税効果会計・簿記2級の練習問題を建設業経理士が完全攻略

税効果会計・簿記2級の練習問題を建設業経理士が完全攻略

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税効果会計と簿記2級の練習問題

[基礎] 税効果会計の仕組みと法人税等調整額


建設業や経理の実務に携わる皆さんにとって、日商簿記2級へのステップアップはキャリア形成において非常に有意義な挑戦です。しかし、多くの学習者が最初につまずく大きな壁、それが「税効果会計」です。なぜなら、この論点は皆さんが慣れ親しんだ「建設業経理士2級」の出題範囲には含まれておらず、完全に未知の領域だからです。[1][2]
税効果会計の本質をひとことで言えば、「企業会計上の『利益』と、税務上の『所得』のズレを調整する手続き」です。
参考)税効果会計とは【簿記2級の仕訳をわかりやすく】

通常、企業の利益(税引前当期純利益)に対して法人税率(実効税率)を掛ければ、その期の税金費用が計算できるはずです。しかし、実際には会計上の費用として計上したものが、税法上は「まだ損金(経費)として認めない」とされるケースが多々あります。この「会計と税務のタイミングのズレ」を一時差異と呼びます。
参考)税効果会計とは?目的や手順、適用時の注意点を解説

例えば、ある費用1,000円を会計上は計上したが、税務上は否認されたとします。この場合、税務上の所得は会計上の利益より1,000円多くなり、その分だけ当期の税金を多く支払うことになります(これを「税金の前払い」と考えます)。この前払い分を資産として計上するのが繰延税金資産であり、その相手勘定として損益計算書の法人税等を調整するのが法人税等調整額です。
参考)税効果会計に関する問題1(仕訳問題)

この処理を行わないと、損益計算書上の「税引前当期純利益」と「法人税等」の対応関係が崩れ、正しい業績評価ができなくなってしまいます。税効果会計は、この対応関係を適正にするための重要な手続きなのです。youtube​
参考)簿記2級の税効果会計: 繰延税金資産と繰延税金負債の違いとそ…

[仕訳] 繰延税金資産・負債の計上パターン

簿記2級の練習問題で頻出する税効果会計のパターンは、主に「貸倒引当金の損金算入限度超過」と「減価償却費の損金算入限度超過」の2つです。これらは「将来減算一時差異(将来、税金を減らしてくれる差異)」と呼ばれ、**繰延税金資産**を用いて処理します。具体的な仕訳の流れを見てみましょう。[9][6]
【例題:貸倒引当金の調整】
決算において貸倒引当金繰入額10,000円を計上したが、税法上の損金算入限度額は6,000円であった。実効税率は30%とする。
この場合、差額の4,000円(10,000円 - 6,000円)が損金不算入(一時差異)となります。この4,000円に対する税金分(4,000円 × 30% = 1,200円)は、当期に多く税金を払うことになりますが、将来貸倒れが確定した時点で損金として認められ、税金が安くなる権利を持っています。​
【仕訳】
(借)繰延税金資産 1,200 / (貸)法人税等調整額 1,200
この仕訳により、損益計算書上の法人税等の負担額をマイナス(貸方計上)させ、会計上の利益に見合った税金費用に修正します。これが「法人税等調整額」の役割です。
参考)【図解で理解】税効果の概要をゼロからわかりやすく解説

逆に、翌期以降にこの差異が解消した場合(実際に貸倒れが発生した、または税法上の限度額が増えたなど)は、逆仕訳を行って資産を取り崩します。
【解消時の仕訳】
(借)法人税等調整額 1,200 / (貸)繰延税金資産 1,200
このように、税効果会計の仕訳問題は「差異の発生」なのか「差異の解消」なのかを問題文から正確に読み取ることが最大のポイントです。特に本試験レベルの練習問題では、期首に残高がある状態から、当期の増減額のみを調整する「洗替法」や「差額補充法」のような思考が求められるため、T字勘定(Tフォーム)を書いて整理する癖をつけることを強く推奨します。
参考)至急お願いします!簿記2級の税効果会計で差異の発生か差異の解…

[難所] その他有価証券評価差額金の税効果

簿記2級の税効果会計において、多くの受験生が苦手とするのが「その他有価証券」にかかる税効果です。これは、他の項目(貸倒引当金や減価償却費)とは異なり、相手勘定が「法人税等調整額(P/L科目)」ではなく、「**その他有価証券評価差額金(B/S直入)**」になるという特殊なルールがあるためです。[12][13][14][15]
その他有価証券は、決算時に時価評価を行いますが、その評価差額は損益計算書を通さず、貸借対照表の純資産の部に直結させます(全部純資産直入法)。しかし、税務上は時価評価を行わない(取得原価のまま)ため、ここで会計と税務のズレが生じます。
参考)【税効果会計 Part③】その他有価証券の評価差額に対する税…

【例題:その他有価証券の評価替え】
取得原価10,000円のその他有価証券が、決算時に時価11,000円となっていた。実効税率は30%である。
会計上は1,000円の評価益が出ますが、これはまだ実現していない利益です。もし売却すれば利益が出て税金がかかるはずですが、今はまだ売っていないので税金はかかりません。しかし、純資産に1,000円全額を計上すると、「税引前」の金額が載ってしまい、将来の税金負担(負債)が隠れてしまいます。そこで、評価益のうち税金相当額を「繰延税金負債」としてあらかじめ計上し、残りの70%分だけを「その他有価証券評価差額金」として純資産に計上します。​
【仕訳】
(借)その他有価証券 1,000
  (貸)繰延税金負債 300 (1,000 × 30%)
  (貸)その他有価証券評価差額金 700 (1,000 × 70%)
ここで注意すべきは、「繰延税金負債」を使う点です。評価益が出ている=将来売却した時に課税される=将来税金を払う義務がある、と考えるため、負債を計上します(将来加算一時差異)。逆に評価損が出ている場合は、「繰延税金資産」を計上し、借方に「その他有価証券評価差額金」が来ます。​
この処理は、「税引後の純粋な資産価値」を貸借対照表に表示するために不可欠です。練習問題を解く際は、「評価差額全体」から「税金分」を引いた残りが「評価差額金」になる、という図式をイメージするとミスが減ります。youtube​

[比較] 建設業経理士2級と日商簿記2級の違い

建設業界で働く皆さんの中には、「建設業経理士2級」を取得してから「日商簿記2級」に挑戦される方が多くいらっしゃいます。両者は学習範囲の多くが重複していますが、決定的な違いがいくつか存在します。その代表格がここまで解説してきた「**税効果会計**」です。[17][1]
実は、建設業経理士検定において税効果会計が出題範囲となるのは1級からです。2級の段階では、税効果会計は学習範囲に含まれていないため、建設業経理士2級合格者であっても、この概念に初めて触れることになります。これが、建設業経理士ホルダーが日商簿記2級に挑戦する際に感じる「壁」の正体です。
参考)【建設業経理士2級と日商簿記2級】両方取った方がいいのか分か…

また、日商簿記2級には「連結会計」も含まれており、ここでも税効果会計の知識(連結税効果)が必要となります。一方で、建設業経理士2級は「建設業特有の勘定科目(未成工事支出金など)」や「原価計算」に深く特化しており、実務直結型の知識が問われます。
参考)日商簿記受験生にはアドバンテージあり|建設業経理士|資格の学…
youtube​
この違いを理解することは、試験対策上非常に重要です。建設業経理士の知識で戦える「工業簿記」の分野は自信を持って進めつつ、商業簿記における「税効果会計」「連結会計」「外貨建取引」といった建設業経理士2級にはない論点に学習時間を集中投資することが、合格への最短ルートとなります。
参考)建設業経理士とは?試験内容や日商簿記との違い、取得のメリット…

特に建設業では、一つの工事が長期にわたるため、会計期間と工事期間のズレが生じやすく、本来は税効果会計の適用による財務諸表への影響が大きい業種でもあります。資格試験の枠を超えて、実務的な視点を持つことで、この難解な論点への興味が湧いてくるはずです。

[応用] 工事損失引当金に見る一時差異の事例

最後に、建設業の皆さんにとって馴染み深い「**工事損失引当金**」を使って、税効果会計の必要性を独自の視点で深掘りしてみましょう。これは、建設業経理士2級の知識と日商簿記2級の税効果会計がリンクする、非常に実務的な事例です。
工事損失引当金とは、工事契約について将来の損失が見込まれる場合に、その損失額を前もって計上する引当金です(保守主義の原則)。会計上は、損失が発生する可能性が高まった時点で、すぐに「工事損失引当金繰入額(費用)」を計上し、利益を減らします。
参考)資産と費用(82) ~工事損失引当金~|経理界のホームラン王…

しかし、税務署(法人税法)の考え方は異なります。税金計算においては、「まだ確定していない損失(見積もりによる費用)」は原則として認められません。実際に工事が完了し、最終的な赤字が確定した段階で初めて損金として認められます。
参考)【建設業経理士2級】無料講座&問題集

ここに「会計上の費用(引当金繰入)」と「税務上の損金(否認)」のズレ、すなわち一時差異が生まれます。
参考)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/080702/04.htm

例えば、期末に100万円の工事損失引当金を計上したとします。


  • 会計上:100万円の費用計上(利益が100万円減る)。

  • 税務上:100万円は損金不算入(所得は減らない=税金は高いまま)。

このままでは、会計上の利益は減っているのに、税金だけが高いままという歪な状態になります。そこで、この「税金の払い過ぎ分」を繰延税金資産として計上し、調整を行うのです。
「工事の損失に備えただけなのに、なぜ税金を先払いしなければならないのか?」という現場の疑問を解消するのが税効果会計であり、将来工事が完了して損失が確定した時に、この繰延税金資産が取り崩され、その期の税金負担を軽減してくれるわけです。
このように、皆さんが普段扱っている「未成工事支出金」や「工事損失引当金」の裏側にも、実は税効果会計の論理が隠されています。単なる「簿記の記号」として暗記するのではなく、建設現場のお金の動きと結びつけてイメージすることで、難解な練習問題もぐっと解きやすくなるはずです。
参考)建設業・工事業・設備業における「未成工事支出金」に注意

この記事のまとめ
🚧
建設業経理士との違い

建設業経理士2級では出題されない「税効果会計」は、日商簿記2級の最大の山場。ここを重点的に対策することが合格への鍵です。

💰
税効果会計の本質

会計上の「利益」と税務上の「所得」のズレを調整する手続き。一時的な「税金の前払い」を資産(繰延税金資産)として計上します。

🏗️
現場視点で理解する

「工事損失引当金」などの建設業特有の会計処理も、税務上はすぐには認められないため、税効果会計の対象(一時差異)となります。




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