森林法伐採届不要なケースと提出義務の対象や罰則

森林法伐採届不要なケースと提出義務の対象や罰則

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森林法伐採届不要

森林法伐採届の要点まとめ
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地域森林計画対象外なら不要

役所で森林計画図を確認し、対象外のエリアであれば届出は原則不要です。

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無届伐採は最大100万円の罰金

知らなかったでは済まされません。伐採中止命令や造林命令が出されることも。

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事後の状況報告が義務化

2022年の法改正により、伐採後および造林後の報告が必須になりました。

森林法伐採届不要なケースと地域森林計画の対象

建設業の皆様が現場で最も気にするべきは、「この木を切るのに許可がいるのか?」という点でしょう。結論から言えば、「地域森林計画」の対象となっている森林でなければ、森林法に基づく伐採届は不要です。しかし、見た目が完全な山林であっても対象外の場合もあれば、逆にどう見てもただの裏山なのに届出が必要な場合もあります。この判断基準は、現地の見た目ではなく、都道府県が定めた「地域森林計画」に含まれているかどうかで決まります。
参考)伐採届は1本でも必要か?森林法の適用範囲と届け出の方法

具体的に不要となる主なケースは以下の通りです。


  • 地域森林計画の対象外の森林:登記上の地目が「山林」であっても、計画図に入っていなければ不要です。

  • 開発許可を受けた場合:1ヘクタール(太陽光発電設備は0.5ヘクタール)を超える開発で、すでに林地開発許可を受けている場合は、重ねて伐採届を出す必要はありません(許可が優先されるため)。
    参考)地域森林計画対象民有林(5条森林)とは?伐採に許可が必要?


  • 枯死木の伐採:すでに枯れている木を安全のために処理する場合、届出は原則不要とされることが多いですが、自治体により解釈が異なるため確認が必要です。

確認方法は、該当する市町村の林務担当課へ行き、「森林計画図(森林簿)」を閲覧することです。最近では多くの自治体が「○○県 森林地図情報」といった名称でWeb公開しています。現場に着手する前、見積もりの段階で必ずこの地図を確認してください。「施主様が自分の土地だから大丈夫と言っていた」という言葉を鵜呑みにし、後から無届伐採が発覚して工事がストップするトラブルが後を絶ちません。
参考リンク:林野庁 - 伐採および伐採後の造林の届出等の制度(制度の全体像と対象森林の解説)

森林法伐採届提出の義務と申請の期間

伐採届(正式名称:伐採及び伐採後の造林の届出書)が必要な場合、提出のタイミングは非常にシビアです。法律により、伐採を開始する日の90日前から30日前までの期間に、市町村長へ提出する義務があります。
参考)栃木県/伐採及び伐採後の造林の届出制度について

「来週から着工したい」と急に言われても、この「30日前ルール」があるため、すぐには切れません。これが工期遅延の大きな原因になります。提出者は、森林所有者や立木を買い受けた業者です。建設業者が請け負う場合は、施主(所有者)と連名で出すか、委任状を受けて代理で行う形が一般的です。
2023年4月からは、届出に必要な添付書類が統一され、義務化されました。
参考)「森林法」の概要を解説!規定内容や届出制度、改正点について


  • 森林の位置図・区域図:公図や航空写真などで場所を特定したもの。

  • 届出の対象となる森林の所在場所がわかる書類:登記事項証明書など。

  • 隣接地の所有者との境界確認書類:境界トラブル防止のため、重要性が増しています。

特に注意が必要なのは、**「伐採後の状況報告」**です。2022年の法改正以降、伐採が終わった後の「完了報告(状況報告書)」の提出が厳格に義務付けられました。以前は出し忘れてもなあなあで済んでいた地域もありましたが、現在は督促が来ます。工事が終わって撤収した後も、この書類仕事が残っていることを忘れないでください。
参考)伐採及び伐採後の造林の届出制度について - メロンのまち 北…

参考リンク:林野庁 - 伐採造林届出書作成の手引き(具体的な記入例と必要書類のチェックリスト)

森林法伐採届の罰則と無届伐採のリスク

「たかが木の伐採で、バレなければ大丈夫だろう」という考えは、今の時代、通用しません。近隣住民からの通報や、ドローン・衛星写真による監視技術の向上により、無届伐採は容易に発覚します。違反した場合のペナルティは、建設業者にとって致命傷になりかねません。
森林法第208条に基づき、無届で伐採を行った場合、100万円以下の罰金が科されます。さらに怖いのは罰金だけではありません。行政から**「伐採の中止命令」「造林命令(元に戻しなさいという命令)」**が出される可能性があります。
参考)伐採及び伐採後の造林の届出等の制度 - 水産林務部林務局森林…


  • 工事の強制ストップ:中止命令が出れば、工期は守れません。損害賠償問題に発展します。

  • 企業の信頼失墜:法令遵守(コンプライアンス)違反として、指名停止処分を受けたり、元請けからの取引停止につながります。

  • 報告義務違反の罰金:伐採後の状況報告書を出さなかっただけでも、30万円以下の罰金対象です。​

現場代理人として最も避けるべきは、「知らなかった」による法違反です。特に、下請け業者に伐採を任せる場合でも、元請けとしての管理責任が問われることがあります。必ずマニフェスト(産業廃棄物管理票)と同じレベルで、伐採届の受理通知書の写しを確認するようにしてください。
参考リンク:夕張市 - 伐採及び伐採後の造林の届出制度について(罰則の具体的な金額と条文の解説)

森林法伐採届不要と勘違いしやすい庭木と現況

実務で最も判断に迷うのが、「庭木」と「山林」の境界線です。一般的に、自宅の庭に生えている木(庭木)を切るのに森林法の届出は不要です。しかし、「現況(今の見た目)」と「法律上の扱い」は必ずしも一致しません
よくある勘違いのパターンを紹介します。


  1. 「家の裏山だから庭の一部だ」という誤解
    所有者が「ここは庭だ」と主張しても、地域森林計画の対象図面に入っていれば、それは法律上「森林」です。たとえ住宅のすぐ裏にあっても、面積に関わらず届出が必要になります。

  2. 「雑種地だから大丈夫」という誤解
    登記簿の地目が「雑種地」や「原野」であっても、地域森林計画には網羅されていることがあります。森林法は地目(登記)ではなく、実態と計画区域を重視します。

  3. 「数本だけだから不要」という誤解
    本数は関係ありません。対象区域内であれば、たった1本でも、低木でも、チェーンソーを入れるなら届出が必要です。ただし、除伐(育成の邪魔になる木を切る)や、枯損木の処理として認められる範囲であれば不要な場合もありますが、自己判断は危険です。​

特に、別荘地や古民家のリノベーション案件では、敷地が広大で、どこまでが「宅地」でどこからが「地域森林計画対象の森林」なのか境界が曖昧なケースが多発します。この境界線を見誤ると、庭の手入れのつもりが森林法違反になってしまいます。必ず役所の農林課で「林班図(りんばんず)」と公図を重ね合わせて確認する作業を行ってください。

森林法伐採届不要ではなく許可が必要な保安林

最後に、プロでも見落としがちな「独自視点」の落とし穴について解説します。それは、「届出」レベルでは済まない「許可」が必要なエリアの存在です。それが「保安林(ほあんりん)」です。
地域森林計画対象の森林の中には、土砂崩れ防止や水源確保のために特に重要とされる「保安林」に指定されている場所があります。この場合、通常の「伐採届(事前の届出)」だけでは不十分で、都道府県知事への**「許可申請」**が必要になります。
参考)栃木県/森林法の手続きを要しない伐採、作業


  • 届出と許可の違い


    • 一般の森林:市町村への「届出」。形式が整っていれば基本通る。

    • 保安林:都道府県への「許可申請」。審査が厳しく、許可が下りるまで時間がかかる。伐採方法や面積に厳しい制限(指定施業要件)がある。

「森林法の届出は出しました(通常の伐採届)」と安心していたら、そこが実は保安林で、無許可伐採として摘発されるケースがあります。保安林での無許可伐採は、通常の森林よりも罪が重く、復旧命令も厳格です。
特に、山間部の道路拡幅工事や、法面に近い場所での伐採では、その土地が「土砂流出防備保安林」などに指定されている可能性が高いです。調査の際は、単に「森林計画対象か?」だけでなく、「保安林の指定はないか?」までセットで確認することが、現場を守るための鉄則です。
参考リンク:栃木県 - 森林法の手続きを要しない伐採、作業(保安林における特例と許可申請の区分け)