
木材の寸法規格は、JAS(日本農林規格)によって厳格に定められています。この規格により、建築業界では統一された寸法での材料調達が可能となり、設計から施工まで効率化が図られています。
JAS規格では、製材を用途別に以下のように分類しています。
これらの分類により、それぞれ異なる品質基準と寸法規格が適用されます。特に構造用製材では、目視等級区分と機械等級区分の2つの方法で強度性能が評価され、設計時の基準強度が明確に定められています。
目視等級区分では、節の大きさや年輪幅などを目視で確認し、1級から3級まで等級付けされます。一方、機械等級区分では、グレーディングマシンで測定されたヤング係数により、E50からE150まで6段階に分類されます。
JAS規格品を使用する最大のメリットは、構造計算における基準強度が国土交通省告示で明確に定められていることです。これにより、設計者は安心して構造計算を行うことができます。
構造用製材は、使用部位により甲種構造材と乙種構造材に分類され、それぞれ異なる寸法規格が設定されています。
甲種構造材(曲げ性能重視)
水平方向に使用される部材で、高い曲げ性能が要求されます。
乙種構造材(圧縮性能重視)
垂直方向に使用される部材で、主として高い圧縮性能が必要とされます。
実際の建築現場でよく使用される構造材の標準寸法を以下に示します。
部材名 | 樹種 | 標準寸法(mm) | 長さ |
---|---|---|---|
土台 | 桧・防腐栂・米ヒバ | 120×120、105×105、100×100 | 4m・3m |
柱 | 杉・桧・集成材 | 120×120、105×105、100×100 | 6m・3m |
梁 | 米松・杉・桧 | 360×120~150×120 | 6m~3m |
大引 | 杉・米松 | 90×90、75×75 | 4m・3m |
これらの寸法は関東寸法と呼ばれる標準的な規格で、地域によって若干の違いがある場合があります。
ツーバイフォー材は、枠組壁工法構造用製材としてJAS600規格で定められており、SPF材として広く流通しています。アメリカ由来の規格で、インチ表記による呼称と実際の仕上がり寸法には差があることが特徴です。
主要なツーバイフォー材寸法規格。
寸法型式 | 呼称 | 読み方 | 厚さ(mm) | 幅(mm) |
---|---|---|---|---|
104 | 1×4 | ワンバイフォー | 19 | 89 |
106 | 1×6 | ワンバイシックス | 19 | 140 |
204 | 2×4 | ツーバイフォー | 38 | 89 |
206 | 2×6 | ツーバイシックス | 38 | 140 |
208 | 2×8 | ツーバイエイト | 38 | 184 |
210 | 2×10 | ツーバイテン | 38 | 235 |
404 | 4×4 | フォーバイフォー | 89 | 89 |
これらの寸法は乾燥材(含水率19%以下)の規定寸法です。特に2×4、2×6、4×4材は市場流通量が多く、比較的入手しやすい規格となっています。
ツーバイフォー材の特徴として、以下の点が挙げられます。
枠組壁工法では、これらの規格材を組み合わせて構造体を構成するため、寸法の統一性が非常に重要となります。
下地材と造作材は、それぞれ異なる用途と品質要求に応じた寸法規格が設定されています。
主要な下地材(野物材)の寸法規格。
部材名 | 標準寸法(mm) | 用途 |
---|---|---|
間柱 | 45×40、40×30 | 壁下地構造材 |
根太 | 45×40 | 床下地材 |
垂木 | 45×40、40×36 | 屋根下地材 |
胴縁 | 45×15、45×13 | 外壁下地材 |
貫 | 90×15、90×13 | 軸組補強材 |
造作材の標準寸法規格。
部材名 | 樹種 | 標準寸法(mm) | 等級 |
---|---|---|---|
敷居 | 桧・集成材 | 105×45 | ムジ・上小 |
鴨居 | 桧・集成材・杉 | 105×40 | ムジ・上小 |
長押 | 桧・集成材・杉 | 100×40×6、90×36×6 | ムジ・上小 |
幅木 | 桧・集成材・杉 | 100×24、90×24~18 | ムジ・上小 |
造作材の等級表示について、重要なポイントは以下の通りです。
これらの等級により、使用部位の重要度に応じた材料選定が可能となります。
実際の建築現場では、規格寸法以外にも考慮すべき要素が多数存在します。経験豊富な設計者や現場監督が重視する実務的なポイントを解説します。
尺貫法とメートル法の使い分け
建築業界では現在でも尺貫法が根強く使用されており、以下の換算知識が必要です。
実務でよく使われる略称。
含水率と寸法変化への配慮
木材は含水率により寸法が変化するため、以下の点に注意が必要です。
地域特性と流通事情
品質管理における注意点
これらの実務知識を活用することで、設計段階から施工まで効率的な材料選定と品質管理が可能となります。特に木造住宅や中大規模木造建築では、適切な寸法規格の選択が工期短縮とコスト削減に直結するため、これらの基礎知識の習得は建築業従事者にとって必須といえるでしょう。
農林水産省による製材の日本農林規格では、寸法許容差についても詳細に規定されており、仕上げ材と未仕上げ材で異なる基準が設けられています。設計者はこれらの許容差も考慮した詳細図作成が求められます。