人工林種類と特徴|針葉樹広葉樹の分類管理方法

人工林種類と特徴|針葉樹広葉樹の分類管理方法

記事内に広告を含む場合があります。

人工林の種類と分類

📋 人工林の主な特徴
🌲
針葉樹人工林が主体

人工林の約95%が針葉樹で構成され、成長が早く建築用材として利用しやすいスギ、ヒノキ、カラマツが主要樹種

🏗️
木材生産を目的とした造成

植栽によって計画的に造成され、間伐や枝打ちなどの管理により良質な建築用材を生産

📊
全国で約1,020万ヘクタール

日本の森林面積の約4割を占め、現在は10齢級(46~50年生)以上の成熟した人工林が半数以上

人工林とは、人の手で植栽または播種によって造成された森林のことです。日本の森林面積の約4割、約1,020万ヘクタールが人工林であり、主に木材生産を目的として管理されています。人工林は森林の成立過程によって天然林と区別され、人為的な管理が継続的に必要な森林です。
参考)https://www.rinya.maff.go.jp/j/ken_sidou/forester/pdf/02_28_2bu.pdf

人工林の大きな特徴は、その約95%が針葉樹で構成されている点です。これは針葉樹が成長が早く、まっすぐに伸びるため通直な材が取りやすく、軽くて柔らかいため加工しやすいという建築用材としての優れた特性を持つためです。現在、日本の人工林の約51%が10齢級(林齢46~50年生)以上の高齢級人工林となっており、本格的な利用期を迎えています。
参考)針葉樹林と広葉樹林・混交林

人工林の主要針葉樹種類

日本の人工林を構成する主要な針葉樹には、スギ、ヒノキ、カラマツ、トドマツなどがあります。人工林の主要樹種の面積構成比は、スギが44%、ヒノキが25%、カラマツが10%、マツ類(アカマツ、クロマツ、リュウキュウマツ)が8%、トドマツが8%、広葉樹が3%となっています。
参考)【針葉樹の建築木材】日本と海外の主な種類とその特徴を写真付き…

スギ(杉) 🌲
スギは日本で最も多く植林されている針葉樹で、沖縄地方を除く全国に分布しています。成長速度が早く、30~40年で木材として使用できるようになります。スギは湿潤環境での生育が早く、強い日差しを効率よく受け止めるための立体的な葉の配置をしています。材密度が低く軽量で加工しやすいため、建築用材として広く利用されています。
参考)スギ、ヒノキってどんな植物? - 株式会社バイオーム

ヒノキ(桧) 🏘️
ヒノキはスギと比較すると乾燥した土地を好み、成長速度はスギよりやや遅めです。葉は平面的な配置をしており、乾燥した土壌からでも水を吸い上げる能力が高く、葉と木部の乾燥耐性が優れています。高品質な建築用材として評価が高く、特に寺社建築や高級住宅に使用されます。
参考)代表的な針葉樹スギ・ヒノキの生理的能力を解明 - 成長が早い…

カラマツ(唐松) 🔨
カラマツは成長が非常に早く、初回間伐が4齢級(16~20年)、2回目が6齢級(26~30年)、3回目が8齢級(36~40年)で実施されます。北海道を中心に植林され、強度が高いため構造材としての利用価値が高い樹種です。プレカット加工による建築構造材として活用が進んでいます。
参考)https://www.hro.or.jp/upload/10132/26766002001.pdf

トドマツ(椴松) 🏢
トドマツは北海道特有の針葉樹で、初回間伐が7齢級(31~35年)、2回目が9齢級(41~45年)、3回目が11齢級(51~55年)で実施されます。建築用材としての利用が55%を占め、成熟期を迎えた人工林からの木材供給が期待されています。
参考)https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/keikaku/other/attach/pdf/sinrinkeikaku_taikei-75.pdf

林野庁の民有林収穫予想表では、スギ、ヒノキ、カラマツが対象樹種として重点的に管理されており、林分密度管理図を活用した育成手法が確立されています。
参考)https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/sinrin_keikaku/attach/pdf/con_3-78.pdf

人工林の広葉樹種類

人工林の約95%以上が針葉樹で構成されていますが、広葉樹の人工林も存在します。広葉樹人工林は針葉樹と比較すると少数派ですが、特定の用途や地域特性に応じて造成されています。
参考)人工林とは - 植樹で原生林に近い土地本来の森を再生するネイ…

コナラ・ミズナラ 🍂
コナラ属の落葉広葉樹は、高密度で堅い木材となり、良質な炭の材料として利用されてきました。広葉樹林化マニュアルでは、既に広葉樹が侵入している人工林において、コナラやミズナラ、アベマキなどを活用した広葉樹林化が推奨されています。これらは萌芽能力が高い二次林種として分類されます。
参考)https://www.rinya.maff.go.jp/shikoku/ehime/attach/pdf/tennnennkousinn-1.pdf

ケヤキ(欅) 🏛️
ケヤキは高級広葉樹材として知られ、石川県林業試験場では約15年前から広葉樹の育成試験に取り組み、ケヤキ人工林の育成技術についての解説書を作成しています。美しい木目を活かして家具や内装材として利用され、建築業においても重要な樹種です。
参考)https://www.pref.ishikawa.lg.jp/ringyo/publish/documents/mizunara_1.pdf

その他の広葉樹 🌳
シイ、イチイガシなども人工林として造成される場合があります。これらの常緑広葉樹は、特定の地域や用途に応じて植栽されています。広葉樹は一般に成長が遅く、材は重く、木目が変化に富んでいるため、高級家具や内装材として価値が高い特徴があります。​
森林施業関係の用語では、人工林は「植栽または播種によって造成した森林」と定義され、スギ・ヒノキ・カラマツ・トドマツなど針葉樹が主体ですが、コナラ・シイ・イチイガシ・ケヤキなど広葉樹の人工林も存在することが明記されています。​

人工林と天然林の分類基準

森林を分類する際の基本的な基準は、その成立過程です。人工林は「森林の更生を人の手で行っている森林」で、人が管理しなければ維持できない森林を指します。一方、天然林は人工林以外の森林すべてで、何らかの形で人の手が入っていても、自然の力で更新する森林です。
参考)人工林と天然林

人工林の特徴として、効率性が求められるため、一度に同じ種類の樹木を大量に植えることが一般的です。その結果、人工林は同じ樹齢の木で構成されることが多く、これを単層林と呼びます。対照的に天然林は様々な樹齢の木が混在する複層林構造を持つことが多くあります。​
人工林の分類項目 📝

林野庁の森林計画では、人工林を齢級別に管理し、スギの初回間伐が5齢級(21~25年)、2回目が7齢級(31~35年)、3回目が9齢級(41~45年)で実施されるなど、樹種ごとに適切な管理スケジュールが定められています。​
人工林と天然林の面積比では、針葉樹林と広葉樹林がほぼ同程度存在しますが、人工林ではスギ、ヒノキに代表される針葉樹林が9割以上を占め、天然林では広葉樹林が8割以上を占めるという明確な違いがあります。​

人工林の管理方法と特性

人工林を健全に育成するためには、植栽から伐採まで長期にわたる計画的な管理が必要です。建築業従事者として理解しておくべき人工林の管理方法には、以下のような作業工程があります。
参考)天然林・人工林の違いとは?役割や課題、手入れ方法までわかりや…

主な管理作業の流れ 🔄

  1. 地拵え(じごしらえ):植栽前に伐採跡地の枝や根、雑草を除去し、苗木の根付きと生長を促進します​
  2. 植栽(植え付け):環境に適した樹種を選定し、適切な間隔で苗木を植えます​
  3. 下刈り・つる切り:苗木に太陽光が当たるよう、周囲の雑草やつる植物を除去します(-2~3年)

    参考)森の遷移と手入れ作業

  4. 除伐:発育不良の木や目的外の樹種を伐採し、目的樹種の生育を促進します​
  5. 枝打ち:幹から不要な枝を除去し、節がない良質な木材を生産します​
  6. 間伐:密になった人工林の一部を伐採し、残された木々の生長を促進します​
  7. 主伐:目標に達した木を伐採し、収穫します​

人工林は大きく分けて経済林と里山林に分類され、現在の人工林は林業などの商業目的で利用されることがほとんどです。そのため、効率的な木材生産を実現するための密度管理が重要となります。​
間伐の重要性 ⚠️
森林内が過密になると暗くなり、下草も生えない状態になります。特に間伐(間引き)は森林管理において最も重要な作業の一つで、5年に1度の割合で実施されるのが最適です。間伐を適切に実施することで、残された木々の生長が促進され、良質な木材生産と森林の健全性維持に貢献します。
参考)森林(人工林)には手入れが必要

人工林管理の現場では、齢級の偏り(5~7齢級に集中)を平準化する最も簡単な方法として、大面積の同齢単純林において小面積皆伐と長伐期施業を組み合わせた手法が採用されています。現在、10齢級以上の人工林が適正な密度管理により、おおむね100年生まで上層木を維持できる状態が理想とされています。
参考)https://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/kakusyu_siryo/pdf/00270_3_h8_004.pdf

人工林の建築用材としての利用特性

建築業従事者にとって、人工林材の特性を理解することは、適切な木材選択と活用において極めて重要です。人工林材は建築用材として様々な用途に利用されており、樹種ごとに異なる特性があります。

 

スギ材の建築利用 🏠
スギは軽量で加工しやすく、乾燥処理とプレーナ加工(寸法調整)を施すことで、高品質な建築材として利用できます。10.5cm角材を採るには原木径級が16~18cmあれば十分で、必ずしも大径化する必要はありません。蒸散能力が高く水消費型の樹種であるため、乾燥処理が重要となります。​
ヒノキ材の建築利用 🏯
ヒノキは乾燥耐性が高く、高品質な建築用材として評価されています。スギと比較すると成長は遅いものの、耐久性に優れ、特に寺社建築や高級住宅の構造材として重宝されます。​
カラマツ材の建築利用 🔩
カラマツは構造強度が高く、乾燥・飽削(寸法調整)の機能を付加し、さらにプレカット加工を施すことで、建築材としての展望が開けます。柱寸法は外壁が12×18cm角と18cm角の二通りがあり、75mm厚さの外壁材をはめ込むための構造設計が可能です。​
トドマツ材の建築利用 🏢
トドマツは建築用材としての利用が55%を占め、輸送用資材は18%に過ぎません。北海道では成熟期を迎えたトドマツ人工林からの木材供給が期待されており、平成48年度の木材供給量目標値600万m³においてトドマツが主体になると考えられています。
参考)https://www.hro.or.jp/upload/8491/1706-1.pdf

建築用材として人工林材を活用する際のポイントは、乾燥処理と寸法調整です。輸入製材の90%がプレーナ加工処理をしているため、国産人工林材も同様の処理を施すことで競争力を持つことができます。​
人工林の用途 🎯
人工林の主な用途は「木材の収穫」ですが、それだけではありません。健全に育成された人工林は「森林の多面的機能」を発揮することができるため、二酸化炭素の吸収、国土の災害防止、水源涵養など、多様な役割を果たします。特に二酸化炭素吸収量の大きい針葉樹から主に構成されている人工林は、地球温暖化防止に果たす役割が大きいとされています。
参考)木材の利用の促進について:林野庁

戦後造成された人工林が利用期を迎える中で、森林資源を循環利用し林業の成長産業化を実現するためには、建築物における木材利用を促進することが重要です。「伐って、使って、植えて、育てる」という人工林のサイクルを維持することが、持続可能な森林管理と建築業の発展につながります。
参考)民間建築物等における木材利用促進に向けた協議会(ウッド・チェ…

愛知県では森林面積の6割強が人工林で、その9割近くが建築用材としての利用に適した46年生以上となっており、森林資源の充実化が進んでいます。このように各地域で成熟した人工林材の建築用途への活用が推進されています。
参考)愛知県

参考:林野庁 森林の適正な整備・保全の推進
木材の利用の促進について:林野庁
参考:森林総合研究所 スギ・ヒノキの生理的能力データベース
https://www.ffpri.go.jp/