
ビニルエステル樹脂の最も大きなデメリットは、エポキシ樹脂と比較して硬化収縮が大きい点です。この特性により、硬化過程で材料内部に応力が発生し、基材から剥離したり、塗膜にクラックが入るリスクが高まります 。
参考)https://www.tukigata.co.jp/pages/126/
特に大面積の施工や厚い塗膜を形成する場合、硬化収縮によって以下の問題が発生する可能性があります。
建築業では、特にコンクリート基材へのライニング施工時にこの問題が顕著に現れるため、適切な下地処理と薄膜積層による対策が必要となります 。
参考)https://www.dic-global.com/ja/products/vinylester/
ビニルエステル樹脂は高温時の可使時間が短いという大きな欠点があります。この特性により、夏季の施工や高温環境下での作業では、以下の問題が発生します :
実際の現場では、気温25℃を超える環境では可使時間が半分以下に短縮されることもあり、作業計画の見直しや早朝・夜間作業を余儀なくされる場合があります。これは人件費の増加や工期延長の原因となり、プロジェクト全体のコスト増につながります 。
参考)耐ガソリンビニルエステル樹脂の耐熱温度/粘度
ビニルエステル樹脂は特定の条件下で硬化不良を起こしやすいという問題があります。特に以下の状況で硬化障害が発生します。
エポキシ樹脂との積層問題。
エポキシ樹脂の上に直接ビニルエステル樹脂を塗布すると、接着界面で硬化不良を起こします。これは残留アミンによって硬化助剤のコバルトイオンが捕捉されるためです 。
参考)▲層間剥離●
不純物による硬化阻害。
水、タール、アミンなどの不純物が混入すると、硬化反応が阻害されます。特に湿度が高い環境や、他の樹脂との併用時に注意が必要です 。
参考)樹脂によるライニングで気をつけるべきポイント:プロが教える注…
現場では、適切な材料管理と施工環境の制御が重要となり、これらの対策費用が追加コストとして発生します 。
参考)不飽和ポリエステル向け硬化剤の硬化不良発生とその対応 - 株…
ビニルエステル樹脂塗膜は水による白化現象という特有の問題があります。これは塗膜表層での硬化障害により、水と接触した部分が白く変色する現象です 。
参考)https://patents.google.com/patent/JP2012187542A/ja
この問題は以下の状況で発生します。
変色自体は塗膜の耐久性に直接影響しませんが、美観を損なうため、特に意匠性を重視する建築用途では大きなデメリットとなります。対策として表面研磨や追加コーティングが必要となり、メンテナンスコストの増加につながります 。
ビニルエステル樹脂は材料費が高価であることが大きな経済的デメリットです。不飽和ポリエステル樹脂と比較すると、原材料価格が約40円/kg以上高く設定されています 。
参考)https://www.dic-global.com/ja/news/2021/products/20210817133050.html
コスト増の要因。
さらに、原油価格の変動による影響を受けやすく、2021年から2022年にかけて複数回の価格改定が実施されており、建築プロジェクトの予算管理を困難にしています。特に大規模な防食ライニング工事では、材料費の増加が工事費全体に大きく影響するため、十分な検討が必要です 。
参考)不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂の価格改定につ…