ネオジム磁石一覧と特性
ネオジム磁石の基本情報
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最強の永久磁石
現在実用化されている磁石の中で最も強力な磁力を持ち、フェライト磁石の6~10倍の磁力を発揮します
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主な構成成分
ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、ホウ素(B)を主成分とし、Nd2Fe14Bという化学組成を持っています
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建築施工での利点
小型でも強力な吸着力を持ち、工具の固定や部材の一時的な保持など、建築現場での作業効率化に貢献します
ネオジム磁石は1982年に日本の住友特殊金属(現プロテリアル)の佐川眞人氏によって発明された、現在市場に流通している永久磁石の中で最も強力な磁石です。希土類元素であるネオジム(Nd)と鉄(Fe)、ホウ素(B)を主成分としており、その主相はNd2Fe14Bという化学式で表されます。
その磁力はフェライト磁石の6~10倍にも達し、小型化しても十分な吸着力を発揮するため、建築施工現場での様々な用途に適しています。工具の固定や金属部材の一時的な保持、位置決めなど、日常的な作業の効率化に大きく貢献します。
ネオジム磁石は希土類磁石に分類され、その原料であるネオジムは希土類(レアアース)の中では比較的豊富に存在するため、希土類磁石の中ではコスト面でも優位性があります。かつては産業用途が中心でしたが、現在では一般消費者向け製品にも広く使用されるようになっています。
ネオジム磁石の種類と形状一覧
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ネオジム磁石は大きく分けて「焼結ネオジム磁石」と「ボンドネオジム磁石」の2種類があります。それぞれ製造方法や特性が異なり、用途に応じて選択することが重要です。
【焼結ネオジム磁石】
焼結ネオジム磁石は、粉末冶金法によって製造される最も一般的なタイプです。原料粉末を金型に入れて磁場中で成形・焼結することで作られます。最も高い磁気特性を持ち、建築現場での重量物の保持などに適しています。
【ボンドネオジム磁石】
ボンドネオジム磁石は、ネオジム磁石の粉末を樹脂で固めて成形したもので、「圧縮成形タイプ」と「射出成形タイプ」があります。焼結タイプより磁力は弱いものの、複雑な形状に成形しやすく、耐食性に優れているという特徴があります。
形状については、建築施工現場で使いやすい以下のような種類が一般的です。
- ディスク型(円形):最も一般的な形状で、平らな面に対する吸着に適しています
- ブロック型(直方体):安定した吸着面積を確保でき、建築金具の固定などに適しています
- リング型(ドーナツ型):中心に穴があり、ボルトやネジと組み合わせて使用できます
- 皿穴付き:ネジで固定できる穴が空いており、恒久的な設置に適しています
- フック型:磁石にフックが付いており、工具や小物の吊り下げに便利です
これらの形状は、建築施工現場での様々な用途に対応できるよう、多様なサイズバリエーションが市場に出回っています。
ネオジム磁石の磁気特性と性能比較
ネオジム磁石の性能を正確に理解するためには、その磁気特性を知ることが重要です。主要な磁気特性と他の磁石との比較を見てみましょう。
【主要な磁気特性指標】
- 残留磁束密度(Br):磁石が保持できる磁束の密度を示す値
- 焼結ネオジム磁石:1,210~1,270 mT(12.1~12.7 KG)
- ボンドネオジム磁石:640~710 mT(6.4~7.1 KG)
- 保磁力(Hc):磁石が外部磁場に対して抵抗する能力
- 焼結ネオジム磁石の保磁力bHc:867~979 KA/m(10.9~12.3 KOe)
- ボンドネオジム磁石の保磁力bHc:410~760 KA/m(4.1~7.6 KOe)
- 最大エネルギー積(BHmax):磁石の性能を総合的に表す指標
- 焼結ネオジム磁石:240~400 kJ/m³
- ボンドネオジム磁石:64~80 kJ/m³
【他の磁石との性能比較表】
磁石の種類 |
残留磁束密度 (mT) |
保磁力 (KA/m) |
最大エネルギー積 (kJ/m³) |
最高使用温度 (℃) |
焼結ネオジム磁石 |
1,210~1,270 |
867~979 |
240~400 |
80~200 |
サマリウムコバルト磁石 |
970~1,020 |
557~836 |
160~240 |
250~350 |
フェライト磁石 |
360~450 |
160~280 |
24~36 |
250~300 |
アルニコ磁石 |
700~1,350 |
40~160 |
40~80 |
450~550 |
この表から分かるように、ネオジム磁石は残留磁束密度と最大エネルギー積において他の磁石を大きく上回っています。これが「最強の永久磁石」と呼ばれる所以です。ただし、最高使用温度はサマリウムコバルト磁石やフェライト磁石より低いという弱点があります。
建築施工現場では、この強力な磁力を活かして、一時的な金属部材の固定や位置決め、工具の保持などに利用できます。ただし、その強力な磁力ゆえに取り扱いには注意が必要です。
ネオジム磁石メーカー一覧と選定ポイント
建築施工用途に適したネオジム磁石を選ぶ際は、信頼できるメーカーから購入することが重要です。2025年3月時点での主要なネオジム磁石メーカーと市場シェアは以下の通りです。
- ヴァックマグネティックジャパン株式会社(市場シェア:14.8%)
- 株式会社下西製作所(市場シェア:13.4%)
- 株式会社マグファイン(市場シェア:10.3%)
- ネオマグ株式会社
- キャナック電子工業株式会社
- 株式会社マグナ
これらのメーカーはいずれも高品質なネオジム磁石を提供していますが、建築施工用途に適した製品を選ぶ際には、以下のポイントに注目することをおすすめします。
【選定ポイント】
- 磁力の強さ:用途に応じた適切な磁力を持つ製品を選びましょう。必要以上に強力な磁石は扱いにくく、弱すぎると役に立ちません。
- 耐食性:建築現場では湿気や雨にさらされることもあるため、メッキ処理や表面コーティングが施された製品が適しています。一般的には、ニッケルメッキ、亜鉛メッキ、エポキシコーティングなどの処理が施されています。
- 耐熱性:屋外での使用や熱を発する機器の近くで使用する場合は、耐熱グレードの高い製品を選びましょう。ネオジム磁石の標準グレードは80℃程度までの使用が目安ですが、特殊な組成で200℃まで対応できる高耐熱グレードもあります。
- 形状とサイズ:用途に合わせた形状とサイズを選びましょう。建築施工では、ディスク型やブロック型が使いやすいケースが多いです。
- 安全性:強力な磁石は取り扱いに注意が必要です。特に大型の磁石は急に引き寄せられて指を挟むなどの事故の原因になることがあります。安全な取り扱いが可能な製品を選びましょう。
メーカー選びでは、技術サポートの充実度や納期の早さ、カスタマイズ対応の可否なども重要な判断基準になります。メトリーの企業ランキングによると、ネオマグ株式会社は返信の比較的早い企業として評価されており、技術的な質問にも対応してくれる点が魅力です。
ネオマグ株式会社の製品情報と技術サポート
ネオジム磁石の建築施工現場での活用事例
ネオジム磁石の強力な磁力と小型化の特性を活かした、建築施工現場での具体的な活用事例をご紹介します。これらの事例は、作業効率の向上や安全性の確保に貢献しています。
【工具の固定と管理】
- マグネットツールホルダー:金属製の壁面や足場に取り付けて、ドリルやハンマーなどの工具を一時的に保持します。手の届きやすい位置に工具を配置できるため、作業効率が向上します。
- マグネットトレイ:小さなネジやボルト、ワッシャーなどの金属部品を保管するトレイです。部品の紛失を防ぎ、高所作業での落下事故防止にも役立ちます。
【位置決めと仮固定】
3. 溶接補助具:金属部材を溶接する際の位置決めや仮固定に使用します。強力なネオジム磁石を使用することで、クランプが使えない場所でも部材をしっかりと固定できます。
- マグネットアングル:金属板や鋼材を直角に保持するための補助具です。溶接作業や組立作業の際に、両手を自由に使えるようになります。
【測定と水平出し】
5. マグネット付きレベル:金属面に簡単に取り付けられるレベル計です。手を使わずに設置できるため、一人での作業効率が向上します。
- マグネットベース付きダイヤルゲージ:金属表面の平坦度や位置のズレを測定する際に使用します。強力な磁力で安定した測定が可能になります。
【安全対策】
7. マグネット式安全標識:金属製の壁面や機器に簡単に取り付けられる警告標識です。工事現場の状況に応じて、素早く設置・移動できます。
- 落下防止用マグネットコード:高所作業での工具落下を防止するためのコードです。工具にコードを取り付け、もう一方のマグネットを作業者の服や安全帯に固定します。
【特殊用途】
9. 鉄筋探査:コンクリート内部の鉄筋位置を探査する際の補助具として使用します。ネオジム磁石をコンクリート表面に沿って移動させると、鉄筋の位置で引力の変化を感じることができます。
- 仮設電気設備の固定:仮設照明や配電盤などを金属製の構造物に一時的に固定する際に使用します。配線工事の効率化に貢献します。
これらの活用事例は、ネオジム磁石の特性を理解し、適切なタイプと強度の製品を選ぶことで、より効果的に実施できます。特に建築施工現場では、作業の一時的な補助具として使用することで、作業効率の向上と安全性の確保を両立させることができます。
株式会社マグファインの建設業界向け磁石活用事例
ネオジム磁石の取扱注意点と長寿命化のコツ
ネオジム磁石は非常に強力な磁力を持つため、適切な取り扱いが必要です。また、その特性を理解して正しく使用することで、長期間にわたって性能を維持することができます。建築施工現場でネオジム磁石を安全かつ効果的に使用するための注意点と長寿命化のコツをご紹介します。
【取扱上の注意点】
- 安全面の注意点
- 強力な磁力による挟み込み事故に注意:大型のネオジム磁石同士や磁石と鉄製品が急に引き合うと、指などを挟んで怪我をする危険があります。
- ペースメーカーへの影響:ペースメーカーを使用している方は、強力な磁場の影響を受ける可能性があるため、ネオジム磁石の取り扱いを避けるべきです。
- 電子機器への影響:磁気記録媒体(ハードディスク、磁気カードなど)や精密電子機器は、強力な磁場によって損傷する可能性があります。
- 物理的な取り扱い
- 衝撃に弱い:ネオジム磁石は硬いが脆い性質を持ちます。落下や強い衝撃で割れたり欠けたりすることがあります。
- 錆びやすい:未処理のネオジム磁石は非常に錆びやすいため、湿気の多い環境では使用を避けるか、適切なコーティング処理が施された製品を選びましょう。
- 熱に弱い:標準グレードのネオジム磁石は80℃程度で磁力が低下し始めます。高温環境での使用には注意が必要です。
【長寿命化のコツ】
- 適切な保管方法
- 乾燥した環境で保管:湿気は錆の原因となるため、乾燥した環境で保管しましょう。
- 適切な温度管理:高温は磁力の低下を招くため、冷暗所での保管が理想的です。
- 磁気シールドの活用:使用していない時は、専用のケースや鉄板で挟むなどして磁場を閉じ込めることで、周囲への影響を抑えられます。
- 日常的なメンテナンス
- 定期的な清掃:表面に付着した金属粉や汚れは、柔らかい布で優しく拭き取りましょう。
- 防錆処理:コーティングされていない磁石は、防錆スプレーなどで表面を保護することで寿命を延ばせます。
- 使用後の点検:割れや欠けがないか定期的に点検し、損傷がある場合は使用を中止しましょう。
- 適切な使用方法
- 適材適所の選択:用途に合った強さと形状の磁石を選びましょう。必要以上に強力な磁石は扱いにくく、磁石自体の寿命も短くなる可能性があります。
- 温度環境への配慮:高温になる場所での使用は避け、必要な場合は高耐熱グレードの製品を選びましょう。
- 反磁界への注意:複数の磁石を近づけると互いに減磁し合う「反磁界」が生じることがあります。使用していない磁石は適切に離して保管しましょう。
これらの注意点とコツを守ることで、ネオジム磁石の性能を長期間維持し、安全に活用することができます。特に建築施工現場では、様々な環境条件下で使用することが多いため、製品の特性を十分に理解した上で適切に取り扱うことが重要です。
プロテリアルによるネオジム磁石の取扱説明と注意点
ネオジム磁石は適切に使用すれば、建築施工現場での作業効率を大幅に向上させる強力なツールとなります。その特性と取り扱い方法を正しく理解し、安全かつ効果的に活用しましょう。
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