

直角定規(スコヤ系)は、直角の検査に寄せた構造で、内角・外角どちらも直角を当てて確認しやすいのが強みです。特に「台座(厚みのある土台)」があるタイプは、材料の基準面に押し当てたときに姿勢が決まり、直角の再現性が高くなります。実際、完全スコヤは直角精度が高く、さしがねの直角が狂っていないかの確認用にもなる、という位置づけで説明されています。
一方で、さしがねは薄く作られているため、落下や曲げで変形しやすく、直角の“基準器”として常用するとリスクが上がります。さらに、材料に乗せたときに「引っ掛かり」が弱く、保持の仕方で簡単に角度が逃げるため、同じ人が同じ作業をしても微妙に線位置が変わることがあります。現場では、直角定規で直角を“検査”し、さしがねで“けがき・寸法取り”を回すと、トータルの手戻りが減らしやすいです。
直角定規(完全スコヤ等)での墨付けは、長手を天面に置き、台座を側面に「ピタッと押し当てる」だけで直角の線が引けます。台座が材料に密着するので、鉛筆やケガキ針を当てる位置が安定し、狙った位置に線が入りやすいのがメリットです。角材の一周墨付け(四面に回す)も、直角定規で線を“つなぐ”ことで、切断のガイド精度を上げられると説明されています。
さしがねの墨付けは、基本的に「長手を材料に引っ掛けて」使います。ところが薄い板や、端部が決まっていない材料だと引っ掛けが甘くなり、妻手側が少し浮いて鉛筆がブレやすい、という失敗が起きやすいです。対策として、長手の中央付近を持って安定させる、薄板では“2点に引っ掛かる”ようにしならせる、など具体的なコツが紹介されています。
さしがねの「意外に知られていない強み」は、裏面の特殊目盛(角目・丸目)です。角目はミリ単位の√2倍目盛、丸目は円周率(π)倍目盛として説明されており、計算を挟まずに45度絡みの取り合い寸法や円周の見当を出せる場面があります。例えば角目は、45度で当たる部材の取り付き長さを“いちいち計算せず”墨付けする用途で紹介され、丸目は直径から円周を即座に読める用途が挙げられています。
直角定規(スコヤ)にも目盛が付くタイプはありますが、基本は「直角を正しく当てる」ための道具で、角目・丸目のような“計算を省く目盛文化”は主役ではありません。つまり、直角定規は精度と検査、さしがねは多機能と作業スピードを取りに行く設計思想だと理解すると、道具選びが整理しやすくなります。
さしがねで多い失敗は、「基準線に対して直角を出したつもりが、材料の端基準がズレていて直角が崩れる」パターンです。特に、材料が完全に平行(左右の巾が同じ)でない場合、当て方を変えると線が直角になっていない可能性がある、という注意点が具体例つきで解説されています。対策としては、常に基準線に長手を引っ掛けるクセをつけ、反対側で線を引くときは裏返して同じ基準の取り方を維持する、という考え方が有効です。
直角定規側の失敗は「道具が原因」より「当てる面が基準になっていない」ことが多いです。例えば、材料の側面が荒れていたり、反り・ねじれがある無垢材だと、直角定規を当てても“隙間が出る=加工側が歪んでいる”だけで、道具の問題ではありません。ここを切り分けるためにも、直角定規は「直角の検査具」として持っておく価値が高いです。
さしがねは、単なるL字定規ではなく、木造の“勾配”を現場で素早く再現する道具として進化してきました。勾配は「水平距離と垂直距離の比」で表す(tanに相当)という整理がされており、屋根や筋交いの端部カット線など、角度を“度数”で扱わず比で扱う文化と相性が良いのがポイントです。AとBの目盛の比率を勾配(例:10:4)に合わせ、妻手側で墨付けする、という具体手順も説明されています。
そして、この発想を突き詰めた先にあるのが「規矩術」という領域です。規矩術は、さしがねを使った伝統建築の作図法として言及されており、単純な直角確認を超えて、取り合い・勾配・接合の“解き方”を道具に寄せていく考え方が含まれます。直角定規が「正しい90°を出す」方向で完成度を上げてきたのに対し、さしがねは「90°以外も、現場で間違えず速く出す」方向で成熟した、と捉えると腑に落ちやすいはずです。
直角定規とさしがねをどちらか一方に絞るなら、用途で決めるのが安全です。
直角定規(スコヤ)とさしがねの違いの参考:直角精度・台座構造・墨付けの当て方
https://www.diyfactory.jp/studiy/note/handtools020/
さしがねの角目・丸目、勾配、等分割、規矩術の入口までまとまっている参考
https://diy-ie.com/ch-sasigane.html