

国家公務員倫理の実務で頻繁に出てくる「利害関係者」は、単に“知り合いの会社”“取引先”という広い意味ではなく、「その職員が現に携わっている一定の事務の相手方」という考え方で切り分けられます。
つまり、同じ省庁・同じ役所にいる職員でも、担当する事務が違えば、A職員にとっては利害関係者でもB職員にとっては利害関係者ではない、という“職務ベース”で判定されるのがポイントです。
建築・公共工事の文脈に置き換えると、次のような接点がある相手は「利害関係者」になりやすいです。※実際は「その国家公務員が携わる事務」との関係で最終判断されます。
参考)倫理法・倫理規程Q&A
参考)https://www.keidanren.or.jp/japanese/news/announce/200209.html
参考)https://www.k-koutori.com/wp-content/uploads/2023/10/231031b.pdf
意外と見落とされがちなのが「名刺交換して世間話した」程度でも、相手が“担当事務の相手方”である限り「慎重な接触が求められる対象」に入る、という発想です。
「利害関係者」というラベルは“悪者扱い”ではなく、疑惑や不信を招かないために接触ルールを強化するための分類だと理解すると、現場の運用に落とし込みやすくなります。
参考:利害関係者の考え方(Q4・Q5)と、禁止行為の全体像がまとまっている
倫理法・倫理規程Q&A
倫理規程では、利害関係者からの金銭・物品の贈与や接待を受けることなどを禁止する、という骨格が示されています。
加えて、割り勘であっても利害関係者と「共にゴルフや旅行」を行うことが禁止されるなど、“金額の大小”だけでは片付かない禁止がある点が重要です。
建築・工事の取引では、次の「よくある慣習」が地雷になりやすいです(国家公務員側が受けるとアウトになり得る、という意味で、企業側も配慮が必要です)。
ここで押さえたいのは、企業側の感覚としては「ビジネスマナー」「安全配慮」「現場の気遣い」であっても、国家公務員側のルールでは“疑惑や不信を招く構造”として強めに線が引かれている、という点です。
現場レベルでは「誰が払ったか」だけでなく、「利害関係者との関係で、その行為自体が禁止に当たるか」を先に確認する運用が安全です。
利害関係者は「いま担当している事務の相手方」だけで終わりません。
Q&Aでは、過去3年間に在職したポストの利害関係者は、異動後3年間は引き続き利害関係者とみなされる、という取扱いが明記されています。
この“過去3年ルール”が厄介なのは、現場の体感とズレるからです。例えば、発注側の担当者が部署異動して「もう契約担当じゃないから大丈夫でしょ」と見えても、相手の側(企業)からすると引き続き利害関係者として扱われる可能性があります。
さらに、別の国家公務員Bが、Aの持つ官職上の影響力を期待されて接触を受けていることが明らかな場合は、Bにとっても利害関係者とみなされる、という考え方も示されています。
建築の案件では、次のような“人の移動”が頻繁なので、過去3年の視点を運用に入れると事故が減ります。
実務のコツは、「相手が異動したか」ではなく「過去3年に関与した案件・契約・検査の関係があるか」を社内メモとして残し、会食やイベント招待の判断材料にすることです。
「利害関係者=一切接触禁止」と誤解されがちですが、実態は“禁止される行為がある”という設計です。
またQ&Aでは、「私的な関係」がある利害関係者との間でも、職務上の利害関係の状況や私的関係の経緯、行為の態様などを考慮して、疑惑や不信を招くおそれがないと認められる場合に限り、規制されている行為を行うことができる、という整理が示されています。
ここは、建築業界の読者にとって現実的な論点です。例えば、同級生がたまたま発注側にいて、こちらが受注側にいるケースは起こり得ます。
ただし「友人だからOK」と短絡すると危険で、少なくとも次の観点で“第三者から見た疑念”を潰す必要があります。
「私的な関係」は免罪符ではなく、例外が“狭く”設計されている領域だと捉えると、現場の判断がブレにくくなります。
検索上位の一般解説では、贈与・接待・ゴルフなど典型例が中心になりがちですが、建築現場では「安全・段取り・移動・時間」の都合で“役務提供”が自然発生しやすいのが独特です。
たとえば、現場が遠方で公共交通が乏しい場合に「車で送迎する」「構内車両で移動させる」「帰りのタクシーを手配する」といった行為は、善意でも無償の役務提供として問題化し得る、という注意喚起が資料で示されています。
さらに盲点になりやすいのが「現場での小さな便宜」です。
こうした“工事の円滑化”は、現場の論理では合理的でも、外形的には「発注・検査・補助金などの相手方が便宜を図った」に見えやすい領域です。
独自の対策としては、現場で判断させず、会社として「国家公務員が来る時の標準対応(送迎・飲食・記念品・会食の可否)」を定め、迷ったら相手方機関または倫理審査会事務局へ確認する導線を作るのが有効です。
参考)https://kumaken.or.jp/files/libs/2515/202412031619247705.pdf
参考:企業側に向けた「国家公務員とのお付き合い」注意点(禁止行為の例がまとまっている)
https://www.k-koutori.com/wp-content/uploads/2023/10/231031b.pdf