

変分法は、厳密解が取りにくい量子力学の固有値問題を「エネルギー期待値を最小化する問題」に言い換える近似手法です。
要点は、任意の試行波動関数 ψ に対してエネルギー期待値 \(E\psi=\langle \psi|\hat{H}|\psi\rangle/\langle \psi|\psi\rangle\) が基底状態エネルギー \(E_0\) の上界(\(E\psi\ge E_0\))になる、という変分原理です。
この「上からの近似」は、建築の世界で言えば、安全側(保守側)の見積りに近い発想で、近似の良し悪しは試行関数(形の仮定)に強く依存します。
実務的に覚える手順は次の4点で固定できます。
✅ 手順(例題共通)
また、変分原理が“上界”を保証するのは基底状態に対して、という点が初学者の落とし穴で、励起状態は直交条件など追加条件を入れないと同じ安心感で扱えません。
参考)https://qcri.or.jp/lab/wp-content/uploads/2011/11/simulation_32_1p39_47.pdf
例題で最初に迷うのは「どんな試行関数を選べばよいか」ですが、検索上位の講義資料や解説でも、指数関数型・ガウス型が定番として繰り返し登場します。
水素原子の基底状態っぽさを狙うなら、距離 r に対して指数減衰する \(e^{-\alpha r}\) 型が使われ、未知数 α を変分パラメータにして最小化します。
一次元調和振動子など二次ポテンシャルの問題では、ガウス \(e^{-\alpha x^2/2}\) が「形として合う」ため計算もしやすく、変分法の練習題材としてよく採用されます。
規格化(ノルムを1にする)は面倒に見えますが、実は「式の安定化」の役割が大きいです。規格化しないままでも期待値の分母で割るので理屈上は進められる一方、途中計算で定数が散らばり、微分して最小化する段階でミスが増えます。
建築の計算で「単位系を揃える」「荷重ケースの基準を揃える」ことで計算ミスが減るのと似ていて、ここは手抜きしない方が結果的に速いです。
参考)https://phys.sci.hokudai.ac.jp/~kita/QuantumMechanicsIII/QuantumMechanicsIII(variation).pdf
さらに、講義資料では「シュレーディンガー方程式を直接解く戦略」と「期待値を最小化する戦略」が等価である、という見せ方で整理されることがあります。
参考)https://qc.fpark.tmu.ac.jp/ryosi2/2012-12-12-1.pdf
この見せ方は、微分方程式を境界条件込みで解く代わりに、エネルギー汎関数の最小化として最適化問題に落とす、という発想の転換を強く印象づけます。
参考)https://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1278-6.pdf
変分法の計算の核は、\(\langle \psi|\hat{H}|\psi\rangle\) の積分(期待値)です。
たとえば講義資料では、ハミルトニアン \(\hat{H}\) と波動関数 ψ を使って「期待値を計算し、パラメータを最小化する」流れが、図や式で繰り返し示されます。
水素原子の例題でも、試行関数を入れて期待値を計算し、最後に α で微分して極小条件を使う、という段取りが明確に解説されています。
ここで“意外に効く”小技は、最初から「積分しやすい形」に寄せることです。調和振動子でガウスを選ぶのは物理的な類似だけでなく、ガウス積分の既知結果が使えて計算が閉じる、という計算上の理由が大きいです。
水素原子で指数関数を選ぶのも、球座標での体積要素(ヤコビアン)込みで積分が管理しやすい、という現実的な面があります。
計算が長くなる箇所は、講義ノートだと途中を整理して“期待値の形”だけを残し、最小化へ進む構成が多いので、まずはその型を真似するのが近道です。
建築従事者向けに言い換えると、これは「部材断面を仮定(試行関数)→応力や変形の評価式(期待値)→断面パラメータを調整(最小化)」に近い作業感です。
ただし量子力学では、評価したいのが“エネルギー”で、しかも演算子 H^ による期待値として出てくる点が違います。
参考)量子力学/変分法 - 武内@筑波大
この差を飲み込めると、変分法は「数式が難しい理論」から「作業手順のある最適化」に変わります。
変分法の最終工程は、期待値 \(E(\alpha)\) をパラメータ α で最小化して、近似エネルギーを得ることです。
水素原子の例題解説では、規格化→期待値→αで微分して0、という操作で最小条件を作り、結果を既知の基底エネルギーと比較して妥当性を確認する流れが示されています。
調和振動子の講義資料でも同様に、ガウス型の変分波動関数を置き、期待値を計算し、αに関して最小化してパラメータが決まる、という手続きが明示されています。
このときの「上界」という性質が、現場感覚でかなり重要です。すなわち、試行関数を改善すればエネルギーは下がっていき、理想的には真の E0 に近づくが、下から突き抜けて“良すぎる値”が出ることはない、という安心感です。
ただし注意点として、試行関数が物理条件(境界条件、正則性、規格化可能性)を満たさないと、この保証の意味が薄れたり、そもそも期待値が定義できなかったりします。
ここは「計算が通る=正しい」ではなく、「条件を満たす関数族の中での最小化」だと捉えるのがコツです。
上位教材では、変分法を“固有値問題の近似”として扱うだけでなく、行列(永年方程式)につながる多基底展開の入口として触れるものもあります。
参考)http://acbio2.acbio.u-fukui.ac.jp/phychem/maeda/kougi/BQC/2012/29JUN12.pdf
この視点を入れると、変分パラメータが1個の手計算例題から、基底関数を多数並べて係数を解く「線形変分法」へ自然に接続できます。
検索上位の多くは「水素原子」「調和振動子」といった物理の定番例題で、数学操作(規格化・期待値・微分)を中心に説明します。
ここでは独自視点として、建築の「最小化・最適化」と対比して、変分法の“意思決定の置き所”を整理します。
まず、建築の設計・解析では「自由度の取り方」が結果を強く支配します。変分法もまったく同じで、試行関数の自由度(パラメータ数、関数形、基底の選び方)が、近似の上限性能を決めます。
参考:一次元調和振動子の「変分波動関数(ガウス)→期待値→最小化」の計算例がまとまっているPDF
https://phys.sci.hokudai.ac.jp/~kita/QuantumMechanicsIII/QuantumMechanicsIII(variation).pdf
参考:基底状態の変分原理(エネルギー期待値の最小化として説明)を日本語で簡潔に読めるページ
量子力学/変分法 - 武内@筑波大