37条書面宅建業者同士の交付義務と記載事項の注意点

37条書面宅建業者同士の交付義務と記載事項の注意点

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37条書面宅建業者同士の交付義務

37条書面の基本的な交付義務
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業者間取引でも交付必須

宅建業者同士の取引であっても37条書面の交付義務は免除されず、契約締結後遅滞なく両当事者に交付する必要があります

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複数業者関与時の記名義務

複数の宅建業者が取引に関与した場合、全ての業者の宅建士が37条書面に記名する義務を負います

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違反時の監督処分

37条書面の交付義務違反や記載漏れがあった場合、業務停止処分や50万円以下の罰金が科される可能性があります

37条書面宅建業者同士の交付が省略できない理由

宅建業法第37条では、宅建業者は宅地建物の売買・交換・貸借契約が成立したとき、遅滞なく契約内容を書面化して契約当事者に交付することが義務付けられています。この義務は、契約の相手方が一般消費者であるか宅建業者であるかを問わず適用されます。
参考)Vol.67 宅建業法~37条書面の交付~

業者間取引においても37条書面の交付を省略できない理由は、契約内容の明確化と紛争防止という37条書面の目的にあります。宅建業者同士であっても、契約締結後の「言った、言わない」といったトラブルを防止するため、契約内容を正確に記載した書面の交付が必要とされているのです。
参考)【宅建業法の超頻出分野】宅建の「37条書面」を攻略するポイン…

重要事項説明書(35条書面)については、買主や借主が宅建業者の場合は説明義務が免除されますが、書面の交付自体は必要です。これに対して37条書面は、宅建業者同士の取引でも説明・交付ともに省略することができません。
参考)http://tanadaregal.seesaa.net/article/481624693.html

37条書面宅建業者間取引での複数業者関与時の記名義務

一つの取引に複数の宅建業者が関わった場合、それぞれの宅建業者が37条書面の交付義務を負います。この場合、それぞれの宅建業者が重複して同一内容の37条書面を作成・交付する必要はなく、いずれかの宅建業者が代表して契約当事者に対して各1通の37条書面を作成・交付すればよいとされています。​
ただし重要なポイントとして、その37条書面には関与する全ての宅建業者の宅建士の記名が必要です。例えば、売主宅建業者Aと媒介業者Bが関与する取引の場合、媒介業者Bが37条書面を作成したとしても、売主Aの宅建士による記名も省略することはできません。
参考)37条書面  35条書面、媒介契約書との比較・業者間取引の交…

複数業者が取引に関与した場合、いずれかの宅建業者が作成した37条書面に違反があれば、交付義務のある全ての宅建業者が監督処分・罰則の対象となります。このため、業者間取引では各業者が記載内容を十分に確認する必要があります。​
月刊不動産の記事では、複数の宅建業者が関与する場合の37条書面の交付義務と宅建士の記名について、具体的な事例を交えて詳しく解説しています

37条書面宅建業者同士の取引における必要的記載事項

37条書面には、必ず記載しなければならない「必要的記載事項」と、定めがある場合に記載する「任意的記載事項」があります。業者間取引であっても、これらの記載事項を省略することはできません。
参考)37条書面(契約書)とは?記載事項や35条書面との違いを解説…

必要的記載事項(売買・交換の場合)

  • 当事者の氏名・住所
  • 物件を特定する情報(所在地、地番、面積など)
  • 既存建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項
  • 代金の額、支払時期、支払方法
  • 物件の引渡し時期
  • 移転登記の申請時期

これらの項目は、必ず37条書面に記載する必要があります。​
任意的記載事項(定めがある場合に記載)

  • 代金以外に発生した金銭の額、授受目的など
  • 契約解除に関する事項
  • 損害賠償や違約金について
  • 天災など不可抗力による損害負担
  • 契約不適合責任についての定め
  • 契約不適合責任の履行確保措置に関する定め
  • 租税その他の公課の負担に関する定め

これらの項目は、当事者間で定めがある場合に記載が必要です。
参考)【宅建過去問】(令和03年12月問40)契約書面(37条書面…

契約不適合責任に関する定めがある場合は、相手方が宅建業者であっても37条書面に記載しなければなりません。宅建業者同士の売買では「種類または品質に関する契約不適合責任を負わない」旨の特約が有効とされていますが、そのような特約がある場合は必ず37条書面に記載する必要があります。
参考)宅建業法 35条と37条の記載事項の違い ~契約不適合責任~…

37条書面宅建業者間での電磁的方法による提供の留意点

令和5年の宅建業法改正により、37条書面を電磁的方法(PDFファイル等)で提供することが可能になりました。ただし、電磁的方法で提供するには相手方の承諾が必要です。
参考)【宅建過去問】(令和05年問26)契約書面(37条書面)(個…

業者間取引においても、電磁的方法による提供を行う場合は以下の要件を満たす必要があります。

  • 相手方から電磁的方法による提供についての承諾を得ること​
  • 提供されたファイルを書面として出力できること​
  • 改変が行われていないかを確認できる措置を講じること​
  • 37条書面の交付に係る宅建士が明示されること​

承諾を得る際は、電磁的方法の種類及び内容について相手方に説明する必要がありますが、この説明は宅建士以外の従業員が行っても構いません。また、一度承諾を得た後でも、相手方から書面で電磁的方法による提供を受けない旨の申出があった場合は、紙の書面を交付しなければなりません。​
宅建業者同士の取引では、双方がITツールに慣れているケースが多いため、電磁的方法による提供が活用されやすい傾向にあります。ただし、手続きの記録を残すため、承諾の取得は書面または電磁的記録で行うことが推奨されます。
参考)https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001479770.pdf

国土交通省の資料では、重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明に関する詳細なガイドラインが示されています

37条書面宅建業者同士の交付義務違反時の罰則と実務上の注意点

37条書面の交付義務を怠った宅建業者に対しては、厳格な監督処分と罰則が科されます。具体的には、指示処分(宅建業法65条1項・3項)、業務停止処分(同法65条2項・4項)、情状が特に重い場合には免許取消処分(同法66条1項9号)が課せられます。
参考)宅建業法の37条書面の交付義務とは?弁護士がわかりやすく解説…

また、37条書面の交付を怠った場合、監督処分として業務停止処分のほか、50万円以下の罰金に処せられることがあります。この罰則は宅建業者に対して科されるものであり、宅建士個人に対する処分や罰則はありません。
参考)宅建業法の37条書面とは?35条書面(重説)との違い - S…

実務上の注意点として以下の点が挙げられます:

さらに注目すべき点として、宅建業者間取引では契約不適合責任の特約(責任を負わない旨の特約など)が有効とされていますが、そのような重要な特約がある場合は必ず37条書面に記載することが求められます。記載漏れがあると、後日のトラブルの原因となるだけでなく、監督処分の対象となる可能性もあります。
参考)宅建試験掲示板 [1938]37条href="https://takken-siken.com/bbs/1938.html" target="_blank">https://takken-siken.com/bbs/1938.htmlamp;nbsp;href="https://takken-siken.com/bbs/1938.html" target="_blank">https://takken-siken.com/bbs/1938.htmlamp;nbsp;契…

保存期間に関しては、37条書面を含む取引関連書類は、売買契約の場合、債務不履行による損害賠償ができる期間である10年間の保存が推奨されます。業者間取引においても、後日の紛争に備えて適切な期間保存しておくことが重要です。
参考)宅建業者が業務で作成、使用した取引関連書類の保存期間

不動産適正取引推進機構のデータベースでは、37条書面の記載不備や不交付による業務停止処分の事例が多数公開されており、実務での注意点を学ぶことができます