
締固め用機械は建設工事において地盤を安定させるために使用される重要な建設機械です。これらの機械は締固めの原理によって大きく3つの種類に分類されており、静的荷重、動的荷重、衝撃的荷重という3つの方式があります。現場の条件や土質、施工規模に応じて最適な機械を選定することが、効率的な施工と品質確保につながります。
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締固め機械を機械の形態で分類すると、ローラー式と平板式の2つに大別できます。ローラー式にはロードローラー、マカダムローラー、タンデムローラー、タイヤローラー、タンピングローラー、振動ローラー、コンバインドローラー、ハンドガイドローラーなどが含まれます。一方、平板式にはプレートコンパクター、ランマー、タンパなどがあり、狭い場所や小規模な締固め作業に適しています。
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締固め機械の選定では土質条件が重要な判断材料となります。砂質土や砂利には振動ローラーが効果的で、粘性土には静的荷重を利用するローラーが適しています。また、施工する場所の広さや深さ、求められる締固め度によっても適切な機械が異なるため、現場の状況を十分に考慮した機械選定が必要です。
参考)https://www.cbr.mlit.go.jp/kensetsu-ict/ibent/24-02-27/3-3-2.pdf
ローラー式締固め機械の代表格であるロードローラーは、鉄輪を使用して地盤を均一に押し固める機械です。耐久性が求められる基礎工事の圧縮や厚い土層の締固めなど、深層土壌までの圧縮が必要な場所で多く使用されます。一定の圧力で力強く地面を押し固めることができるため、道路工事や盛土工事など幅広い現場で活躍しています。
タイヤローラーは空気入りのゴム製タイヤを複数装着した構造を持つ締固め機械で、日本では前方に3つ、後方に4つのタイヤを装着しているタイプが主流です。ゴム製タイヤは鉄輪よりも衝撃吸収力に優れているため、道路面を滑らかに仕上げることができます。タイヤの空気圧を調整することで接地圧を変えられるほか、鉄輪のロードローラーに比べて走行スピードが速く機動性が高いという特徴があります。勾配のある場所やすべりやすい条件での転圧が比較的簡単にできるため、様々な現場で重宝されています。
マカダムローラーは前方に1輪、後方に2輪の合計3輪構造を持つロードローラーの一種です。車輪が3輪あることで凹凸や段差に強く、不整地での施工で大いに活躍が期待できます。高い線圧によって砕石や砂利道の締固めや、アスファルト混合物の初期転圧に有効です。マカダムローラーは広い面積をカバーできる利点がある一方、車体が重く設計されているため大規模な工事に適しています。
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タンデムローラーは前方と後方にそれぞれ1輪ずつ車輪を装備した2輪構造のロードローラーです。ロードローラーの中では標準的なタイプで、仕上げ面の平坦性に優れ、すじを残すことが少ないという特徴があります。そのため、アスファルト混合物の仕上げ用として多く使われています。マカダムローラーに比べて車体が軽く、小回りが利く機動力を重視した設計となっているため、狭い施工箇所でも十分な力を発揮できます。
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振動ローラーは車輪の内部に起振機を搭載し、その振動力と自重を利用して地盤を転圧する締固め機械です。振動の力によって高い締固め効果を発揮し、締固め効果が深層まで及ぶため材料の層の敷き均し厚さを厚くできるという利点があります。締固め効果が大きく、少ない転圧回数で十分な締固め度が得られるため、作業効率が非常に高い機械です。道路の盛土やフィルダム、空港の滑走路、宅地造成など、大規模な土木工事からインフラ整備まで幅広く活用されています。
プレートコンパクターは偏心体を高速回転させて遠心力を発生させる起振機を平板の上に直接装備した機械です。この振動によって締固めと自走を同時に行います。路床の砂や砂利の転圧、アスファルトの仕上げ転圧及びパッチング作業などに使われますが、一般的には表層作業に適しています。盛土法面や法肩、狭い場所の路床、構造物の裏込めや埋戻し、狭い場所のアスファルト舗装などに使用されます。
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ハンドガイドローラーは作業員が手で操作する小型の振動ローラーで、狭い場所や小規模な施工に適しています。大型機械が入れない場所や細かい部分の締固めに使用され、補助的な締固め機械として重要な役割を果たします。操作性が良く、路肩や構造物周辺など細かい箇所の施工に欠かせない機械です。
タンピングローラーは突起のついたローラーで地盤を突いてたたきながら締め固める機械です。突起の先端に荷重を集中させることができるため、土塊や岩塊などの破壊や締固めに効果があります。質量および突起の数、形状、寸法、配列などによって締固め性能が異なるので、使用目的や土質に応じた機種選定が求められます。土工作業での重転圧に有効で、特に硬い地盤や岩を含む地盤の締固めに適しています。
ランマーは小型エンジンや電動機でスプリングを介して振動板に連続的に振動を与え、土の表面をたたいて締め固める機械です。質量は50~60kg前後のハンドガイド式のものが多く、高含水比の砂質土や粘性土以外の土質に広く利用できます。狭い場所や他の大型締固め機械が使えない場所、路肩、小規模の埋戻し部分などの締固めに使われる補助締固め機械として重要です。底板が上下に大きくストロークして打撃する構造となっており、「タンピングランマー」「打撃式締固め機」とも呼ばれます。
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タンパはランマーと似た機械ですが、ランマよりエンジンが一回り大きく、加圧版の上に載っている構造です。ランマより一度に加圧できる面積が大きく締固め回数も多いという特徴があります。約2~4kw程度の小型エンジンや電動機を使用し、スプリングを介して振動板に連続的に振動を与えます。狭い場所での補助的な締固め作業に適しており、特に構造物周辺や路肩など細かい部分の施工に使用されます。
土質条件に応じた締固め機械の選定は施工品質を確保する上で極めて重要です。砂質土や砂利には振動系の機械が効果的で、振動ローラーやプレートコンパクターが適しています。振動により締固め効果が深層まで及ぶため、材料の層を厚く敷き均すことができ、作業効率が向上します。ただし、ローラーの質量、振動数などを土質に応じて適切に選ぶ必要があります。岩やレキの締固めには重い機械で高振動数のものが必要です。
参考)https://jcmanet.or.jp/jcm/wp-content/uploads/2022/11/013.pdf
粘性土の締固めには静的荷重を利用する機械が適しており、ロードローラーやタイヤローラーが効果的です。特に堤防など不透水性確保のため細粒分が多く、比較的高含水比で施工される土には、締固め能力の高い機械を選定する必要があります。タイヤローラーは輪荷重による締固めだけでなく、タイヤの空気圧を組み合わせることで締固め力を変化させることができるため、様々な粘性土に対応できます。
混合土質や不整地の場合は、複数の締固め原理を持つ機械が有効です。コンバインドローラーは前方に鉄輪、後方にゴムタイヤを備えており、鉄製ローラーとゴムタイヤ双方の特徴を生かした締固めが可能です。アスファルトやコンクリートなど多様な表面の転圧作業に対応でき、初期から仕上げの締固めまで幅広く活用されます。現場の土質条件を事前に十分調査し、最適な機械を選定することが施工の成否を分けます。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejge/70/4/70_340/_pdf
締固め用の自走式ローラーの運転には資格が必要です。建設機械について労働安全衛生法によって、特に自走式のものについては資格が必要とされています。作業時には「締固め用機械(ローラー)の運転特別教育」を受講する必要があり、これによって機体質量に関わらずすべてのローラーを使用した締固めの業務が可能となります。受講要件は特になく、学科4時間、運転に必要な一般的事項に関する知識1時間、関係法令の学習が含まれます。
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公道走行には別途特殊免許が必要で、「大型特殊免許」または「小型特殊免許」が求められます。大型特殊免許は全長12m以下、全幅2.5m以下、全高3.8m以下の機械を運転でき、10tタイヤローラーや10tマカダムローラーなど大型の締固め機械を公道で走行させることができます。小型特殊免許は全長4.7m以下、全幅1.7m以下、高さ2.0m(場合によっては2.8m)以下の機械が対象で、普通自動車免許でも運転可能です。4t振動ローラーや3tタイヤローラーなどの小型機械はこの区分に該当します。
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資格取得のサポートを行っている企業も多く、建設会社では従業員の資格取得を支援する制度を設けています。労働技能講習協会などでは土日祝にも特別教育を実施しており、東京都内をはじめ千葉、埼玉、神奈川などの受講者にも対応しています。締固め機械の運転には適切な資格を取得し、安全な作業を心がけることが重要です。
参考)締固め機械はどんな免許で乗れるの?
参考リンク(締固め機械の資格に関する詳細情報)。
知っていますか?締固め(ローラー)の資格について
参考リンク(締固め用ローラー特別教育の講習内容)。
ローラー(締固め用)特別教育
参考リンク(建設機械施工の安全対策指針)。
建設機械施工安全技術指針
締固め機械の定期メンテナンスは安全な施工と機械の長寿命化に不可欠です。重機の整備メンテナンスサービスを提供する企業では、大型機械の修理、塗装、溶接、板金など多種多様な機械の健康チェックを常に行っています。定期的な点検により、機械の不具合を早期に発見し、重大な故障を未然に防ぐことができます。
参考)https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kensetsusekou/kankyou/mic/kenki_ss/H17kaisei.pdf
建設機械施工安全技術指針では、施工の安全確保のために現場条件を十分考慮した施工計画を作成し、それに基づいた安全対策を確実に実施することが求められています。実施にあたっては新たな問題点や留意すべき事項がないか点検確認するとともに、より一層の安全対策の向上に努めることが重要です。事故・災害が発生した場合には直ちに応急措置及び関係機関への報告を行い、二次災害の防止措置を講じる必要があります。
締固め機械の保守管理では起振機の点検、油圧系統のチェック、タイヤの空気圧管理などが重要な項目となります。振動ローラーの場合は起振機の偏心質量や回転部分の摩耗状態を定期的に確認し、異常があれば速やかに修理する必要があります。タイヤローラーでは空気圧の適正管理がタイヤの寿命と締固め性能に直結するため、作業前の点検が欠かせません。適切なメンテナンスにより機械の性能を維持し、安全で効率的な施工を実現できます。
参考)整備メンテナンスサービス