらは「知らなかった」で済まされる金額ではありません 。特に「ながらスマホ」に対する罰則は厳しく、携帯電話を保持して通話したり画面を注視したりする行為は即座に摘発対象となります。
参考)自転車反則金、26年4月に導入決定 2人乗りは3000円 -…

警視庁:自転車の交通ルールと罰則の強化について
※具体的な違反行為や青切符制度の運用開始に関する詳細が確認できます。
企業としては、自転車通勤を許可している従業員に対し、これらの新ルールを周知徹底する義務が生じます。万が一、業務中や通勤中に従業員が青切符を切られた場合、企業の安全管理体制が問われる可能性もゼロではありません。

道路交通法施行令改正後のアルコール検知器と安全運転管理者の義務

「白ナンバー」の建設業者に対するアルコール検知器の使用義務化は、2023年12月に完全施行されましたが、道路交通法施行令の改正議論の中で、その運用はより厳格化されています 。一時期は検知器不足による延期などがありましたが、現在は言い訳が通用しないフェーズに入っています。
参考)https://www.ncsol.co.jp/telematics/column/009.html

建設業の安全運転管理者にとって、以下のポイントは形骸化していないか今一度チェックが必要です。


  • 検知器の常時有効性保持: センサーには寿命があります。すでに導入から1年以上経過している場合、センサー切れや故障している機器を使い続けているケースが見受けられます。これは法令違反となります。

  • 記録の1年間保存: 「誰が」「いつ」「どの検知器で」「どのような結果だったか」を確実に記録し、保存する必要があります。紙の台帳だけでなく、クラウド管理システムの導入が進んでいますが、現場直行直帰の際の記録漏れが依然として課題です 。
    参考)【最新】アルコールチェック義務化とは?実施方法や罰則などを解…

さらに、最近の改正の傾向として、安全運転管理者の業務範囲が拡大しています。以前は選任義務がなかった事業所でも、定員11人以上の車両が1台でもある、またはその他の自動車が5台以上ある場合は選任が必須です 。建設業ではハイエースなどの多人数乗車車両が多いため、支店や現場事務所単位での選任漏れがないか確認が必要です。
参考)安全運転管理者の業務の拡充等|警察庁Webサイト

自動車安全運転センター:安全運転管理者制度の概要
※安全運転管理者の選任要件や具体的な業務内容が詳しく解説されています。

道路交通法施行令改正と準中型免許の定義と車両総重量

建設業の若手採用において壁となりがちなのが、運転免許の区分です。道路交通法改正により新設された「準中型免許」制度ですが、施行から時間が経ち、現場での混乱が見え隠れしています。特に、2トントラック(車両総重量5トン未満だと思い込んでいるケース)の誤った運用が問題視されています。
現在の免許制度では、普通免許で運転できるのは「車両総重量3.5トン未満」です。建設現場で多用される2トントラックや、クレーン付きトラック(ユニック車)は、架装や積載によって車両総重量が3.5トンを超えるケースがほとんどです。これを、改正前の感覚で「普通免許の新入社員」に運転させてしまうと、無免許運転として扱われます。


  • 免許取得時期の確認: 平成29年3月12日以降に取得した普通免許では、2トントラックはほぼ運転できません。

  • 車両検証の確認: 車検証の「車両総重量」を必ず確認してください。「最大積載量」ではありません。

この区分けを理解していないと、現場への資材搬入ができないばかりか、重大な法令違反で会社全体の許可取り消しリスクにもつながります。法改正に対応した社内免許管理台帳の更新は必須です。

道路交通法施行令改正が建設業の労務管理に及ぼす影響

今回の道路交通法施行令改正、特に「生活道路の30キロ制限」と「自転車罰則強化」は、建設業独自の労務管理に意外な影響を及ぼします。これは単なる交通ルールの話ではありません。
まず、現場到着時間の予測不能化です。生活道路の速度規制により、従来の「経験則に基づいた移動時間」が通用しなくなります。ギリギリの行程管理をしている現場では、朝礼に間に合わない車両が続出し、作業開始が遅れるリスクがあります。これに対し、会社側が「もっと早く走れ」と指示すれば、それは安全運転義務違反の教唆(きょうさ)になりかねません。ゆとりを持った配車計画こそが、最大のコンプライアンス対策となります。
次に、外国人技能実習生の自転車利用です。多くの実習生が移動手段として自転車を利用していますが、日本の複雑な交通ルールや、今回の「青切符」「スマホ厳罰化」を十分に理解していないケースがあります 。言葉の壁がある中で、高額な反則金を科されるトラブルは、実習生の生活を脅かし、ひいては失踪などのリスクにもつながりかねません。
参考)自転車の交通ルールと安全運転のヒント。2026年4月からの青…

企業としては、以下の対策が急務です。


  • 多言語での交通安全教育: 母国語で書かれた「自転車ルールブック」の配布。

  • 通勤ルートの指定: 30キロ制限の影響を受けにくい、幹線道路主体のルートを指定する。

法令改正を「面倒なこと」と捉えず、現場の安全文化をアップデートする機会と捉える姿勢が、これからの建設業には求められています。