
コンクリート床の塗装は、単なる美観向上だけでなく、床の保護や機能性向上のために重要な役割を果たします。コンクリートはそのままでは経年劣化により粉が出たり(粉化現象)、ひび割れが生じたりするため、適切な塗装を施すことで耐久性を大幅に向上させることができます。
床塗装の目的は主に以下の点にあります:
コンクリート床塗装は、一般住宅のガレージやベランダから、工場、倉庫、商業施設まで幅広く活用されています。特に工場や倉庫では、重量物や薬品による床の損傷を防ぐために不可欠な処理となっています。
塗装を始める前に、コンクリートの状態を確認することが重要です。新設のコンクリートの場合は、打設後少なくとも28日間の養生期間を設けることが推奨されています。既存のコンクリートの場合は、ひび割れや剥離、油汚れなどの状態を確認し、適切な下地処理を行う必要があります。
コンクリート床に使用される塗料には、主に以下のような種類があります:
コンクリートの状態や使用環境、求める性能によって、最適な塗料は異なります。例えば、頻繁に重量物を移動させる工場では耐摩耗性の高いエポキシ系が、屋外の歩道などには耐候性の高いウレタン系やシリカ系が適しています。
また、近年では環境に配慮した水性塗料も増えており、VOC(揮発性有機化合物)の排出を抑えつつ、優れた性能を発揮する製品も登場しています。特にIPシリカのような水性でありながら耐摩耗性に優れた塗料は、環境と性能の両立を求める現場で注目されています。
コンクリート床塗装の成否を決める最も重要な工程が下地処理です。いくら高品質な塗料を使用しても、下地処理が不十分だと塗膜の密着不良や早期剥離の原因となります。
1. 清掃と洗浄
まず、床面の汚れやホコリ、油分などを徹底的に除去します。
2. レイタンス除去とエッチング処理
新設コンクリートの表面には「レイタンス」と呼ばれる脆弱層が形成されていることがあります。この層を除去するために、以下の方法を用います:
特に新設コンクリートは強アルカリ性のため、エッチング処理によって表面を中和することが重要です。これにより塗料の密着性が向上します。
3. ひび割れや欠損部の補修
床面のひび割れや欠損部は、適切な補修材で修復します。
4. 乾燥と養生
洗浄や補修後は、床面を十分に乾燥させます。コンクリート内部の水分が多いと、塗膜の密着不良や膨れの原因となります。湿度計を使用して含水率を確認することも重要です。一般的に含水率8%以下が塗装に適した状態とされています。
5. プライマー(下塗り)処理
多くの場合、本塗装の前にプライマー(シーラー)を塗布します。プライマーには以下の役割があります:
プライマーは塗料系統に合わせて選択し、メーカー推奨の塗布量と乾燥時間を守ることが重要です。
下地処理は時間と手間がかかる工程ですが、ここでの丁寧な作業が塗装の耐久性と美観を大きく左右します。特にDIYで行う場合は、この工程を省略せず、十分な時間をかけて行うことをおすすめします。
適切な下地処理を終えたら、いよいよ塗装作業に入ります。ここでは、美しく耐久性のある仕上がりを実現するための塗り方テクニックを解説します。
1. 塗料の準備
塗料は使用前に十分に攪拌することが重要です。特に顔料が沈殿している場合は、底から均一になるまでしっかりと混ぜます。電動攪拌機を使用すると効率的です。
塗料の粘度が高く塗りにくい場合は、メーカー指定の希釈剤で適切に調整します。ただし、過度の希釈は塗膜性能の低下を招くため、製品の指示(多くの場合5%以内)を守りましょう。
2. 塗装の順序
効率的に塗装するためには、以下の順序で作業を進めるのがコツです:
3. 塗装道具の選択
4. 塗装のコツ
5. 多層塗装のテクニック
耐久性を高めるために、多くの場合2〜3回の塗り重ねを行います。
塗り重ねの際は、前の層が指定の乾燥時間を経過していることを確認します。特にエポキシ系は塗り重ね可能時間を過ぎると層間の密着が悪くなるため注意が必要です。
6. すべり止め加工
必要に応じて、すべり止め材を混ぜたり、塗装後に骨材を散布したりすることで、滑りにくい床面に仕上げることができます。特に屋外や水回りでは安全のためにすべり止め加工を検討しましょう。
7. 乾燥と養生
塗装後は十分な乾燥時間を設けます。表面乾燥と完全硬化には時間差があり、特にエポキシ系は完全硬化まで7日程度かかることもあります。早期の重量物設置や水洗いは避け、メーカー指定の養生期間を守りましょう。
塗装作業は天候や気温、湿度の影響を受けやすいため、適切な環境条件(一般的に気温5〜35℃、湿度80%以下)で作業することも重要です。
コンクリート床塗装の耐久性を最大限に高めるためには、塗装前の準備から塗装後のメンテナンスまで、いくつかの重要なポイントがあります。
1. 適切な塗料システムの選択
使用環境に合わせた最適な塗料システムを選ぶことが耐久性の基本です。
また、単一の塗料ではなく、プライマー、中塗り、トップコートを組み合わせた「塗装システム」を採用することで、それぞれの長所を活かした高耐久な床を実現できます。
2. 適切な膜厚の確保
塗膜の耐久性は膜厚に大きく依存します。用途に応じた適切な膜厚を確保しましょう。
必要な膜厚を得るためには、塗り重ねや適切な塗布量の管理が重要です。
3. 下地の水分管理
コンクリート内部の水分は塗膜の膨れや剥離の大きな原因となります。特に以下の点に注意しましょう:
4. 適切な下地補強
コンクリートの強度が不足している場合や、ひび割れが多い場合は、塗装前に下地補強を行います。
5. 定期的なメンテナンス
どんなに高品質な塗装でも、時間の経過とともに劣化します。定期的なメンテナンスにより、大規模な補修を未然に防ぎ、床の寿命を延ばすことができます。
6. 最新技術の活用
床塗装の技術は日々進化しています。最新の技術を取り入れることで、従来よりも高い耐久性を実現できることがあります。
例えば、前述のIPシリカのような無機系塗料は、従来の有機系塗料に比べて紫外線による劣化が少なく、長期間美観を保つことができます。
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