
防塵マスクの国家検定規格は、労働安全衛生法第42条に基づいて定められており、建設現場での安全確保に不可欠な基準となっています。この規格システムは、まず形状によって使い捨て式(D)と取替え式(R)の2つに大きく分類されます。
使い捨て式防塵マスクは、ろ過材と面体が一体となった構造で、一般的に半面形の形状を持ちます。一方、取替え式防塵マスクは、ろ過材を交換できる構造で、全面形と半面形の両方があります。
さらに、粒子捕集効率によって3段階に分類され、最も捕集効率の高いものを区分3(99.9%以上)、中間を区分2(95.0%以上)、最も低いものを区分1(80.0%以上)としています。
試験粒子の違いによっても分類され、固体粒子である塩化ナトリウム(NaCl)を用いる場合はS、液体粒子であるフタル酸ジオクチル(DOP)を用いる場合はLと表記されます。
防塵マスクの12種類の分類は、以下のような組み合わせで構成されています。
使い捨て式防塵マスク(Dシリーズ):
液体粒子対応使い捨て式:
取替え式防塵マスク(Rシリーズ):
実際の建設現場では、コンクリート粉じんや石材切断時の粉じんなど、固体粒子が主となるため、DSシリーズまたはRSシリーズが多く使用されています。しかし、塗装作業や防水工事など、溶剤系の液体粒子が発生する作業では、DLまたはRLシリーズの選択が必要です。
厚生労働省の規格では、作業内容に応じて使用すべき防塵マスクの種類が明確に定められています。
最高レベル(区分3必須)の作業:
→ 使用規格:RS3、RL3(オイルミストがある場合)
中レベル(区分2以上)の作業:
→ 使用規格:DS2、DL2、RS2、RL2またはそれ以上
一般レベル(区分1以上)の作業:
→ 使用規格:DS1、DL1、RS1、RL1またはそれ以上
建設現場でよく見落とされがちなのが、溶接作業時の金属ヒューム対策です。アーク溶接や酸素切断では、必ずDS2以上の規格が必要となります。
国家検定規格では、防塵マスクの材料と強度について詳細な規定が設けられています。
材料要件:
強度試験要件:
構造要件:
これらの要件は、建設現場での過酷な使用環境を考慮して設定されており、製品選定時の重要な判断基準となります。特に、高温多湿な環境や振動の多い作業では、材料の耐久性がより重要になります。
国家検定合格品を見分ける方法として、製品には必ず検定合格標章が表示されています。この標章には以下の情報が記載されています。
建設現場でよくある間違った使用例:
使用期限と保管方法:
使い捨て式防塵マスクには使用期限があり、一般的に製造から3-5年が目安です。高温多湿な場所での保管は材料劣化を早めるため、涼しく乾燥した場所での保管が重要です。
密着性チェックの重要性:
取替え式防塵マスクでは、着用者自身が顔面と面体との密着性を随時容易に検査できる機能が規格で義務付けられています。これは「陽圧テスト」や「陰圧テスト」と呼ばれる方法で行います。
防塵マスクの効果は、規格の性能だけでなく、正しい着用と適切な保守管理によって初めて発揮されることを理解し、建設現場での安全確保に役立てることが重要です。