
横断測量は、縦断測量の測点を基点として、地形や構造物の横断面形状を測定する重要な測量技術です。建設工事や河川管理において欠かせない作業であり、正確な測量結果は工事の品質や安全性に直結します。
横断測量の基本的な目的は、地形の断面形状を把握することにあります。これにより、土量計算や構造物設計の基礎データとして活用できるのです。特に河川では、水際杭(低水路杭)を境にして陸部と水部に分け、陸部は横断測量、水部は深浅測量により行うのが一般的です。
測量の精度は工事の成否を左右するため、適切な機材選択と正確な測定技術が求められます。初心者の方でも理解しやすいよう、基本から応用まで段階的に解説していきましょう。
横断測量の基本的な測定方法は、公共測量作業規程に準じて行われます。一般的な手順としては以下のようになります。
特に河川の横断測量では、水際杭(低水路杭)を境にして陸部と水部に分けて測量を行います。陸部は通常の横断測量、水部は深浅測量によって行われるのが一般的です。
「横断測量は、設定された測量断面上の断面形状について距離標からの距離及び標高を測定する」というのが基本的な定義です。この測定結果は、河川管理や工事計画の重要なデータとなります。
横断測量で使用する主な機器には、以下のようなものがあります。目的や精度要求に応じて適切な機器を選択することが重要です。
1. レベル(水準儀)
最も基本的な測量機器で、水平面を基準に高さを測定します。比較的安価で操作も簡単ですが、距離の測定には別途測量テープなどが必要です。
2. トータルステーション(光波測距儀)
角度と距離を同時に測定できる高精度な測量機器です。GPSと連動したモデルもあり、効率的な測量が可能ですが、価格が高く操作にも専門知識が必要です。
3. ポケットコンパス
簡易的な測量に使用される携帯型の機器です。精度は劣りますが、簡易山腹横断測量などの比較的精度要求の低い場面で活用されます。
4. GNSS(全地球測位システム)受信機
衛星からの信号を受信して位置を特定する機器です。開けた場所での測量に適していますが、樹木や建物が多い場所では精度が落ちる場合があります。
5. レーザースキャナー
点群データを取得できる最新の測量機器です。短時間で広範囲の3次元データを取得できますが、機器が高価で専門的な知識が必要です。
機器の選定ポイントとしては、以下の点を考慮するとよいでしょう。
特に近年は、点群測量技術の発展により、「点群データを生成した上で、それらを補間することで断面形状を測定する」という新しい手法も普及しつつあります。
横断構造物の測量は、通常の横断測量とは異なる特徴と注意点があります。河川横断構造物が位置する部分の横断測量は、以下のように実施されます。
橋梁の場合
堰及び床固めの場合
河川構造物の周辺は河床変化が大きいため、必要に応じて縦断方向あるいは横断方向に測線を設定し、周辺測量を行うことも重要です。
構造物測量における注意点としては、以下が挙げられます。
構造物周辺の測量データは、水理計算や構造物の安全性評価に直接影響するため、特に高い精度が求められます。
横断測量で得られたデータは、様々な場面で活用されます。特に重要なのは、測量成果に基づく横断面図の作成です。
横断面図作成のポイント
横断測量データの主な活用方法としては、以下のようなものがあります。
特に河川の横断測量では、「高水敷に大きな変動がないと判断できる場合は、低水路のみの測量を行ってよい」という規定がありますが、その場合でも「前回の高水敷の測量成果との接続を確実にするため、水際杭(低水路杭)が適正な状況で保存されていることを確認する」ことが重要です。
横断測量の精度を確保するためには、適切な点検測量の実施が不可欠です。点検測量は、全横断面の一定割合(例えば5%)の横断面について再度測量を行い、精度を確認する作業です。
点検測量の基本手順
精度向上のための具体的なテクニックとしては、以下のようなものがあります。
特に近年は、「点群測量により、点群データを生成した上で、それらを補間することで断面形状を測定する」という新しい手法が注目されています。この方法では、短時間で高密度のデータを取得できるため、従来の測量方法と比較して詳細かつ正確な地形表現が可能になります。
河川定期縦横断測量業務実施要領・同解説(国土交通省)- 横断測量の詳細な基準と方法について記載されています
横断測量の精度は、最終的な工事や計画の品質に直結するため、常に高い精度を維持するための取り組みが重要です。特に河川測量では、水位変動や流速などの影響を考慮した測量計画の立案が求められます。
近年、測量技術は急速に進化しており、従来の手法に加えて様々なデジタル技術が活用されるようになっています。これらの技術は作業効率の向上だけでなく、測量精度の向上にも貢献しています。
UAV(ドローン)を活用した測量
ドローンによる空中写真測量は、広範囲の地形データを短時間で取得できる利点があります。特に以下のような特徴があります。
レーザースキャナーによる点群測量
地上型レーザースキャナー(TLS)や移動体レーザースキャナー(MLS)を用いた点群測量は、高密度かつ高精度な3次元データを取得できます。
モバイルマッピングシステム(MMS)
車両などの移動体に搭載したレーザースキャナーやカメラにより、移動しながら周囲の3次元データを取得するシステムです。
クラウドベースのデータ処理・管理
測量データの処理・管理においても、クラウド技術の活用が進んでいます。
これらの最新技術を活用することで、従来の横断測量と比較して、作業時間の短縮、安全性の向上、データ精度の向上などのメリットが得られます。ただし、導入コストや専門知識の必要性、データ処理の複雑さなどの課題もあるため、測量の目的や条件に応じて適切な技術を選択することが重要です。
国土交通省の「河川定期縦横断測量業務実施要領」においても、「点群測量により、点群データを生成した上で、それらを補間することで断面形状を測定することができる」と記載されており、従来の手法に加えて新技術の活用が認められています。
公共測量におけるUAVの活用マニュアル(国土地理院)- ドローンを活用した測量の具体的方法について解説されています
デジタル技術の進化は今後も続くと予想され、横断測量の方法もさらに効率化・高精度化していくでしょう。しかし、どんなに技術が進化しても、測量の基本原理を理解し、適切な方法で実施することの重要性は変わりません。
以上、横断測量のやり方について基本から最新技術まで解説しました。適切な方法で正確な測量を行い、建設工事や河川管理の品質向上に役立てていただければ幸いです。