L形鋼規格完全解説建築用材質寸法

L形鋼規格完全解説建築用材質寸法

記事内に広告を含む場合があります。

L形鋼規格基礎知識

L形鋼規格の基本構造
📐
等辺山形鋼

両辺の幅が等しい最も基本的なL形鋼の規格形状

🔧
不等辺山形鋼

用途に応じて異なる辺長を持つ特殊規格タイプ

材質・寸法規格

SS400からSM490まで幅広い材質規格に対応

L形鋼は建築・構造物において重要な役割を担う形鋼の一つです。その断面形状がアルファベットの「L」に似ていることから「アングル鋼」「山形鋼」とも呼ばれ、建築分野では柱材、梁材、補強材として幅広く活用されています。
L形鋼の規格は主に JIS G 3192(形鋼の形状・寸法・質量及びその許容差)によって定められており、断面性能や材質、寸法の許容差まで詳細に規定されています。一般的に使用される材質はSS400(一般構造用圧延鋼材)が最も多く、強度が求められる用途では高張力鋼のSM490なども選択されます。
建築現場では、L形鋼の 断面二次モーメント断面係数といった構造計算に必要な数値も規格化されており、設計者はこれらの規格値を基に構造設計を行います。また、防錆性能が要求される環境では、溶融亜鉛めっき仕様やステンレス製のL形鋼も規格化されています。

L形鋼規格の基本寸法体系

L形鋼の寸法表記は「A×B×t」の形式で行われ、Aは一方の辺の幅、Bはもう一方の辺の幅、tは板厚を表します。等辺山形鋼の場合はA=Bとなり、「65×65×8」のように表記されます。
規格化されている基本寸法は以下の通りです。

  • 小型サイズ:20×20×3から50×50×6まで
  • 中型サイズ:65×65×6から100×100×13まで
  • 大型サイズ:120×120×8から250×250×25まで

断面積や単位重量も規格で定められており、例えば65×65×8の等辺山形鋼では断面積9.761cm²、単位重量7.66kg/mという具体的な数値が規格化されています。これらの数値は構造計算や材料費算出の基礎となる重要なデータです。

L形鋼規格の材質分類と特性

建築用L形鋼の材質規格は用途に応じて細分化されており、最も一般的なSS400は降伏点245N/mm²以上、引張強さ400~510N/mm²の性能を有しています。
高強度が要求される構造物では SM490(降伏点325N/mm²以上)や SN400(建築構造用圧延鋼材)が選択されます。特に耐震性能が重要視される建築物では、靭性に優れたSN規格材の使用が推奨されています。
腐食環境で使用される場合は、以下の特殊材質が規格化されています。

  • SUS304ステンレス鋼:耐食性に優れ、食品工場や化学プラントで使用
  • 溶融亜鉛めっき:屋外構造物の長期防錆対策
  • 耐候性:無塗装で使用可能な高耐食性材料

L形鋼規格の許容差と品質基準

JIS G 3192では、L形鋼の寸法許容差が厳格に定められています。辺の長さに対する許容差は、サイズが小さいほど厳しく設定されており、65×65サイズでは±1.5mm、150×150サイズでは±2.0mmが標準的な許容差です。
板厚の許容差はより厳格で、8mm未満では±0.5mm、8mm以上では±0.8mmと規定されています。この精度管理により、設計通りの構造性能が確保されています。
表面品質についても規格で定められており、黒皮仕上げ(熱間圧延のまま)が一般的ですが、より高い表面精度が要求される場合は 酸洗仕上げ研磨仕上げも選択可能です。
また、長さの標準は5.5mまたは6.0mが一般的ですが、運搬や施工の都合に応じて3m、4m、12mなどの特注長さも規格化されています。

L形鋼規格の構造計算用数値

建築構造設計において最も重要な規格値は 断面二次モーメント断面係数です。これらの数値は部材の曲げ強度や変形量の計算に直接使用されます。
例えば、100×100×10の等辺山形鋼の場合。

  • 断面積:19.00cm²
  • 断面二次モーメント(Ix=Iy):175cm⁴
  • 断面二次半径(ix=iy):3.04cm
  • 断面係数(Zx=Zy):24.4cm³

これらの数値は 主軸(x-x軸、y-y軸)と 副軸(u-u軸、v-v軸)の両方について規格化されており、L形鋼特有の非対称断面による構造的特性が考慮されています。
特に重要なのは 最小断面二次モーメントで、これが座屈計算の基準となります。L形鋼は非対称断面のため、主軸と副軸で大きく異なる構造性能を示すことが規格データからも明確に読み取れます。

L形鋼規格外対応と特殊加工仕様

標準規格以外の寸法が必要な場合、規格外製作という選択肢があります。これは既存の規格サイズをベースに、必要な寸法にカットや機械加工を施す方法です。
規格外対応の典型的な例。

  • 標準長さ以外のカット材(1m単位での調整)
  • 穴あけ加工済み材(ボルト接合用)
  • 曲げ加工材(R付き仕様)
  • 表面処理済み材(塗装、めっき等)

また、建築用途では プレファブ化に対応した規格外加工も増えており、工場で予め溶接や穴あけ加工を施した「加工済みL形鋼」の需要も拡大しています。これにより現場作業の効率化と品質向上が実現されています。
特に最近では、3Dプリンティング技術を活用した複雑形状のL形鋼部材も実用化されており、従来の圧延製品では実現困難だった形状の部材も製造可能となっています。