

ナイキスト線図は、伝達関数G(s)(実務では一巡伝達関数)に対して、s=jωと置いた周波数伝達関数G(jω)を複素平面(実部Re、虚部Im)にプロットして得られる軌跡です。
つまり「横軸がRe(G(jω))、縦軸がIm(G(jω))、点はωに応じて動く」という図で、ωを0→∞(必要に応じて-∞→∞)まで動かしたときの軌跡を追います。
建築設備やプラントの制御(ポンプ、ファン、温調、圧力制御)でも、制御対象を2次遅れ+むだ時間のように近似したり、現場試験で周波数応答を取ったりすることがあり、そのとき「ボード線図だけだと直感が湧きにくい」局面でナイキスト線図が効きます(特に-1点との距離感)。
参考)ナイキストの安定判別法とは?ナイキスト線図の書き方と利点を解…
書き方の最小手順は次の通りです。
ここで手計算のコツは、「まずReとImの式まで落としてしまう」ことです。資料でも、直交座標(Re/Im)で変形して座標を出す流れが示されています。
参考)https://www.ecei.tohoku.ac.jp/hariyama/lecture/control/control-07.pdf
極座標(ゲイン|G|と位相θ)で描く方法もありますが、最初はRe/Imで実軸交点や原点収束を押さえる方が安全です。
ナイキストの安定判別の要点は、ナイキスト軌跡が点(-1,0)のまわりを何回回るか(回転数N)と、開ループの不安定極の数Πから、閉ループの不安定極数Zを求める、という枠組みです。
手順として「(-1,0)のまわりの回り込みを数える」「開ループの不安定極を数える」「Z=N+Πで閉ループの不安定極数を出す」が整理されています。
一方、授業資料の簡略化された説明では、開ループに右半平面極がない等の条件下で、ωが0→+∞の軌跡が(-1,0)を左に見るか右に見るかで安定・不安定を判定する整理も出てきます。
この「左に見る/右に見る」は、現場で図が多少荒くても判断軸になりやすい反面、矢印方向(ω増加方向)を間違えると結論が反転するので要注意です。
安定判別でミスが出やすいポイントを、チェックリストに落とします。
建築の現場目線で言うと、例えば制御盤側の設定変更でゲインが上がった、バルブ特性が変わった、センサフィルタを強めた、などは「軌跡全体の形」より先に「(-1,0)に近づいたか/跨いだか」を見に行く方が早いです。
このとき、(-1,0)付近の読み取りが曖昧なら、次のセクションの“余裕”で安全側に判断できるようにしておくのが実務的です。
ナイキスト線図は「安定か不安定か」だけでなく、「どの程度余裕があるか(安定度)」を読む用途が強い、と資料でも明確に述べられています。
その代表がゲイン余裕(GM)と位相余裕(PM)で、ゲインや位相がどれだけ変動すると(-1,0)に触れるか、という感覚に直結します。
ゲイン余裕は、ナイキスト線図が実軸と交差する点(位相が-180°相当の条件)での大きさを使って定義する説明があり、実軸交点の「原点からの距離(=|G|)」が1より小さいほど安定度が高い、という見方が示されています。
資料ではGMをdBで表す定義式も提示され、交点の|G|から「何dB増やすと限界か」を評価します。
位相余裕は、|G(jω)|=1となる周波数(ゲイン交差周波数ωc)での位相から求める流れが、直交座標表現を用いた手順として示されています。
図としては「単位円と軌跡が交差する角度」を見に行くイメージになり、(-1,0)から離れているほど余裕がある、という直感につながります。
実務でありがちな“余裕の読み違い”を、あえて具体化します。
参考リンク(位相の飛びをExcelで補正する箇所の参考)。
位相のオフセット(unwrap)をIFとSIGNで補正する具体例(Excel)
https://miscellaneous.tokyo/blog/nyquist-diagram/
ナイキスト線図を“それっぽく描けた”のに誤判定する典型は、端点(ω→0、ω→∞)と実軸交点(Im=0)の押さえが曖昧なケースです。
資料の例でも、ω=0、ω=∞、さらに実軸と交わるω(Im=0となるω)を計算し、座標を確定してから概形を描く手順が示されています。
端点の見方を、実務向けに短く整理します。
周波数応答のデータ起点で描ける点も、実務での大きな利点として説明されています(伝達関数が完全に分からなくても描ける)。
建築設備だと、モデルのパラメータが温度帯や流量域で動くことがあるため、「代表点のモデル」だけで断定せず、いくつかの運転点で周波数応答を見比べる、という運用が安全側です。
独自視点として、建築の“施工・調整フェーズ”でナイキスト線図を使う場面を、制御理論の言葉から一段落として解釈します。
たとえば試運転時、ボード線図の設定画面(制御器のパラメータ画面)だけ見ていると「ゲインを少し下げれば良さそう」「フィルタを少し強めれば良さそう」と場当たりになりがちですが、ナイキスト線図で(-1,0)近傍の“危険エリア”を意識できると、調整の判断が一段安定します。
具体的には、次のように“現場の変化”をナイキスト線図の変形として捉えると、トラブルの切り分けが速くなります。
さらに意外に効くのが、「図を描く前に、(-1,0)の近傍を拡大して考える」習慣です。ナイキストの安定判別法は(-1,0)の回り込みを数える枠組みで整理されているため、図の大半が見やすくても(-1,0)付近が粗いと判定の信頼性が落ちます。
設計段階では余裕の目安が示されており、目標値追従のような用途ではGMやPMに一定の目標レンジを置く考え方も紹介されています(用途別に余裕を“数値で持つ”のが現場では特に効きます)。
参考リンク(大学講義資料:s=jω、直交座標での描き方、GM/PMの定義と目安)。
ナイキスト線図の描き方(s=jω)と安定判別、ゲイン余裕・位相余裕の説明
https://www.ecei.tohoku.ac.jp/hariyama/lecture/control/control-07.pdf