民事執行法と警察の援助と立会い

民事執行法と警察の援助と立会い

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民事執行法と警察

民事執行法と警察:現場で迷わない要点
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警察の出番は「抵抗排除」と「立会い」

民事執行の主体は執行官だが、抵抗があれば警察上の援助を求められる(民事執行法6条)。また住居への立入りでは警察官等の立会いが必要になる場面がある(同7条)。

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立入り・開錠は「執行官の手続」

不動産の現況調査等では、執行官が立ち入り・質問・文書提示要求を行い、必要なら閉鎖した戸を開く処分もできる(同57条)。

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建築従事者は「現場安全」と「越権」を分ける

現場は感情が高ぶりやすい。施工・保全・原状回復に絡む立会いでは、私物処分・鍵交換・立退き誘導などを誰が決めるかを事前に線引きし、違法リスクを避ける。

民事執行法 警察上の援助と執行官

民事執行法の枠組みでは、民事執行を行う中心は「裁判所又は執行官」であり、警察が主役になる制度ではありません。したがって、現場で「警察が来た=警察が明渡しをやる」と短絡すると、関係者の動きが歪み、現場が荒れます。まず押さえるべきは、執行官が職務執行中に抵抗を受けるとき、抵抗排除のため「威力を用い、又は警察上の援助を求めることができる」という条文です(民事執行法6条1項)。この「援助を求めることができる」は、警察が民事紛争の当事者間で権利義務を判断するという意味ではなく、あくまで執行官の職務が適法に進行するための補助線として理解するのが安全です(民事執行法6条1項)。


建築・不動産の現場で多いのは、退去・現況調査・保全の局面で、占有者や関係者が「これは民事だ、警察は帰れ」「逆に警察が全部やれ」と極端に振れるケースです。そこで使える説明はシンプルで、「執行官が法に基づいて動く」「警察は執行官の援助として秩序維持・抵抗排除の側面で関与し得る」という線引きです(民事執行法6条1項)。現場責任者としては、怒号が飛び始めた時点で、誰が誰に何を命じられるのか(執行官、警察、債権者側の業者、管理会社、施工者)を口頭で整理し、越権を避けることが事故・炎上の予防になります。


民事執行法 警察官の立会いと住居

次に重要なのが「立会い」です。民事執行法は、人の住居に立ち入って職務を執行する場面で、住居主や代理人等に出会わないとき、市町村職員・警察官など「証人として相当と認められる者」を立ち会わせなければならないと定めています(民事執行法7条1項)。ここは、建築従事者が誤解しやすいポイントで、警察官の立会いは「居住者を説得して退去させるため」ではなく、「手続の適正さを担保する証人性」や「安全確保」の性格が強い、と捉える方が実務的です(民事執行法7条1項)。


また、執行官が前述のとおり警察上の援助を受ける場合でも、同様に立会いが必要になる旨が条文に明記されています(民事執行法7条1項)。つまり現場では、「警察が来ているから立会い要件を満たす」ではなく、「立会いが必要な局面で、適切な立会人が置かれているか」を確認する運用が大切です(民事執行法7条1項)。工事関係者が立会人として当然に適任になるわけではなく、利害関係や中立性の観点で不適切と判断されうるため、執行官の指示に従い、勝手に“立会い役”を買って出ないほうが安全です。


民事執行法 警察と現況調査と閉鎖した戸

建築現場の関心が高いのは「いつ、どこまで入れるのか」「鍵や扉はどうなるのか」です。民事執行法上、不動産の形状・占有関係等の現況調査は執行官が担い、調査のために不動産に立ち入り、債務者や占有者に質問し、文書提示を求めることができます(民事執行法57条2項)。さらに必要があるときは、執行官は「閉鎖した戸を開くため必要な処分」をすることができます(民事執行法57条3項)。


この条文の実務インパクトは大きく、たとえば「居留守」「施錠」だけで調査が止まる設計ではありません。とはいえ、誰でも勝手に開錠してよいわけではなく、あくまで執行官の職務として、必要性の範囲で行われます(民事執行法57条3項)。建築従事者が関与する場合に注意したいのは、作業員や管理側が独断で鍵を破壊・交換したり、室内の物品に触れたりすると、執行手続の外側で別の紛争(不法行為・窃盗疑い・器物損壊疑い等)を誘発しやすい点です。現場では「執行官の指示により、必要な範囲で、記録を残して」動く、これが結局いちばん強い防御になります(民事執行法57条3項)。


参考:民事執行法の条文(執行官が警察上の援助を求めることができる/住居立入りの立会い/現況調査と閉鎖した戸の開放)が確認できる
民事執行法(法務省・日本法令外国語訳DBのPDF)

民事執行法 警察と休日と夜間の執行

現場スケジュールの都合(引越し繁忙期、近隣クレーム、工事工程)から「夜に一気に片付けたい」「休日に立ち会いたい」という発想が出ることがありますが、住居への立入りは時間帯でルールが変わります。民事執行法では、執行官等が日曜その他の一般休日、または午後7時から翌午前7時までに住居へ立ち入って職務執行するには、執行裁判所の許可が必要です(民事執行法8条1項)。また、その許可を受けたことを証する文書の提示義務も置かれています(民事執行法8条2項)。


建築従事者の実務で効くのは、この時間帯規制が「施工や搬出の都合」より優先される場面があるという点です。たとえば、現場の騒音対策・通行規制・近隣対応を計画する際、執行の着手が夜間にずれ込むリスクを見込んで、許可の有無や当日の進行の見立てを事前に確認しておくと、警察を呼ぶ/呼ばない以前に、現場が混乱しにくくなります(民事執行法8条1項)。「警察がいるなら夜でも強行できる」といった理解は危険で、許可・提示という形式要件が、後から手続の適法性を支える重要パーツになります(民事執行法8条2項)。


民事執行法 警察と建築の独自視点

検索上位の解説は「民事不介入」や「強制執行妨害」に寄りがちですが、建築従事者が本当に困るのは、工事・管理・安全配慮が絡む“グレーな作業境界”です。たとえば、現況調査や明渡しの前後に、漏水・ガス臭・躯体の損傷など、建物の安全に関わる緊急対応が必要になることがあります。ここで重要なのは、緊急対応の目的(生命身体・二次被害防止)と、執行の目的(占有状況の把握、引渡し等)を切り分け、現場記録(写真・時刻・誰の指示か)を残し、執行官の指揮系統に触れる作業は必ず確認を取ることです(民事執行法57条2項)。


また、立会人が必要な状況では「誰が見ていたか」が後から争点になり得るため、施工者側のメモやチェックリスト(搬出物の扱い、扉・鍵の状態、室内の既存損傷、メーター位置等)は、現場の信用を守る武器になります(民事執行法7条1項)。一方で、立会人の役割を勘違いして、施工側が当事者の主張を代弁したり、占有者に対して退去を強要するような言動をすると、逆に紛争の火種になります。建築従事者の“独自視点”としては、警察の有無よりも「手続の外側で起こる事故(転倒、切創、感電、火災)」をどう封じるかが重要で、その意味で、執行官・警察・近隣・ライフライン事業者との連絡経路を一本化する運用設計が、結果的にコストとリスクを下げます(民事執行法6条1項)。