

最小二乗法は、観測値とモデル(ここでは直線)のズレ(残差)を二乗して合計した値が最小になるように、係数を決める方法です。
「3点しかないのに最小二乗?」と感じるかもしれませんが、3点が一直線上に並ぶとは限らないため、直線 \(y=ax+b\) に“最も近い”直線を定義する手段として有効です。
3点 (x1,y1),(x2,y2),(x3,y3) のとき、回帰直線の傾き a と切片 b は、一般の最小二乗の式(データ数 n )に n=3 を入れた形で計算できます。
参考)3点から最小二乗法 #数学 - Qiita
参考:最小二乗法が「残差平方和を最小にする」という定義と、直線回帰の導出の流れがまとまっています。
統計WEB:最小二乗法(偏微分で係数を求める考え方)
参考)27-2. 最小二乗法
計算サイトは入力した3点から傾き・切片を即座に出す一方で、「どの誤差を最小化しているか(縦方向の残差か)」の前提を利用者が見落とすと、現場判断を誤ります。
一般的な直線回帰(最小二乗法)は、点から直線への“距離”ではなく、縦方向(\(y\) 方向)の残差を二乗して最小化する定義で説明されることが多いです。
検算の最短手順は、サイト結果の a,b を使って、各点の予測値 y^i=axi+b を作り、残差 ei=yi−y^i の符号と大きさを見ることです。
また、計算サイトの数値は小数点以下が長く出がちですが、測定の有効数字(最小目盛)と整合しない桁まで信じると、報告書の説得力が落ちます。
「計算は精密・入力は粗い」というギャップを埋めるために、現場の測定精度に合わせて丸め、残差のオーダー感とセットで説明するのが安全です。
計算サイトの代替として、ExcelのLINEST関数を使うと、社内で再現可能な計算手順として残しやすいです。
LINESTは回帰直線の係数(傾き・切片)を返し、INDEX関数で要素を取り出す例も紹介されています。
Excel運用の現場的な利点は、「入力表(3点)→係数→予測値→残差→残差平方和」まで同一ブックで監査可能にできる点です。
参考)https://edu.isc.chubu.ac.jp/hsuzuki/iip/2010-katsuyou/w5/lms5.html
参考:Excelで最小二乗法(LINEST)を扱う具体例がまとまっています。
Excelをつかった最小二乗法(LINESTで傾き・切片)
建築の測定は、理想的な実験室データと違い、外乱(温度、荷重状態、作業手順、器械誤差)が入りやすいため、3点近似は「結論を出す道具」ではなく「仮説を立てる道具」として扱うのが無難です。
最小二乗法の基本説明でも、データに関数を近似(フィット)させ、予測や誤差の扱いに使うという位置づけが述べられています。
例えば、沈下観測で「日数 x と沈下量 y」を3点だけ持っている場合、直線での外挿は便利ですが、地盤・支持条件によっては曲線的に進むことがあるので、直線の傾き(進行率)を絶対視しないほうが安全です。
同様に、部材温度と伸びの関係を3点で近似するなら、直線性(比例関係)が成立する範囲か、測点がその範囲に入っているかを先に確認します。
実務の小技として、3点のうち中央の1点が怪しいときは、(1) 3点回帰、(2) 端点2点の直線、(3) 中央点を除外した2点直線、の3通りを並べて傾きの感度を見ると、異常値の影響が把握しやすいです。
このとき「どれが正しいか」を急がず、傾きがどれくらい変わるか(解の不安定さ)を示すだけでも、現場コミュニケーションの質が上がります。
例えば、レーザー距離・墨出し・取り合い寸法の整理では、縦方向だけのズレとして扱うより、幾何的な距離ズレとして評価したほうが納得感が出るケースがあります。
ただし、計算サイトの多くは通常の最小二乗(縦残差)前提であることが多いので、「そのサイトが何を最小化しているか」を確認してから使うのが安全です。
独自視点としては、報告書に“回帰の定義(縦残差)”を1行でも明記しておくと、後日の指摘(なぜその線か)に耐えやすくなります。
参考:通常の回帰(縦残差)と異なる「距離」を最小化する考え方の導出が読めます。