S構造の外壁塗装における特徴と施工方法

S構造の外壁塗装における特徴と施工方法

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S構造と外壁塗装の基礎知識

S構造の外壁塗装ポイント
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耐久性重視

S構造建物は商業施設や高層ビルに多く、耐久性の高い塗料選びが重要です

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専門技術が必要

鉄骨造特有の下地処理や塗装技術が求められます

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コスト効率

適切な塗装でメンテナンスコストを大幅に削減できます

S構造(鉄骨造)は、鉄を柱や梁などの骨組みとした建築構造です。鉄は軽くて強く、粘り強いという特性を持つため、高層ビルや体育館、広いオフィススペースなど、室内の柱を減らしたい建物に適しています。このような建物の外壁塗装は、建物の構造特性を理解した上で適切に行う必要があります。

 

S構造の建物は、RC造鉄筋コンクリート造)やSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)と比較して、軽量で自由度の高い設計が可能という大きなメリットがあります。一方で、外壁材や塗装に関しては特有の課題もあるため、専門的な知識と技術が求められます。

 

S構造建物の外壁塗装を検討する際は、建物の構造特性、使用されている外壁材、周辺環境、予算など様々な要素を考慮する必要があります。適切な塗装を施すことで、建物の美観を保つだけでなく、耐久性を高め、メンテナンスコストを削減することができます。

 

S構造建物の特徴と外壁材の種類

S構造(鉄骨造)建物の最大の特徴は、軽量で強度が高く、大空間を実現できることです。この構造的特徴により、S造建物には様々な種類の外壁材が使用されています。

 

【主なS構造建物の外壁材】

  1. ALCパネル軽量気泡コンクリートパネル)
    • 軽量で断熱性・耐火性に優れている
    • 厚さ100mm程度の縦張りが一般的
    • 経年劣化により表面のひび割れや剥落の危険性がある
  2. 金属サイディング
    • 軽量で施工性が良い
    • 様々なデザインや色が選択可能
    • アルミ亜鉛合金めっき鋼板などが使用される
  3. 窯業系サイディング
    • デザイン性が高く、多彩な表情を演出できる
    • 耐久性があり、メンテナンスが比較的容易
  4. タイル・石材
    • 高級感があり耐久性に優れる
    • 重量があるため、取付け方法に注意が必要

S構造建物の外壁塗装を行う際は、これらの外壁材の特性を理解し、適切な塗料と工法を選択することが重要です。特にALCパネルは経年劣化によるひび割れや剥落のリスクがあるため、定期的な点検と適切な塗装が必要です。

 

S構造向け外壁塗装の種類と選び方

S構造建物の外壁塗装では、建物の用途や外壁材の種類に合わせて最適な塗料を選択することが重要です。ここでは、S構造建物に適した塗料の種類とその特徴、選び方のポイントを解説します。

 

【S構造建物に適した塗料の種類】

  1. フッ素樹脂塗料
    • 耐候性・耐久性に非常に優れている
    • 15〜20年程度の長期耐久性
    • 高層ビルや商業施設など、頻繁なメンテナンスが困難な建物に最適
    • 価格は高めだが、長期的にはコストパフォーマンスが良い
  2. シリコン樹脂塗料
    • 比較的高い耐候性と耐久性(10〜15年程度)
    • コストパフォーマンスに優れる
    • 一般的なオフィスビルや工場などに適している
  3. ラジカル制御型塗料
    • 紫外線による塗膜劣化を抑制する新しいタイプの塗料
    • 高い耐候性と色褪せ防止効果
    • 「パーフェクトトップ」などの商品がある
  4. 遮熱・断熱塗料
    • 太陽光の熱を反射し、建物内部の温度上昇を抑制
    • 省エネ効果が期待できる
    • 工場や倉庫など大型のS構造建物に効果的

【塗料選びのポイント】

  • 建物の用途と重要度:高層ビルや商業施設など目立つ建物には高耐久の塗料を
  • 予算とライフサイクルコスト:初期コストだけでなく、耐用年数を考慮した総コストで判断
  • 周辺環境:海岸近くなど厳しい環境条件下では耐久性の高い塗料を選択
  • デザイン性:企業イメージに合わせた色彩計画も重要

S構造建物の外壁塗装では、「パーフェクトトップ」のようなラジカル制御型塗料が近年人気を集めています。武蔵野市境の鉄骨造3階建て外壁塗装事例では、このパーフェクトトップ(ND-104)が使用され、チョーキング現象(塗膜が粉状になって剥がれ落ちる現象)を抑制する効果を発揮しています。

 

S構造の外壁塗装における重ね張り工法のメリット

S構造建物の外壁改修において、近年注目されているのが「重ね張り工法」です。これは既存の外壁の上に新たな外壁材を重ねて施工する方法で、特にALCパネルを使用したS構造建物の改修に効果的です。

 

【重ね張り工法の主なメリット】

  1. 維持・管理の負担軽減
    • 法律で定められた10年ごとのタイル全面打診検査が不要になる
    • 定期的な点検やメンテナンス費用を大幅に削減できる
  2. 安全性の向上
    • 経年劣化によって接着力が低下した既存モルタルやタイルの剥落を防止
    • 外壁材の落下事故リスクを大幅に低減
  3. デザイン性の向上
    • 多彩なサイディング材から希望のデザインを選択可能
    • 周辺環境との調和や最新トレンドを取り入れた外観に刷新できる
  4. メンテナンスコストの削減
    • 高機能な外壁材を選択することで、長期間メンテナンスフリーに
    • 塗膜の変色・褪色30年保証に対応した製品もある

ニチハが開発した「MARCシステム」は、独自開発の金属胴縁を使用したS構造(ALC厚100mm)への重ね張り工法です。この工法は新築だけでなく、リフォーム工法としても最適で、RC造・S造の建物に適用可能です。特に縦張りALC(厚さ100mm)の場合、窯業系サイディングや金属サイディングによる重ね張りが可能となっています。

 

重ね張り工法を採用する際の注意点として、建物の高さによって使用可能な外壁仕上げ材や工法が異なります。例えば、窯業系モエンサイディングの場合、横張りでは45m以下の建物に適用可能ですが、縦張りでは16m以下の建物に限定されるなど、制限があります。

 

S構造建物の外壁塗装施工手順と注意点

S構造建物の外壁塗装は、一般的な住宅とは異なる特性や規模を持つため、専門的な知識と技術が必要です。ここでは、S構造建物の外壁塗装における標準的な施工手順と注意すべきポイントを解説します。

 

【施工手順】

  1. 事前調査と診断
    • 外壁の劣化状況の詳細チェック
    • 塗膜の剥がれ、ひび割れ、錆びなどの確認
    • 適切な塗装計画の立案
  2. 足場の設置
    • 建物の高さや形状に合わせた安全な足場設計
    • 周辺環境への配慮(通行人や隣接建物への対策)
  3. 高圧洗浄
    • 外壁の汚れやカビ、古い塗膜の除去
    • S構造特有の細部までしっかり洗浄
  4. 下地処理
    • ひび割れや欠損部の補修
    • 金属部分の錆び止め処理
    • シーリングの打ち替え(必要に応じて)
  5. 下塗り
    • 外壁材に適した下塗り材の選択と塗布
    • 密着性を高めるための丁寧な作業
  6. 中塗り・上塗り
    • 均一な塗膜形成のための適切な塗布
    • 天候条件を考慮した施工スケジュール管理
  7. 検査と引き渡し
    • 塗装ムラや未施工箇所のチェック
    • 清掃と最終確認

【注意点】

  • ALCパネルの場合:目地部分の処理が重要。防水性を確保するため、シーリング材の選定と施工に注意
  • 金属サイディングの場合:錆び止め処理が必須。特に接合部や固定部分は入念に
  • 高層建物の場合:風の影響を考慮した施工計画が必要。強風時は作業を中止
  • 大規模建物の場合:部分的な色ムラが生じないよう、塗料の調合と施工の連続性に注意
  • 営業中の施設の場合:利用者への影響を最小限に抑える工程計画(休業日の活用、区画ごとの施工など)

実際の施工事例として、武蔵野市境の鉄骨造3階建て外壁塗装では、ラジカル制御塗料のパーフェクトトップを使用し、チョーキング現象を抑制する効果を発揮しています。また、シーリングの打ち替えも同時に行うことで、建物の防水性能を向上させています。

 

S構造と他構造の外壁塗装比較と長期メンテナンス計画

S構造(鉄骨造)建物の外壁塗装を検討する際は、他の構造との違いを理解し、長期的なメンテナンス計画を立てることが重要です。ここでは、S構造とRC造、SRC造の外壁塗装の違いと、S構造建物の長期メンテナンス計画について解説します。

 

【構造別の外壁塗装比較】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

構造種別 外壁の特徴 塗装の特徴 メンテナンス周期
S造(鉄骨造) ・ALC、金属サイディング、窯業系サイディングが多い
・軽量で施工性が良い
・熱膨張による動きが大きい
・下地の動きに追従する弾性塗料が適している
・金属部の錆止め処理が重要
8〜12年
RC造(鉄筋コンクリート造) ・コンクリート打ち放しやモルタル仕上げが多い
・重厚で耐火性に優れる
・アルカリ性が強い
・アルカリ対策が必要
・防水性能が重要
10〜15年
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造) ・RC造と同様の外壁特性
・高層建築に多い
・高耐久性塗料が適している
・高所作業の安全対策が重要
10〜15年

【S構造建物の長期メンテナンス計画】
S構造建物の外壁は、適切なメンテナンスを行うことで長期間美観と機能性を維持できます。以下に、S構造建物の外壁における理想的なメンテナンスサイクルを示します。

 

  1. 竣工後5年目:点検
    • 外壁の状態確認
    • シーリング材の劣化チェック
    • 小規模な補修(必要に応じて)
  2. 竣工後8〜10年目:第1回目の塗り替え
    • 全面的な外壁塗装
    • シーリングの部分打ち替え
    • 劣化部分の補修
  3. 竣工後15年目:中間点検
    • 外壁の劣化状況確認
    • 部分的な補修・塗装(必要に応じて)
  4. 竣工後18〜20年目:第2回目の塗り替え
    • 全面的な外壁塗装
    • シーリングの全面打ち替え
    • 外壁材の一部交換(必要に応じて)
  5. 竣工後25〜30年目:大規模改修の検討
    • 外壁材の状態に応じて重ね張り工法の検討
    • 建物全体の耐久性向上対策

S構造建物では、特に外壁材の接合部や金属部分の腐食に注意が必要です。定期的な点検を行い、早期に問題を発見して対処することで、大規模な修繕を回避し、長期的なコスト削減につながります。

 

また、近年では塗膜の変色・褪色30年保証に対応した高機能な製品も登場しており、初期投資は高くなるものの、長期的なメンテナンスコストを大幅に削減できる選択肢も増えています。建物の重要度や予算に応じて、最適なメンテナンス計画を立てることが重要です。

 

S構造建物の外壁塗装は、建物の価値を維持するだけでなく、安全性の確保や省エネルギー効果の