
波トタン(波板)の寸法は、日本工業規格(JIS)に基づいて5つの基本規格に分類されています。これらの規格は、建築現場での用途や施工条件に応じて選択する必要があります。
鉄板小波(32波)の寸法規格
鉄板大波(76波)の寸法規格
スレート小波の寸法規格
スレート大波の寸法規格
小波広幅の寸法規格
これらの規格は、施工時の重ね代や山数によって実際の有効幅(働き幅)が決まります。特に重ね代は雨水の浸入を防ぐために重要な要素であり、小波系では2.5山、大波系では1.5山が標準となっています。
建築現場で最も一般的に使用される波トタンの長さは、6尺から10尺までの5種類です。これらの寸法は、母屋間隔や屋根勾配に応じて選択されます。
6尺波トタンの寸法
7尺波トタンの寸法
8尺波トタンの寸法
9尺波トタンの寸法
10尺波トタンの寸法
また、一部のメーカーでは3尺(910mm)、4尺(1,220mm)、5尺(1,520mm)、11尺(3,330mm)、12尺(3,640mm)の寸法も製造していますが、取り扱いメーカーが限られているため、事前確認が必要です。
短い寸法が必要な場合は、標準寸法の波トタンを現場でカットして使用することが一般的です。例えば、3尺が必要であれば6尺を、4尺が必要であれば8尺を半分にカットします。カットには波板切りハサミや電動ノコギリを使用し、寒冷時の作業では割れやすいため特に注意が必要です。
波トタンの幅とピッチは、構造強度と施工性に直接影響する重要な寸法要素です。これらの規格は、風圧や積雪荷重に対する耐性を確保するために厳格に定められています。
標準幅の規格詳細
小波系(32波)の標準幅は655mmで、これは従来からの日本の建築慣習に基づいた寸法です。一方、大波系(76波)は798mmの幅を持ち、より大きなスパンでの使用に適しています。
ガルバリウム鋼板製の波トタンでは、幅が795mmとなり、ポリカーボネート製とは若干異なる寸法となっています。これは製造工程や材質特性の違いによるものです。
ピッチ(波間隔)の技術的意味
ピッチは波の山と山の間の距離で、構造強度に大きく影響します。32mmピッチの小波は細かい波形で曲げ強度が高く、住宅用途に適しています。76mmピッチの大波は、工場や倉庫など大型建築物での使用に向いており、より大きな荷重に対応できます。
130mmピッチのスレート大波は、最も強度が高く、大規模な産業建築物で使用されます。ただし、重量が重くなるため、母屋の設計時から考慮する必要があります。
谷の深さと構造性能
谷の深さは、波トタンの断面係数に直接関係し、たわみ抵抗を決定します。小波の9mm、大波の18mm、スレート大波の36mmという深さは、それぞれの用途に応じた最適な構造性能を提供するよう設計されています。
深い谷を持つ波トタンほど構造強度は高くなりますが、施工時の取り扱いや運搬には注意が必要です。特に風の強い日の作業では、大波系の波トタンは風圧を受けやすくなります。
波トタンの価格は、材質、サイズ、メーカーによって大きく変動します。建築現場での材料選定では、初期費用だけでなく耐用年数や維持費用も考慮する必要があります。
ポリカーボネート製波トタンの価格相場
ポリカーボネート製は透明性があり、採光を確保したい箇所に適しています。耐衝撃性に優れ、飛来物による破損リスクが低いのが特徴です。
ガルバリウム鋼板製波トタンの価格相場
ガルバリウム鋼板製は耐久性が高く、住宅の外壁や屋根材として長期使用に適しています。初期費用は高めですが、メンテナンス頻度が低く、ライフサイクルコストでは優位になることが多いです。
塩ビ波板の特徴と価格
塩ビ波板は最も安価な選択肢で、短期使用や仮設建築物に適しています。ただし、紫外線による劣化が早く、5-7年程度での交換が必要になります。
価格は6尺で800~1,500円程度と経済的ですが、強風地域や積雪地域では構造強度不足になる可能性があります。
カラー鉄板の価格と用途
カラー鉄板は薄鋼板にサビ止め処理と樹脂塗装を施したもので、6尺で1,200~2,800円程度です。工場や倉庫の外装材として広く使用されており、カラーバリエーションが豊富なため、意匠性を重視する建築物にも適用できます。
メーカー別では、住友ベークライト、タキロンシーアイ、三菱ケミカルなどが主要サプライヤーとなっており、それぞれ独自の品質基準と価格設定を持っています。
実際の建築現場では、図面上の理論値だけでなく、施工性や将来のメンテナンス性を考慮した寸法選定が重要です。経験豊富な施工者は、以下の実践的な観点から最適な寸法を決定しています。
母屋間隔と波トタン長さの関係性
母屋間隔が1,800mmの場合、理論上は6尺(1,820mm)の波トタンで十分ですが、実際には軒先の出幅100mm以下を確保する必要があるため、7尺(2,120mm)を選択することが一般的です。
特に台風の多い地域では、軒先の出幅を50mm以下に制限することが推奨されており、この場合はより短い寸法を選択するか、現場でのカット調整が必要になります。
働き幅を考慮した必要枚数の算出方法
実際の施工では、製品幅ではなく働き幅で必要枚数を計算する必要があります。例えば、幅3,000mmの屋根に小波(働き幅575mm)を施工する場合。
3,000mm ÷ 575mm = 5.21枚
この場合、6枚が必要となり、最後の1枚は縦カットして調整するか、重ね代を増やして対応します。縦カットは技術的に難しく、見た目の仕上がりにも影響するため、設計段階での寸法調整が重要です。
温度変化による伸縮を考慮した施工方法
波トタンは温度変化により伸縮するため、固定方法と穴あけ寸法に配慮が必要です。止め具より2-3mm大きめの穴をあけることで、伸縮による応力集中を防ぎます。
特にポリカーボネート製は線膨張係数が大きく、夏場の高温時には予想以上の伸びが発生します。長尺の波トタンを使用する場合は、中間部での固定方法を工夫し、一端を固定、他端をスライド可能にする施工が推奨されます。
風圧に対する取り付け間隔の調整
標準的には5山おきの取り付けが基本ですが、台風常襲地域では3-4山おきに密度を上げる必要があります。特に軒先部分は風圧が集中しやすく、端部から300mm以内は必ず固定点を設けることが重要です。
また、建物の立地条件(海岸部、山間部、市街地)によって風の性質が異なるため、地域の気象データと建築基準法の規定を総合的に判断した取り付け間隔の決定が求められます。
将来のメンテナンス性を考慮した寸法選択
波トタンの部分交換を想定し、標準寸法での施工を優先することで、将来の材料調達コストを抑制できます。特殊寸法や廃番リスクの高い製品の使用は、長期的な維持管理において不利になる可能性があります。
また、点検用の歩行路確保のため、適切な位置での母屋配置と波トタンの割り付けを計画することで、安全なメンテナンス作業が可能になります。