
シーリング材は、外壁材の継ぎ目や隙間を埋めるための充填剤です。建物の気密性や防水性を高める重要な役割を担っています。外壁塗装を行う際には、適切なシーリング材の選択と施工が欠かせません。シーリング材が劣化すると、雨水が建物内部に侵入し、構造体を腐食させる原因となります。
シーリング材は一般的に「コーキング材」とも呼ばれますが、厳密には若干の違いがあります。しかし、現場では同じ意味で使われることが多いため、本記事ではほぼ同義として扱います。
シーリング材の主な役割は以下の通りです。
外壁塗装工事では、古いシーリング材を撤去して新しいものに打ち替える「打ち替え工事」や、既存のシーリング材の上から新たに施工する「増し打ち工事」が行われます。適切なシーリング材の選択と施工は、外壁塗装の仕上がりと耐久性に大きく影響します。
外壁に使用されるシーリング材は、主に以下の6種類に分けられます。それぞれに特徴があり、用途や外壁材との相性によって選び分ける必要があります。
これらのシーリング材は、1成分形と2成分形に分けられます。1成分形はカートリッジ式で専用ガンに装填してそのまま使用できるため、DIYにも適しています。一方、2成分形は基剤と硬化剤を混ぜて使用するため、専門的な技術が必要です。
外壁材の種類によって、最適なシーリング材は異なります。適切なシーリング材を選ぶことで、接着性や耐久性が向上し、外壁の寿命を延ばすことができます。
コンクリート・モルタル外壁の場合
コンクリートやモルタルの外壁には、密着性に優れたウレタン系シーリング材が適しています。コンクリートは硬い素材のため、シーリング材の接着力が重要です。ポリサルファイド系も安定した接着性を示すため、選択肢の一つとなります。
ALC(軽量気泡コンクリート)板の場合
ALC板はコンクリートを素材としているため、ウレタン系シーリング材が最適です。変成シリコン系では密着しにくく剥がれやすくなる可能性があります。ALC板の継ぎ目にはアクリル系シーリング材も使用されますが、耐久性の面でウレタン系に劣ります。
サイディングボードの場合
窯業系サイディングには、変成シリコン系シーリング材が適しています。特にノンブリードタイプの変成シリコン系は、塗装面に汚れが浮き出ないため、美観を保つことができます。セメダイン社の「POSシール」などは、サイディングとの接着性に優れた製品です。
金属系外壁材の場合
金属系の外壁材には、耐熱性と耐候性に優れたシリコーン系シーリング材が適しています。金属は熱による膨張・収縮が大きいため、追従性の高いシーリング材が必要です。
外壁材との相性を表にまとめると以下のようになります。
外壁材の種類 | 最適なシーリング材 | 特徴 |
---|---|---|
コンクリート・モルタル | ウレタン系、ポリサルファイド系 | 密着性が高く、硬い素材に適している |
ALC板 | ウレタン系 | コンクリート素材に密着しやすい |
サイディングボード | 変成シリコン系 | 塗装適性が高く、美観を保てる |
金属系外壁材 | シリコーン系 | 耐熱性が高く、膨張・収縮に対応できる |
外壁塗装を行う際には、シーリング材と塗料の相性も重要なポイントです。シーリング材の種類によっては、塗料が付着しにくいものもあります。
塗装できるシーリング材
塗装が難しいシーリング材
外壁塗装の工程では、シーリング材の打ち替えや増し打ちを行った後、シーリング材が十分に硬化してから塗装を行います。シーリング材の硬化期間は種類によって異なりますが、一般的に1〜7日程度必要です。
塗装前にシーリング材が十分に硬化していないと、以下のような問題が発生する可能性があります。
また、シーリング材の上に塗装を行う場合、プライマー処理が必要なケースもあります。特に変成シリコーン系やウレタン系シーリング材では、専用のプライマーを使用することで塗料の密着性が向上します。
シーリング材の色と塗装色の関係も考慮すべきポイントです。シーリング材自体にカラーバリエーションがある場合は、塗装色に近い色を選ぶことで、万が一塗膜が剥がれた場合でも目立ちにくくなります。
シーリング材の耐久性は、種類や施工環境、メンテナンス状況によって大きく異なります。一般的な耐用年数は以下の通りです。
しかし、これらの数値は理想的な環境での目安であり、実際には様々な要因によって短くなることがあります。シーリング材の劣化を早める主な要因は以下の通りです。
特にウレタン系シーリング材は紫外線に弱く、直射日光を受ける南面や西面では劣化が早まります。紫外線に強いシリコーン系や変成シリコーン系を選ぶか、上から塗装して保護する必要があります。
外壁材は温度変化によって膨張・収縮します。この動きに追従できないシーリング材は、ひび割れや剥離を起こしやすくなります。特に金属系外壁材では、熱膨張係数が大きいため注意が必要です。
常に湿気にさらされる環境では、シーリング材の劣化が早まります。特に高温多湿の環境では、ウレタン系やポリサルファイド系シーリング材が発泡する恐れがあります。
シーリング材の性能を最大限に発揮するためには、適切な施工が不可欠です。下地処理が不十分だったり、シーリング材の厚みや幅が不適切だったりすると、早期劣化の原因となります。
シーリング材の劣化サインとしては、以下のような症状が挙げられます。
これらの症状が見られた場合は、早めの打ち替えや補修が必要です。外壁塗装のタイミングでシーリング材のメンテナンスも一緒に行うことで、建物の寿命を延ばすことができます。
シーリング材の施工は、専門的な技術を要する作業ですが、小規模な補修であればDIYで行うことも可能です。ここでは、シーリング材の基本的な施工方法とDIYで行う際のポイントを解説します。
シーリング材の施工手順
DIYで行う際のポイント
DIYでシーリング材の施工を行う場合は、1成分形のシーリング材を選ぶことをおすすめします。1成分形はカートリッジ式で専用ガンに装填してそのまま使用できるため、初心者でも比較的扱いやすいです。
DIYに適したシーリング材の例。
一方、2成分形のシーリング材は基剤と硬化剤を正確な比率で混合する必要があり、専門的な知識と技術が必要です。DIYでの使用は避けたほうが無難です。
DIYで施工する際の注意点。
ただし、大規模な外壁のシーリング工事は、足場の設置や専門的な技術が必要となるため、専門業者に依頼することをおすすめします。特に高所作業は危険を伴うため、安全面を考慮して判断しましょう。
DIYで対応できる範囲を超える場合は、複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが重要です。一括見積もりサイトを利用すれば、一度の入力で複数の業者から提案を受けることができます。
シーリング材に関するトラブルは、外壁