
モジュラス(弾性係数)は、材料の変形のしにくさを数値で表す物性値であり、応力とひずみの比例定数です。主に「ヤング率(縦弾性係数)」「横弾性係数(せん断弾性係数)」「体積弾性率」の3種類が存在します。ヤング率は引張・圧縮方向の変形抵抗、横弾性係数はせん断変形の抵抗、体積弾性率は体積変化に対する抵抗を示します。これらはすべて“弾性率”または“弾性係数”と呼ばれますが、ヤング率は弾性率の一種であるため、混同しないよう注意が必要です[6][7][4]。
ヤング率(E)は、応力度(σ)をひずみ(ε)で割った値で求められます。式は $$ E = \frac{\sigma}{\varepsilon} $$ です。単位はSI単位系でパスカル(Pa)、またはN/mm²で表記されます。横弾性係数(G)はせん断応力(τ)とせん断ひずみ(γ)の比例定数であり、$$ G = \frac{\tau}{\gamma} $$ で求めます。体積弾性率(K)は体積応力と体積ひずみの比です。これらの値が大きいほど、材料は変形しにくく、剛性が高いと判断されます[3][6][7][9]。
鉄骨や鉄筋のヤング率は約205,000N/mm²、コンクリートは設計基準強度や単位重量によって異なり、一般的に22,000~24,000N/mm²程度、木材は7,000~12,000N/mm²、アルミニウムは約70,000N/mm²です。これらの値は材料選定や構造設計時のたわみ計算、剛性評価、耐震設計などに不可欠です。特にコンクリートや木材は含水率や材種によって大きく変動するため、設計時は実験値や規準値を参照します[3][4]。
モジュラス(弾性係数)は、引張試験、圧縮試験、曲げ試験、三軸圧縮試験などで測定されます。曲げ弾性率(曲げモジュラス)は、特にプラスチックや合成樹脂でよく使われ、JISやASTMなどの規格に基づき、両端支持・中央荷重方式で測定します。試験条件や試験片の形状、含水率、密度などが結果に大きく影響するため、設計値の採用時は試験条件の確認が重要です[1][8][2]。
モジュラス(弾性係数)が高い=壊れにくいと誤解されることがありますが、実際は剛性(変形のしにくさ)を示すだけで、強度(破壊しにくさ)とは異なります。例えば、ガラスやセラミックスは高い弾性係数を持ちながら脆く、衝撃には弱いことが多いです。設計現場では、剛性と強度の両方を考慮し、用途や荷重条件に応じて最適な材料を選ぶ必要があります。また、複合材料や新素材では、方向によって弾性係数が大きく異なる“異方性”にも注意が必要です[1][4][7]。
ヤング率や各種弾性係数の基礎や計算式、建築材料ごとの目安値、設計現場での実務的な注意点まで、モジュラス 弾性係数の全体像を体系的に解説しました。
参考。
・「弾性率 - Wikipedia」では弾性率の定義や種類、テンソルとしての扱いなどが詳しく解説されています(基礎知識の参考リンク)。