モニター商法事例とリフォーム工事詐欺の手口やクーリングオフ対策

モニター商法事例とリフォーム工事詐欺の手口やクーリングオフ対策

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モニター商法の事例

モニター商法の真実
⚠️
甘い言葉の罠

「足場代無料」「モニター価格」は高額請求の入り口です。

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契約の落とし穴

即決を迫る業者は危険。契約書の内容を必ず確認しましょう。

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法的手段で対抗

クーリングオフは最大20日間。正しい知識が身を守ります。

リフォーム工事におけるモニター商法の典型的な手口

 

建築業界で働く皆様にとって、顧客からの「安く工事ができると言われた」という相談は、悪質なトラブルの予兆かもしれません。モニター商法とは、本来「商品の品質やサービスに対する意見を提供してもらう代わりに、特別価格で提供する」という正規のマーケティング手法ですが、悪徳業者はこの仕組みを悪用し、消費者を欺くための隠れ蓑として利用しています 。特にリフォーム工事においては、「地域限定のモデルケースとして」「宣伝のためのモニター価格で」といった口実で接近し、実際には相場よりもはるかに高い金額で契約を結ばせる事例が後を絶ちません 。
参考)【保存版】知らないと損!悪徳リフォーム業者の手口と絶対に騙さ…

最も代表的な手口の一つが、「足場代無料」を謳うケースです。外壁塗装や屋根の修理において、足場の設置費用は見積もり全体の約2割程度を占めるため、これが無料になるという提案は消費者にとって非常に魅力的に映ります 。しかし、実際には塗料の単価や付帯工事費にその分が上乗せされており、トータルでは通常価格よりも割高になる「二重価格表示」のようなトリックが使われています。
参考)外壁塗装のモニター商法のカラクリとは?実例や対処法について

さらに、「キャンペーン期間は今日まで」といった限定性や、「近隣で工事をしているのでついでに安くできる」といった偶発性を強調し、消費者に考える時間を与えずに即日契約を迫るのも特徴です 。このような業者は、契約を急ぐあまり、詳細な見積書や工程表を提示せず、「一式」という大雑把な表記で済ませようとします。
参考)悪質リフォーム業者の見分け方と手口徹底解説!被害事例や対策ポ…


  • モニター商法でよく使われるセールストーク


    • 「この地域で実績を作りたいので、モニター価格で提供します」

    • 「足場代を無料にする代わりに、工事後のアンケートに答えてください」

    • 「メーカーのキャンペーン期間中なので、今契約すれば半額です」

    • 「近くの現場で余った材料を使うので安くできます」

国民生活センター:クーリング・オフの仕組みと手続き方法
(リンク先では、モニター商法を含む特定商取引法の対象となる契約や、具体的なクーリング・オフの手順が解説されています)

点検商法とセットで行われる悪質な被害事例

モニター商法と並んで、建築業界への信頼を損なう大きな要因となっているのが「点検商法」です。これは、「無料で屋根の点検を行います」「排水管の洗浄キャンペーン中」などと言って住宅に上がり込み、実際には問題のない箇所について「すぐに工事しないと危険だ」と不安を煽って契約を迫る手口です 。モニター商法の入り口として、まずは無料点検で信頼を得ようとするパターンも多く見られます。
参考)リフォーム詐欺の代表的な手口とは?騙されないための具体的な対…

特に悪質な事例として、点検を装って屋根に登った業者が、故意に瓦を割ったり、板金を曲げたりして「破損」を捏造するケースが報告されています 。彼らは破損箇所の写真を家主に見せ、「このままでは雨漏りして家が腐る」と恐怖心を植え付けます。そして、その解決策として「モニター価格での緊急修理」を提案するのです。このような「マッチポンプ」式の手法は、専門知識のない一般消費者には見抜くことが難しく、被害が拡大する原因となっています。
参考)【悪質リフォーム業者にご注意!巧妙な詐欺手口を徹底解説】 -…
youtube​
また、最近では「火災保険を使えば自己負担ゼロで修理できる」と持ちかける手口も急増しています 。確かに自然災害による破損は保険の対象となる場合がありますが、経年劣化による損傷を「台風の被害」と偽って申請することは保険金詐欺にあたります。業者は「申請代行をする」と言って高額な手数料を要求したり、保険金が下りなかった場合でも違約金を請求したりすることがあり、家主が知らぬ間に犯罪の片棒を担がされるリスクもあります。​

手口の段階 具体的な行動パターン 消費者の心理状態
接近 「近くを通ったら屋根が浮いているのが見えた」と突然訪問する。 突然の指摘に驚き、確認したいという気持ちになる。
点検 屋根や床下など、家主が確認しにくい場所を長時間点検する。 見えない場所への不安が増大する。
報告 破損した写真(捏造含む)を見せ、「放置すると倒壊の危険がある」と脅す。 恐怖心から、すぐに解決しなければならないと焦る。
提案 「今ならモニター価格で修理できる」「火災保険で無料になる」と提案。 「安く直せるなら」と安堵し、救われた気持ちになる。
契約 考える時間を与えず、その場で契約書にサインをさせる。 正常な判断力を失ったまま契約してしまう。


公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)
(リンク先では、リフォーム工事に関するトラブル相談窓口や、適正なリフォーム業者の検索方法が提供されています)

クーリングオフ制度の適用期間と契約解除の注意点

万が一、モニター商法や点検商法で不本意な契約をしてしまった場合でも、法律によって消費者は守られています。それが「特定商取引法」に基づくクーリング・オフ制度です。しかし、この制度の適用には厳格な条件と期間が定められており、契約の形態によってルールが異なるため注意が必要です 。
参考)https://oshita-gyousei.com/monita-.html

まず、一般的な訪問販売によるリフォーム工事契約の場合、クーリング・オフ期間は**「法定書面を受け取った日を含めて8日間」です 。これは、業者が突然訪問してきて契約した場合に適用されます。一方、いわゆる「モニター商法」において、「工事完了後にアンケートに答えたり、友人を解約したりすれば報酬(モニター料)が入る」といった「業務提供誘引販売取引」に該当する場合は、期間が「20日間」**に延長されます 。悪質な業者はこの区別をあいまいにし、「リフォーム工事契約」として8日間の期間を過ぎさせようと画策することがあります。
参考)クーリング・オフ|盛岡市公式ホームページ

クーリング・オフを行う際は、必ず「書面」または「電磁的記録(メールやフォーム)」で行う必要があります。電話で「解約したい」と伝えるだけでは証拠が残らず、「聞いていない」としらばっくれられる恐れがあるためです 。内容証明郵便を利用するのが最も確実ですが、簡易書留や特定記録郵便でも記録は残ります。​
クーリング・オフ通知書の記載事項(例):


  1. タイトル:「通知書」(または「契約解除通知書」)

  2. 契約年月日:令和〇年〇月〇日

  3. 商品名:〇〇工事(屋根修理、外壁塗装など)

  4. 契約金額:金〇〇〇円

  5. 販売会社名:株式会社〇〇〇

  6. 担当者名:〇〇 〇〇

  7. 通知文:上記の契約を解除します。支払い済みの代金〇〇円を下記口座に返金してください。また、商品(資材等)の引き取りをお願いします。

  8. 発信日:令和〇年〇月〇日

  9. 契約者(発信者)の住所・氏名

また、クーリング・オフ期間が過ぎてしまった場合でも、業者側に「事実と異なることを告げた(不実告知)」や「都合の悪い事実を告げなかった(事実不告知)」などの違法行為があれば、消費者契約法に基づいて契約を取り消せる可能性があります 。諦めずに消費生活センターや弁護士に相談することが重要です。
参考)https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html

消費者庁:特定商取引法ガイド(訪問販売)
(リンク先では、訪問販売における規制内容やクーリング・オフの詳細なルールが行政の視点で解説されています)

悪徳業者を見抜くためのチェックリストと断り方

現場で働く建築従事者の方なら、業者の振る舞いや見積書を見れば違和感に気づくことができますが、一般消費者にはその判断基準がありません。お客様から相談を受けた際や、自身の身近な人を守るために、悪徳業者を見抜く具体的なポイントを押さえておくことは非常に有益です。
まず、最も基本的な確認事項は「会社の実体」です。悪質な訪問販売業者の多くは、名刺に携帯電話の番号しか記載していなかったり、所在地の住所がバーチャルオフィスやアパートの一室であったりします 。建設業許可を持っているかどうかも重要な判断基準ですが、500万円未満の軽微な工事には許可が不要であるため、無許可で営業している悪徳業者も多数存在します 。
参考)悪徳リフォーム業者の特徴と回避方法

次に、見積書の詳細度です。適正な業者の見積書には、材料の名称(メーカー名、商品名)、使用数量(㎡数、缶数)、単価が明確に記載されています。対して悪徳業者の見積書は、「外壁塗装工事一式」「屋根補修工事一式」といった具合に内訳が不透明で、何にいくらかかっているのかが分かりません 。特に「諸経費」の項目が異常に高額だったり、大幅な値引き項目があったりする場合は警戒が必要です。​


  • 悪徳業者チェックリスト


    • アポイントなしで突然訪問してきたか?

    • 名刺やパンフレットに詳細な会社情報(固定電話、住所)があるか?

    • 「今日中に契約すれば」と即決を迫っているか?

    • 見積書は「一式」ばかりで、具体的な数量や単価が不明ではないか?

    • 「モニター」「モデル」などの言葉で大幅な値引きを提示しているか?

    • 契約書にクーリング・オフに関する記載(赤枠・赤字)があるか?

悪徳業者への断り方としては、「曖昧な返事をしない」ことが鉄則です。「いいですね」「考えさせてください」といった言葉は、相手に「押せば契約できる」という期待を持たせてしまいます。「必要ありません」「契約しません」とはっきり拒絶の意思を示すことが法的な保護(再勧誘の禁止)にもつながります。
効果的な断り文句の例:


  • 「親戚に工務店がいるので、そこにお願いすることになっています」


    • (身内に専門家がいることを匂わせると、嘘がバレるのを恐れて退散しやすくなります)


  • 「今は必要ありません。帰ってください」


    • (「帰ってください」と明確に退去を求めたにもかかわらず居座る行為は、不退去罪という犯罪になります)


  • 「その話は消費生活センターに相談してから決めます」


    • (第三者機関の名前を出すことで、トラブルを避けたい業者は手を引く傾向があります)

建築業界の信頼を揺るがす偽装業者の実態と対策

最後に、私たち建築業界の内側から見た、この問題の深刻さについて触れたいと思います。モニター商法や点検商法を行う業者の多くは、実は建築のプロではありません。彼らの正体は、かつての訪問販売グループや、異業種から参入してきた「営業会社」であることが少なくありません。彼らは建築の知識も技術も持たず、契約を取ることだけに特化しています。そして、実際の工事は安価で下請けに丸投げするか、最悪の場合は素人が見よう見まねで行う手抜き工事となります。
このような「偽装業者」の存在は、真面目に仕事をしている地元の工務店や職人の信頼を著しく傷つけています。「リフォーム業者は怖い」「訪問してくる職人は信用できない」というネガティブなイメージが定着してしまうと、本当に必要なメンテナンス提案さえもお客様に届かなくなってしまいます。これは業界全体にとっての大きな損失です。
私たち正規の建築従事者ができる対策は、まず「プロとしての透明性」を高めることです。見積もりの根拠を丁寧に説明し、施工中の写真を細かく記録して報告する、建設業許可証や資格者証を積極的に提示するなど、当たり前のことを徹底することが信頼回復への第一歩です。また、お客様に対して「悪徳業者の手口」を積極的に情報発信し、注意喚起を行うことも重要です。お客様が知識を持つことで、悪徳業者が入り込む隙を減らすことができます。
さらに、不審な業者を見かけた場合は、業界団体や行政への情報提供を行うことも必要です。地域の同業者同士で情報を共有し、「この地域で詐欺まがいの営業が回っている」という情報をいち早くキャッチして、既存のお客様に「最近、不審な訪問販売が増えているので気をつけてください」と一本連絡を入れるだけでも、大きな防波堤となります。技術だけでなく、情報の面でもお客様を守ることが、これからの建築従事者に求められる役割と言えるでしょう。
国土交通省:建設業者・宅建業者等企業情報検索システム
(リンク先では、正規の許可を受けた建設業者の情報を検索・確認することができます)

 

 


リフォーム現場管理 パーフェクト教本