
水抜きダイエットは、体内の水分を一時的に減らすことで体重を落とす方法です。人間の身体は一定の塩分濃度を保とうとする性質があり、体内の塩分量が下がると水分を体外に逃がすことで塩分濃度を一定にしようとします。この生理的な仕組みを利用して、主にアスリートや格闘家が試合前の計量をクリアするために実施しています。
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ただし、水抜きダイエットによる体重減少はあくまで体内の水分の減少によるもので、実際の脂肪量や筋肉量には影響を与えません。そのため、一時的でも体重を落としたいときに正しい方法を用いて実施することで効果を発揮する方法であり、長期的なダイエットには不向きです。結婚式や撮影など特別なイベント前のむくみ対策として活用されるケースが多く見られます。
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体内の約6割を占める水分を抜くダイエットのため、正しい方法で実施しないと健康を害する危険性があります。最近ではアスリートの「水抜き減量」に対しても危険性が指摘されており、一般の方が安易に真似するのは大変危険です。
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水抜きダイエットは、最低でも4日〜1週間程度の時間をかけて段階的に実施する必要があります。初めに塩分と炭水化物をカットします。塩分(ナトリウム)には水分を溜め込む性質があるため、過剰に摂取するとむくみの原因になります。炭水化物も水と結合する性質があるため、完全にカットすることでその分の水分はなくなっていきます。
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次に大量の水を摂取する段階に入ります。初日は10リットル、2日目は8リットル、3日目は6リットルを目安に大量の水を摂取します。大量の水は体内に残った塩分を流す作用があるため、効率的な体内の水分排出が期待できます。この方法は「ウォーターローディング」とも呼ばれ、体内の水分量が多ければ排出が促進される身体の恒常性機能を利用しています。
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4日目以降は水分摂取量を減らしていき、1日2リットル前後の摂取に調整します。最終段階として、途中で少し塩分摂取してしまった方や、もう少しだけ体重を落としたい方は、サウナや半身浴の利用が推奨されます。多少強引でも汗をかけるため、短時間で体外に水分を排出できます。
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塩抜きダイエットでは、塩分を1日あたり500mg以下に制限することが推奨されています。具体的には、塩、醤油、味噌、ソース、ケチャップ、コンソメ、だしパックなどの調味料を避ける必要があります。計量3日前から塩抜きを始めると、水分は塩分にくっつくため体内に塩分が残っているとうまく水が抜けず、水抜きの際に体重が落ちません。
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この期間中は調味料を避け、味付けのない素材のみの食事を摂ります。減量中は工夫することで低糖質、低カロリーでも美味しいものが食べられますが、塩抜きだけはどうしても逃げ道がなく地獄と表現されることもあります。3日間は階段を登るのもしんどいくらいの脱力感に襲われながら過ごすケースが多く報告されています。
参考)減量とリカバリー|今井健斗
塩分を断つと同時に、カリウムと食物繊維をたくさん摂取することが重要です。アボカド、バナナ、さつまいも、デーツなどがカリウムを多く含む食品として推奨されます。カリウムは体内の塩分を排出する作用があり、塩抜きの目的にマッチしています。塩抜きの3日間で約1kgの体重が落ちるケースが多く見られます。
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むくみ解消に効果的な食材については、ツムラの漢方コミュニケーションブログで詳しく解説されています
サウナや半身浴は水抜きダイエットの最終段階で活用される方法です。格闘技の世界では「水抜き減量」という言葉がポピュラーで、計量直前に体内水分量を一気に減らす方法として、サウナスーツを着て身体を動かし、さらに半身浴などで体重を落とす手法が使われています。
参考)水抜き記録|椿 飛鳥
半身浴は「水抜き」的効果による入浴前後の体重変化が見えやすいという側面があります。お風呂ダイエットの手段として半身浴が女性の間でもてはやされることがありますが、これは身体構成物質のうち最も「出し入れ」が活発かつ容易で、瞬時に体重に反映される水分の性質を利用したものです。
サウナや半身浴で2〜3kg、多い人で5〜7kgなどを短期間(1〜2日)で落とすことが可能とされていますが、これは一時的な水分減少によるものです。半身浴では下半身で温められた血液が外気にさらされる上半身にまわると、そこで冷やされてしまう側面もあります。ダイエットという観点では、全身浴の方が「温熱作用」による血流増大効果が高いとされています。
方法 | 効果 | 注意点 |
---|---|---|
サウナ | 短時間で大量発汗、即効性が高い | 脱水リスクが高く専門家の指導が必要 |
半身浴 | 身体への負担が少なく長時間実施可能 | 温熱効果は全身浴より低い |
全身浴 | 血流促進効果が最も高い | 心臓への負担が大きい |
水抜きダイエットには重大な危険性とリバウンドリスクが伴います。一般の人が行う水抜きは、体脂肪を減らすものではなく、一時的に水分を抜くだけであるため、リバウンドする可能性が非常に高く、健康を害するリスクが大きいため推奨されていません。体から一時的に水分を抜く水抜きは、水分摂取や食事量を戻せば体重も元通りになります。
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脱水症状は水抜きダイエットで最も警戒すべきリスクです。脱水とは体内の水分が不足している状態のことで、摂取する水分よりも失う水分が多い場合に起こります。初期症状としてはのどが渇いたり発汗が少なくなったり軽度なものが多いですが、重度になると血圧が下がりふらつきや失神が特に立ち上がるときに起きてくるのが特徴です。さらに重度になると、臓器に損傷を与えたり昏睡状態に陥ったり生命の危機に関係する問題となります。
水抜き法は短期間で大きく体重を落とせる一方で、脳の回復が遅れることから外傷リスクを高める危険性があります。身体が水分を補給すれば回復していきますが、脳はそう簡単には元に戻りません。その理由は「血液脳関門」と呼ばれる仕組みにあり、これは脳の環境を守るため物質の出入りを厳密に制限する構造です。そのため身体の水分は回復しても脳内の水分はすぐに戻らず、数時間〜十数時間の「ズレ」が生じます。
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読売新聞の記事では、日本ボクシング界で死者が相次ぐ背景として水抜き減量の危険性が指摘されています
水抜きダイエットを実施する際は、段階に応じた適切な水分補給が不可欠です。塩抜きダイエットをおこなうと、水分が体外に排出されやすくなるため、脱水状態にならないようにこまめに水分補給をすることがポイントです。1日あたり十分な水分を摂取する必要があります。
参考)【管理栄養士監修】塩抜きダイエットの正しいやり方とは?1〜3…
人の体は約60%の水分で構成されており、水分が不足すると体温調整の乱れや、食欲低下、意識障害、頻脈などの症状が起こりやすくなります。1日に摂取すべき必要な水の量は、成人の男女で約2.3~2.5Lです。尿や汗などで1日に排出される分を考慮し、水分補給をおこなう必要があり、厚生労働省では体重60㎏の成人男性の場合、食事で1.0L、体内生成で0.3Lを摂取を考慮した約1.2Lの水分摂取を推奨しています。
カリウムを積極的に摂取することで、ナトリウムの排出を促すことができます。むくみには利尿作用のある食材として、トウモロコシ、小豆などがよいとされています。血行促進によいとされる赤身肉やレバー、トマト、カボチャなども推奨されています。野菜や果物、カリウムを多く含む食品を積極的に摂取し、水分を十分に摂取することが成功の鍵となります。
参考)体重増加の原因は水分かも! むくみによる水太りの解消方法 -…
段階 | 水分摂取量 | 目的 |
---|---|---|
初日 | 10リットル | 体内塩分の排出促進 |
2日目 | 8リットル | 排出機能の維持 |
3日目 | 6リットル | 水分排出機能の確立 |
4日目以降 | 2リットル前後 | 水分量の調整 |
水抜きダイエット終了後の回復食は、身体への負担を最小限に抑えるために極めて重要です。最も重要なのは、終了後の「回復食」を丁寧におこなうことであり、一気に食事をとると体調不良を起こす可能性があります。回復食の期間に手軽に栄養バランスを整えたいと考えるなら、塩分が市販のカップ麺と比較して約30%カットされている食品を選ぶことが推奨されます。
水抜きダイエットを頻繁におこなうことはおすすめできません。水抜きダイエットを実践すると体重が一時的に一気に減りますが、あくまで水分が一時的に減るのみで、水分量をもとに戻せば本来あるべき体重に戻ります。水抜きダイエットは「最後の手段」「ここぞという場面」で実践する程度に考えておくとよいでしょう。一般人であれば、どんなに期間を短くしても1ヶ月に1回が限度です。
結婚式や大会などの一時的なイベントでむくみを取りたい場合は、体重の2%程の水抜きに留めておくことが推奨されます。体重の2%ほどの水抜きであれば、食事調整・塩分調整・水分調整で楽に落とせます。ウォーターローディング、塩抜き、食物繊維減、カリウム摂取、マグネシウム摂取実施が主な策です。
管理栄養士監修による塩抜きダイエットの正しいやり方については、ベースフードの公式サイトで詳しく解説されています
建築事業者など身体を使う職業の方にとって、水抜きダイエットは特に危険性が高い方法です。格闘家が行う水抜きは試合前日計量までは食事も水も減らして5kg以上を一気に落とし、計量後は食事や水分を戻して普段の体重へと回復させます。脱水状態ではパフォーマンスは著しく落ちるため、肉体労働を伴う建築現場での作業には極めて危険です。
一般の方が危険なのに水抜きをしようとするのは、「すぐに効果が出る」「短期間で体重が落ちる」という言葉に惹かれてしまうためです。通常のダイエット(食事制限や運動)は時間がかかるため、即効性のある方法を求めてしまいますが、汗をかいて体重が減ったとしてもそれは一時的な水分が抜けただけであり、体脂肪が減ったわけではありません。水分を補給すればすぐに体重は元に戻ります。
参考)サウナで水抜きは危険?アスリートと一般人の違いと知っておくべ…
持病や体調不良がある場合は水抜きを行わないでください。脱水症状や体力低下を防ぐため、頭痛やめまいがあれば中止し、水分を摂取してください。塩分やカリウムのバランスを意識することも重要で、塩分やカリウムの摂りすぎ・不足は逆効果です。適量を守りましょう。
参考)減量の最終仕上げ?失敗しない水抜きとは、やり方と注意点を解説…
建築事業者の方には、日常的なむくみ対策として以下の方法が推奨されます。普段からむくまないように食事調整や自分自身の体調を観察していくことが重要です。カラカラの状態での作業は楽しくないし、しんどいだけです。水分の排出を促すサプリメントや漢方薬、低用量ピルや利尿薬で改善できる場合があるので、気になる方は医師や薬剤師に相談してみることをおすすめします。
参考)むくみを取る食べ物には何がある? ~たんぱく質やカリウム、ビ…
対策方法 | 効果 | 実施の容易さ |
---|---|---|
適度な塩分制限 | むくみの予防・改善 | 自炊で実践可能 |
カリウム豊富な食材摂取 | ナトリウム排出促進 | 日常的に取り入れやすい |
適切な水分補給 | 代謝促進と体温調整 | 現場でも実施可能 |
定期的な運動 | 細胞間の水分流動促進 | 作業中に意識的に動く |