高圧ガス保安法例示基準と適合性評価における技術基準の運用

高圧ガス保安法例示基準と適合性評価における技術基準の運用

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高圧ガス保安法例示基準の概要と適合性評価

高圧ガス保安法例示基準の3つの重要ポイント
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技術的要件の具体化

一般高圧ガス保安規則に定める技術的要件を満たす内容を具体的に例示

適合性の判断基準

例示基準に基づく場合は機能性基準に適合すると判断される

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柔軟な対応可能性

例示基準以外でも十分な保安水準の技術的根拠があれば適合と判断

高圧ガス保安法例示基準の基本的な位置づけ

高圧ガス保安法における例示基準は、一般高圧ガス保安規則に定める技術的要件を満たす技術的内容をできる限り具体的に例示したものです。経済産業省が定めたこの基準は、高圧ガス設備の製造や検査を行う際の重要な指針となります。

 

例示基準の特徴として、この基準に限定されるものではなく、一般高圧ガス保安規則に照らして十分な保安水準の確保ができる技術的根拠があれば、規則に適合するものと判断される点が挙げられます。これにより、技術革新や特殊な設計にも柔軟に対応できる仕組みとなっています。

 

例示基準には、境界線・警戒標等標識、流動防止措置、防火上及び消火上有効な措置、耐圧試験及び気密試験、高圧ガス設備及び導管の強度、ガス設備等に使用する材料、高圧ガス設備等の基礎、圧力計及び許容圧力以下に戻す安全装置など、多岐にわたる技術基準が含まれています。

 

高圧ガス保安法例示基準における機能性基準の適合性評価

機能性基準への適合性評価は、個々の事例ごとに判断することが原則となっています。一般高圧ガス保安規則の機能性基準の運用において、例示基準のとおりである場合には、当該機能性基準に適合するものとして扱われます。

 

適合性評価の手続きでは、許可、届出、検査及び認定において適用すべき機能性基準の詳細基準が例示基準に基づく場合と、それ以外の場合で取扱いが異なります。例示基準に基づかない場合における機能性基準の運用・解釈を明らかにするため、指定完成検査機関、指定保安検査機関、関係都道府県、産業保安監督部、高圧ガス保安協会、および経済産業省商務情報政策局産業保安グループ高圧ガス保安室による運用統一連絡会が高圧ガス保安協会に設置されています。

 

建築事業者にとって重要なのは、自社の設備や施設が例示基準に該当するかどうかを正確に把握し、該当しない場合でも適切な技術的根拠を示すことで適合性を証明できる点です。

 

経済産業省の「一般高圧ガス保安規則の機能性基準の運用について」には、例示基準の詳細な内容と運用方法が記載されています

高圧ガス保安法例示基準と詳細基準事前評価制度

例示基準によらないで機器の製作や高圧ガスの製造等を行おうとする場合には、詳細基準事前評価という制度が用意されています。この評価は、関係規則に係る例示基準によらない場合に、適用する詳細基準の妥当性について通達に基づいて行われるものです。

 

詳細基準事前評価を受けるには、高圧ガス保安協会に申請書を提出する必要があります。申請書には、当該適合性評価において適用する詳細基準、その詳細基準が機能性基準に適合することを証明する資料などを添付します。

 

この制度により、技術革新や特殊な設計要求に対応しつつ、安全性を確保することが可能となります。建築事業者が新しい技術や工法を採用する際には、この詳細基準事前評価の活用を検討することで、例示基準に縛られない柔軟な設計が実現できます。

 

評価の流れとしては、申請者が高圧ガス保安協会に必要書類を提出し、協会が技術的な審査を行い、詳細基準が機能性基準に適合するかを判断します。グループ申請という制度もあり、複数の事例が同一の仕様で詳細基準が同一である場合には、同一の申請書類で申請することも可能です。

 

高圧ガス保安法例示基準の主要項目と技術要件

例示基準には、高圧ガス設備の設計・製造・検査に関する具体的な技術要件が定められています。主要な項目として以下のようなものがあります。

 

境界線・警戒標等標識の基準
事業所の境界線は、壁、門、柵等を設置するか、地上にペイントで線を引くこと等により明示する必要があります。警戒標は、事業所の境界柵、塀等に設けられている出入口それぞれの付近で外部から見やすい場所に掲げることが求められます。高圧ガスを移動する車両の警戒標についても、サイズや色、表示内容について詳細な規定があります。

 

耐圧試験及び気密試験の基準
高圧ガス設備、貯蔵設備等及び導管の耐圧試験及び気密試験については、試験方法、試験圧力、試験媒体などが詳細に定められています。耐圧試験では、水等の液体または不活性ガスを用いた試験が規定されており、耐震設計構造物に対する特別な配慮事項も含まれています。気密試験は、耐圧試験に合格した後に実施され、危険性のない気体を用いて行われます。

 

高圧ガス設備等に使用する材料の基準
高圧ガス設備に使用する材料については、強度、耐食性、低温脆性などの観点から適切な材料を選定することが求められます。材料の選定基準、溶接材料、ボルト材料などについて詳細な規定があり、使用するガスの種類や圧力、温度条件に応じた適切な材料選定が必要です。

 

高圧ガス設備等の基礎及び耐震設計
高圧ガス設備の基礎については、設備の重量や地震力などに対して十分な強度を有することが求められます。また、一定の高さや処理能力を超える設備については、耐震設計が義務づけられており、告示で定められた耐震性能を満たす必要があります。

 

高圧ガス保安協会のウェブサイトでは、例示基準の改正・追加に係る制度について詳しい情報が提供されています

高圧ガス保安法例示基準の改正・追加提案と運用統一連絡会の役割

例示基準は、技術の進歩や社会的要請に応じて改正・追加が行われます。高圧ガス保安協会では、民間からの提案に基づいて例示基準の改正・追加の事前審査を行っており、最終的な改正・追加は経済産業省が行います。

 

改正や追加の提案を行う際には、改正又は追加を必要とする技術基準の該当規定を明確にする必要があります。該当部分のコピーに手書き等で明示するなど、できるだけわかりやすく示すことが求められます。

 

運用統一連絡会は、例示基準に基づかない場合における機能性基準の運用・解釈を明らかにするために設置されている組織です。この連絡会には、指定完成検査機関、指定保安検査機関、関係都道府県及び地方自治法第252条の19第1項に規定する指定都市、産業保安監督部、高圧ガス保安協会、経済産業省商務情報政策局産業保安グループ高圧ガス保安室が参加しています。

 

この連絡会により、全国的に統一された運用・解釈が確保され、事業者にとって予測可能性の高い規制運用が実現されています。建築事業者が高圧ガス設備を含む施設を計画する際には、この運用統一連絡会での議論や決定事項を参照することで、適切な設計・施工を行うことができます。

 

例示基準は一般則、コンビナート等保安規則(コンビ則)、容器保安規則(容器則)など、各保安規則ごとに定められており、適用される規則に応じた例示基準を参照する必要があります。一般則は製造施設、貯蔵施設、消費施設や移動、販売、廃棄についての規則であり、高圧ガスを使用している事業者のほとんどに適用されます。コンビ則は一般則をより強化したもので、コンビナート地域等の指定されたエリアにある事業者または特定製造事業者に適用されます。

 

建築事業者にとって、これらの規則と例示基準の体系を理解し、自社の事業に適用される規則を正確に把握することが、法令遵守と安全な施設運営の第一歩となります。不明な点がある場合には、高圧ガス保安協会や所轄の産業保安監督部、都道府県の担当部署に相談することで、適切な指導を受けることができます。