
屋根面積計算の第一歩は、屋根投影面積の正確な測定から始まります。投影面積とは、屋根を真上から見下ろした時の平面的な面積のことで、屋根の傾斜は考慮しません。
基本的な測定手順:
例えば、外壁が8m×4mで軒の出が各辺30cmの場合。
投影面積 = (8m + 0.3m + 0.3m)×(4m + 0.3m + 0.3m)= 8.6m × 4.6m = 39.56㎡
複雑な形状の屋根の場合は、長方形に分割して個別に計算し、最後に合計します。L字型や出っ張りがある建物では、補助線を引いて計算しやすい形に分けることがポイントです。
図面がある場合は、1階の平面図から外壁の寸法を確認できますが、軒の出だけは現地で実測する必要があります。
投影面積が分かったら、次に勾配係数を適用して実際の屋根面積を算出します。屋根には傾斜があるため、平面積よりも実際の面積は大きくなります。
主な勾配係数一覧:
屋根勾配 | 係数 | 角度(およそ) |
---|---|---|
4寸勾配 | 1.077 | 約22度 |
4.5寸勾配 | 1.097 | 約24度 |
5寸勾配 | 1.118 | 約27度 |
5.5寸勾配 | 1.141 | 約29度 |
6寸勾配 | 1.166 | 約31度 |
6.5寸勾配 | 1.193 | 約33度 |
日本の戸建住宅では4寸〜6.5寸勾配が一般的で、これらの係数は約1.1〜1.2の範囲にあります。簡略計算では、全ての勾配に対して1.15を使用することも可能です。
計算式:屋根面積 = 投影面積 × 勾配係数
先ほどの例(投影面積39.56㎡、5寸勾配)の場合。
屋根面積 = 39.56㎡ × 1.118 = 44.25㎡
この計算により、平面積よりも約4.7㎡大きい実際の屋根面積が求められます。
軒の出の測定は屋根面積計算で最も見落としやすく、かつ重要な要素です。軒の出を含まない場合、面積に大きな誤差が生じます。
軒の出による面積差の実例:
建物8m×4m、軒の出30cmの場合
軒の出の測定ポイント:
軒の出は建物の保護機能を持つため、近年の住宅では30cm〜90cm程度が一般的です。古い住宅や和風建築では1m以上の大きな軒の出を持つ場合もあり、これらを見落とすと大幅な計算ミスにつながります。
屋根材の施工や雨樋の設置においても、軒の出部分は重要な作業エリアとなるため、正確な測定が施工計画の精度向上に直結します。
現地での測定が困難な場合や事前調査として、Googleマップの航空写真機能を活用した測定方法が効果的です。この方法により、安全かつ効率的に屋根の概要を把握できます。
スマートフォンアプリによる測定:
デスクトップPC版での測定手順:
スマートフォン版での測定:
この方法の精度は現地測定には劣りますが、概算値としては十分実用的です。特に見積もりの初期段階や、複数の物件を効率的に調査する際に威力を発揮します。
ただし、軒の出については航空写真では判別が困難なため、現地確認が必須となります。また、樹木や隣接建物により屋根が隠れている場合は、この方法では正確な測定ができません。
2階建て以上の住宅では、下屋根(1階部分の屋根)が存在するケースが多く、これらを見落とすと大幅な計算ミスにつながります。下屋根は主屋根とは別に計算し、最終的に合計する必要があります。
下屋根の特徴と計算ポイント:
複雑な屋根形状の計算例:
🏠 寄棟屋根の場合:
📐 切妻屋根の場合:
🔧 方形屋根の場合:
実際の計算手順:
例:主屋根50㎡(5寸勾配)+ 下屋根15㎡(4寸勾配)の場合
この計算方法により、複雑な屋根形状でも正確な面積算出が可能になり、材料の発注ミスや工期の見積もり誤差を防げます。特に屋根材や防水シートの必要量は、正確な面積計算に基づいて決定されるため、施工品質の向上にも直結します。