
HDD規格は、ハードディスクドライブとパソコンやサーバーを接続するための重要な技術仕様です。現在最も普及しているのがSATA(Serial ATA)規格で、シリアル方式による高速データ転送を実現しています。
SATA規格の世代別転送速度
SATA規格は世代間で互換性を持っており、新しい世代のHDDを古い世代の機器に接続することも可能です。ただし、転送速度は下位世代の上限に制限されるため注意が必要です。
建築業での図面データや3Dモデルの処理では、SATA 3対応のHDDを選択することで、大容量ファイルの読み書き時間を大幅に短縮できます。
IDE(Integrated Drive Electronics)は、SATA普及以前に広く使用されていた接続規格です。パラレルATA(PATA)とも呼ばれ、複数の線を並行してデータ転送を行うため、ケーブルが幅広いのが特徴です。
IDE規格は現在生産が終了していますが、製造業界では20年以上使用している専用機器で現役活躍中です。建築業界でも、古いCADシステムや専用設計ソフトを動作させる機器でIDE規格のHDDが使用されているケースがあります。
IDE規格の現状
古い設計システムを維持する必要がある建築事務所では、IDE規格HDDの予備確保や代替手段の検討が重要です。
企業向けの高性能サーバーやワークステーションでは、SAS(Serial Attached SCSI)規格が採用されています。SASは2003年に標準化され、従来のSCSI規格の後継として開発されました。
SAS規格の転送速度
SAS規格の大きな特徴は拡張性の高さです。規格上16,000台以上の接続が可能で、1対1接続によりシステム全体のパフォーマンスへの影響を最小限に抑えます。
建築設計事務所の大規模プロジェクトでは、複数の設計者が同時にアクセスするサーバーシステムでSAS規格HDDが威力を発揮します。BIM(Building Information Modeling)データの共有や、大容量の図面データベース管理において、高い信頼性と性能を提供します。
HDD規格はインターフェースだけでなく、物理的なサイズ仕様も重要な要素です。主要なサイズ規格は以下の通りです。
主要なHDDサイズ規格
建築業務用パソコンでは、図面データや3Dモデルの保存容量を考慮して3.5インチHDDを選択することが多いです。一方、現場での持ち運びを重視する場合は2.5インチHDDを搭載したノートPCが適しています。
容量と用途の目安
最新のSeagate製16TBモデルでは、建築事務所の全プロジェクトデータを一元管理することも可能です。
建築業界でのHDD規格選択には、一般的なIT業界とは異なる特殊な要求があります。図面データの長期保存、大容量3Dモデルの処理、現場との連携など、業界特有のニーズを満たす規格選択が重要です。
建築業界でのHDD規格選択ポイント
🏗️ 長期保存性:建築図面は法的保存義務があるため、10年以上の安定動作が求められます
📐 大容量対応:BIMデータや高解像度レンダリング画像の保存に対応
🔄 互換性確保:異なる世代のCADソフトとの連携を考慮
⚡ 転送速度:リアルタイム3D表示やレンダリング処理の効率化
建築業界では、2025年現在でもWindows XP世代の専用CADシステムを使用している事務所があります。このような環境では、IDE規格HDDの調達や、変換アダプターを使用したSATA HDDの活用が検討されています。
一方で、最新のBIM対応システムでは、NVMe SSDとの併用により、従来のHDD規格では実現できない高速処理を実現しています。建築業界でも、設計プロセスのデジタル化に合わせて、適切なHDD規格の見直しが必要な時期を迎えています。