
建築業界において、タイルは美観と機能性を兼ね備えた重要な建材です。特に外装タイルにおいて、角や出隅部分をきれいに仕上げるために「役物タイル」が使用されます。中でも「まぐさ」と「曲がり」は頻繁に使われる役物タイルですが、その違いや特徴について詳しく知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。
この記事では、タイルの役物としての「まぐさ」と「曲がり」の違いを中心に、その形状や用途、施工方法までを詳しく解説します。建築業に携わる方はもちろん、DIYでタイル工事を検討している方にも役立つ情報をお届けします。
タイル業界では、タイルを大きく「平物(ひらもの)」と「役物(やくもの)」に分類しています。平物とは一般的な平らな形状のタイルで、壁や床の平面部分に使用されます。一方、役物とは特殊な形状をしたタイルで、建物の角や出隅部分、窓枠周りなどの特殊な箇所に使用されるものです。
役物タイルは、タイルの側面が見えてしまう部分や、角の処理をきれいに仕上げるために開発されました。元々は外装で建物の角に使う「まがり」や「まぐさ」を指す言葉でしたが、現在では内装も含めた特殊形状のタイル全般を指します。
役物タイルを使用することで、タイルの切断面が見えないようにし、美しい仕上がりを実現できます。また、単に見た目だけでなく、強度という点からも優れており、角の保護や耐久性向上にも貢献します。
平物タイルは通常m²単位で価格表示されますが、役物タイルはm(メートル)単位で表示されることが多いのも特徴です。これは、役物タイルが主に建物の縁や角に沿って使用されるためです。
「まぐさ」は、タイル役物の一種で、屏風曲がり(びょうぶまがり)とも呼ばれています。その形状は、L型に長辺を2枚分接着したような形をしています。具体的には、平物タイルを長辺方向でL字に接合したもので、建物の出隅部分(外側に飛び出した角)に使用されます。
まぐさの特徴は、その長い辺を活かして広い面積をカバーできることです。特に大きなタイルを使用する場合や、角の部分の見栄えを重視する場合に選ばれます。また、強度も高いため、人や物がぶつかりやすい出隅部分の保護にも適しています。
まぐさは主に以下のような場所で使用されます:
まぐさを使用する際の注意点として、平物タイルとの色や質感の統一が重要です。製造ロットが異なると、わずかな色の違いが生じることがあるため、同じロットでの発注が推奨されます。
また、まぐさは通常、平物タイルよりも価格が高くなります。これは製造工程が複雑であることや、需要が平物に比べて少ないことが理由です。しかし、美しい仕上がりと耐久性を考えると、適材適所で使用する価値は十分にあります。
「曲がり」は、タイル役物の中でも最も基本的な形状の一つで、標準曲がりとも呼ばれています。その形状は、L型に短辺で接着したような形をしており、平物タイルを短辺方向でL字に接合したものです。まぐさと比較すると、よりコンパクトなL字形状となっています。
曲がりの主な特徴は以下の通りです:
曲がりの使用場所としては、以下のような箇所が一般的です:
曲がりを施工する際のポイントとして、目地の幅や位置を平物タイルと揃えることが重要です。また、曲がりの長さが足りない場合は、現場で切断して調整することもありますが、切断面が見える場所での使用は避けるべきです。
曲がりとまぐさの選択は、タイルのサイズや角の形状、デザイン性などを考慮して決定します。一般的に、小さなタイルや細かいデザインの場合は曲がりが、大きなタイルや目立つ角部分にはまぐさが選ばれる傾向にあります。
「ボックス」は、タイル役物の中でもより特殊な形状を持つもので、平物を3枚接着して作られています。主に建物の出隅角部(3方向に面がある角)に使用され、3つの面をきれいに仕上げることができます。
ボックス以外にも、様々な役物タイルが存在します。それぞれの種類と用途を見ていきましょう:
これらの役物タイルは、建築物の美観を高めるだけでなく、機能性や安全性、耐久性の向上にも大きく貢献します。しかし、近年ではユニットバスの普及などにより、一部の役物タイルの需要は減少しています。それでも、高級感のある仕上がりや特殊な場所での使用には、依然として役物タイルが重要な役割を果たしています。
特に注目すべきは、サブウェイタイルと呼ばれる都会的で洗練された印象のタイルには、10種類以上の役物が用意されていることもあります。これにより、バスルームやキッチンなどの水回りを美しく仕上げることが可能です。
タイル施工において、適切な役物選びと目地割りの計画は、美しい仕上がりを実現するための重要なポイントです。ここでは、役物選びのコツと目地割りの基本について解説します。
役物選びのポイント
目地割りの基本と種類
タイルの貼り方(目地割り)には様々なパターンがあり、それぞれ異なる印象を与えます。主な目地割りパターンには以下のようなものがあります:
目地割りを計画する際には、「主視線」を考慮することが重要です。よく目線が行く方向が正面なのか、コーナー部分なのかによって割付方法が変わります。正面が重要な場合は「心割り」(中心から左右対称に割る)、片方の端が目立つ場合は「片割り」を採用するのが一般的です。
また、垂直方向の割付では、天井まで張り上げる場合は切り物を床に収めて見えないようにし、腰張りの場合は上端に片面取りのタイルなどの役物を使用するなどの工夫が必要です。
タイル施工では、切り物(タイルを切断したもの)の処理も重要なポイントです。現場での切断作業は時間と労力を要するため、あらかじめ「半マスタイル作成」や「プレカットサービス」を利用することも検討すべきでしょう。また、目地幅を微調整して切り物が出ないようにする方法もあります。
タイルの役物、特にまぐさと曲がりを選ぶ際には、価格とコストパフォーマンスも重要な検討要素です。ここでは、これらの役物の価格傾向と、コストパフォーマンスを最大化するためのポイントを解説します。
価格傾向の比較
一般的に、役物タイルは平物タイルよりも高価です。これは製造工程の複雑さや、需要量の違いによるものです。まぐさと曲がりを比較すると、以下のような傾向があります:
両者とも、m(メートル)単位での価格表示が一般的で、1メートルあたり何個必要かを計算して必要数を算出します。例えば、タイルサイズが100mm×100mmの曲がりであれば、1メートルあたり約10個必要となります。
コストパフォーマンスを高めるポイント