塗装屋の高圧洗浄機で外壁の汚れやコケを徹底除去する方法

塗装屋の高圧洗浄機

塗装屋が使用する高圧洗浄機の種類と性能

プロの塗装屋が使用する高圧洗浄機は、一般家庭で使用されるものとは大きく異なります。業務用高圧洗浄機は、50〜100MPa（メガパスカル）程度の圧力を安定して発揮することができます。これは家庭用高圧洗浄機の最大圧力（約15MPa程度）をはるかに上回る性能です。

 

家庭用高圧洗浄機では、瞬間的に高い圧力を出せても、それを長時間維持することは構造上難しいという欠点があります。一方、プロ仕様の高圧洗浄機は、安定した高出力を長時間維持できるため、頑固な汚れやコケも効率的に除去できます。

 

業務用高圧洗浄機には主に以下の種類があります：

• エンジン駆動タイプ: 最大150気圧程度の水圧を発揮し、電源が不要なため屋外での作業に適しています。

   

• 電気駆動タイプ: 比較的静音性に優れており、住宅密集地での作業に向いています。

   

• 温水対応タイプ: 油汚れなどに効果的で、洗浄効率が高いのが特徴です。

   

プロの塗装屋は、これらの高圧洗浄機を外壁の材質や汚れの状態に応じて使い分けています。例えば、サイディングボードには比較的低圧で、モルタル壁には高圧で洗浄するなど、外壁材に合わせた適切な圧力調整が重要です。

 

外壁塗装前の高圧洗浄の役割と重要性

外壁塗装において高圧洗浄は単なる「洗い流し」ではなく、塗装の成否を左右する極めて重要な工程です。その主な役割は以下の通りです：

1. 汚れの徹底除去

   外壁には風雨によって付着した汚れやカビが存在します。これらを放置すると、塗装の密着性や耐久性に悪影響を及ぼします。高圧洗浄によって外壁表面から汚れやカビを効果的に除去し、クリーンな状態に戻すことができます。

    

2. 塗料の密着性向上

   外壁の表面には微細な傷や凹凸が存在します。高圧洗浄によって外壁の表面を平滑化し均一な状態に整えることで、塗装の密着性を大幅に向上させることができます。これにより、塗装の耐久性も高まります。

    

3. 旧塗膜の除去

   高圧洗浄は、単に表面の汚れを落とすだけでなく、剥がれかけている旧塗膜やチョーキング（塗膜が粉状になったもの）も除去します。これにより、新しい塗料が直接健全な下地に密着するようになります。

    

「高圧洗浄が十分でなかった場合、全ての工程が台無しになってしまいます。つまり、高圧洗浄の出来次第で全てが決まる」と言われるほど、この工程は重要です。いくら高品質な塗料を使用しても、下地処理が不十分であれば、早期に塗膜の剥がれや膨れなどの不具合が生じる可能性が高くなります。

 

プロの塗装屋は、この重要性を十分に理解し、外壁の状態に合わせた適切な圧力と洗浄方法を選択しています。

 

塗装屋による高圧洗浄機を使った外壁のコケ除去テクニック

外壁に発生するコケは見た目を損ねるだけでなく、放置すると外壁材の劣化を早める原因にもなります。プロの塗装屋は高圧洗浄機を使って効率的にコケを除去していますが、そこには様々なテクニックが存在します。

 

コケ除去の基本手順

1. 事前確認と準備
   • 外壁の状態を確認し、ひび割れや脆弱部分をチェック
   • 周囲の窓や植栽などを養生して保護
   • 水道や電源の確保
2. 洗浄方法
   • 上から下へ向かって洗浄（汚れが下に流れるようにする）
   • ノズルと外壁の距離は20〜30cm程度を維持
   • 外壁に対して直角に水流を当てる
   • ノズルはゆっくり動かして効率よく洗浄

特に頑固なコケに対しては、専用の洗浄剤を併用することもあります。中性の多目的洗浄剤を使用することで、コケの除去効率を高めることができます。

 

注意すべきポイント

• 過剰な圧力は外壁材を傷める可能性があるため、外壁材に合わせた適切な圧力調整が必要
• 同じ箇所に長時間水流を当て続けないこと
• サイディングの目地部分や窓周りなど、水が侵入しやすい箇所は特に注意が必要

プロの塗装屋は、コケの状態や外壁材の種類に応じて、「通常タイプ」と「トルネードタイプ」などのノズルを使い分けています。トルネードタイプは洗浄力が強いため、頑固なコケには効果的ですが、外壁を傷める可能性もあるため、使用する場所と圧力の調整に細心の注意を払っています。

 

家庭用と業務用高圧洗浄機の違いと選び方

家庭用高圧洗浄機と業務用高圧洗浄機には明確な違いがあります。塗装工事の品質を左右する重要な要素ですので、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。

 

家庭用高圧洗浄機

• 水圧：約5〜10MPa（50〜100キロ）程度
• 特徴：軽量でコンパクト、取り扱いが簡単
• 価格：1万円〜5万円程度
• 用途：軽度の汚れ落とし、車や自転車の洗浄など
• 限界：長時間の使用に向かない、安定した高圧を維持できない

業務用高圧洗浄機

• 水圧：15〜100MPa（150〜1000キロ）程度
• 特徴：高出力、長時間の安定した使用が可能
• 価格：10万円〜100万円以上
• 用途：プロの外壁塗装、頑固な汚れやコケの除去
• メリット：効率的な洗浄が可能、時間短縮になる

高圧洗浄機を選ぶ際のポイントは以下の通りです：

1. 水圧の強さ：外壁塗装には最低でも15MPa（150キロ）以上の水圧が必要
2. 耐久性：長時間の連続使用に耐えられるか
3. ノズルの種類：様々な洗浄状況に対応できるノズルが付属しているか
4. 静音性：住宅密集地での作業を考慮した静音設計かどうか
5. 高圧ホースの長さ：建物全体をカバーできる長さがあるか

プロの塗装屋は、これらの要素を総合的に判断して、作業内容に最適な高圧洗浄機を選定しています。一般の方が外壁洗浄を行う場合は、家庭用高圧洗浄機でも軽度の汚れなら対応可能ですが、本格的な塗装前の下地処理としては不十分である点に注意が必要です。

 

塗装屋が教える高圧洗浄機使用時の注意点と失敗しないコツ

高圧洗浄機は非常に強力な道具であり、使い方を誤ると外壁を傷めたり、作業者自身が怪我をしたりする危険があります。プロの塗装屋が実践している安全で効果的な使用方法と注意点をご紹介します。

 

安全面での注意点

1. 適切な防護具の着用
   • ゴーグルや保護メガネで目を保護
   • 防水性の作業着やレインコートで身体を保護
   • 滑りにくい長靴や安全靴の着用
   • 手袋で手を保護（特に洗浄剤を使用する場合）
2. 周囲への配慮
   • 作業前に近隣への挨拶や説明を行う
   • 騒音が出る時間帯に配慮（早朝や夜間は避ける）
   • 水の飛散による周辺への影響を最小限に抑える養生

外壁を傷めないためのコツ

1. 外壁材に合わせた圧力調整
   • サイディング：比較的低圧（10〜15MPa程度）
   • モルタル壁：中〜高圧（15〜20MPa程度）
   • タイル：高圧（20MPa以上）も可能
2. 適切な距離と角度の維持
   • ノズルと外壁の距離：20〜30cm程度
   • 外壁に対して60〜90度の角度を保つ
   • 同じ場所に長時間水流を当て続けない
3. 洗浄の順序と方法
   • 上から下へ向かって洗浄する
   • 一定の速度でムラなく洗浄する
   • 特に汚れがひどい箇所は、洗浄剤を使用して事前に処理

よくある失敗と対策

• 失敗例1：外壁の塗膜が剥がれる

  → 対策：圧力を下げる、距離を取る

• 失敗例2：目地やシーリングが破損する

  → 対策：目地部分は特に注意して低圧で洗浄

• 失敗例3：窓や建具から水が侵入する

  → 対策：窓周りは特に丁寧に養生し、直接水流を当てない

プロの塗装屋は、これらの注意点を熟知した上で高圧洗浄を行っています。DIYで高圧洗浄を行う場合は、これらのポイントを押さえることで、外壁を傷めることなく効果的な洗浄が可能になります。ただし、塗装前の本格的な洗浄は、外壁の状態や塗装の品質に直結するため、プロに依頼することをお勧めします。

 

塗装屋が実践する高圧洗浄後の外壁ケアと次工程への準備

高圧洗浄後の外壁ケアと次の塗装工程への準備は、塗装の仕上がりと耐久性に大きく影響します。プロの塗装屋が実践している高圧洗浄後の重要なステップを解説します。

 

乾燥期間の確保
高圧洗浄後は、外壁が十分に乾燥するまで次の工程に進まないことが重要です。

 

• 一般的な乾燥期間：1〜3日（天候や季節により変動）
• 湿度が高い梅雨時期：3〜5日程度必要な場合も
• 北側など日当たりの悪い面：特に乾燥に時間がかかる

乾燥が不十分な状態で塗装を行うと、塗膜の密着不良や剥がれ、カビの発生などのトラブルの原因となります。プロの塗装屋は、湿度計を使用して外壁の乾燥状態を確認することもあります。

 

洗浄後の点検と補修
高圧洗浄によって顕在化した外壁の問題点を確認し、必要な補修を行います。

 

1. クラック（ひび割れ）の確認
   • 洗浄によって見えるようになったクラックを発見
   • サイズに応じて適切な補修材（Uカットシーリング、エポキシ樹脂など）で処理
2. 浮き・剥がれの処理
   • 洗浄で緩んだ塗膜や外壁材を除去
   • 必要に応じて下地調整材で平滑化
3. シーリングの確認
   • 劣化したシーリングの打ち替え
   • 部分的な補修が必要な箇所の処理

次工程への準備
高圧洗浄後、塗装の前に行う準備作業は以下の通りです：

1. 養生の確認と再設置
   • 洗浄で外れた養生の再設置
   • 窓や建具など、塗料が付着してはいけない部分の保護
2. 下地調整
   • 必要に応じてサンディング（研磨）
   • フィラー（充填剤）による不陸（凹凸）の調整
   • 吸い込みの激しい箇所へのシーラー塗布
3. 塗装環境の確認
   • 天候予報のチェック
   • 気温や湿度の確認（適切な塗装条件かどうか）

プロの塗装屋は、これらの工程を丁寧に行うことで、高品質な塗装仕上がりを実現しています。特に、高圧洗浄後の外壁の状態を詳細に確認し、問題点を早期に発見して対処することが、長持ちする塗装の秘訣です。

 

高圧洗浄は単なる「水で汚れを落とす」作業ではなく、塗装の品質を左右する重要な工程であり、その後の適切なケアと準備が、美しく耐