

DRBFMは、いわゆる「成功していた設計」からの変更点・変化点に狙いを定め、その変更が引き起こす“新規問題”を未然に潰す思想です。
ここで重要なのは、変更点が「意図して設計や仕様を変えた点」で、変化点が「使用環境など周辺条件が変わった点」という切り分けです。
建築の文脈に置き換えると、例えば「仕上げ材のメーカー変更」「納まり寸法の微修正」「施工手順の入れ替え」は変更点で、「沿岸地域への適用」「居住者の使い方の変化」「温湿度条件の厳しさ」は変化点になり得ます。
一方FMEAは、機能や構成要素を起点に、起こり得る故障モードを体系的に洗い出し、影響を評価して対策優先度を決める考え方です。
参考)DRBFMとFMEAの違いとは?設計リスクを防ぐ手法を徹底解…
つまり、DRBFMは「変わったから心配」、FMEAは「全体としてどこが危ないか」という入り口が違うため、同じ“未然防止”でも使いどころがズレます。
FMEAでは、事前に予測される故障モードの中から重要度が高いものを抽出して対策する、という流れが基本です。
重要度の考え方は、発生頻度・影響度・検知難易度を掛け合わせる形で説明されることが多く、数値化して優先順位を付けやすいのが長所です。
建築で言うと、同じ「漏水」でも、発生しやすさ(施工ばらつきの大きさ)、影響度(躯体劣化・住戸への被害)、検知難易度(竣工検査で見つかるか)を分けると、対策の順番を議論しやすくなります。
対してDRBFMは、数値の優先順位付けよりも「変更点・変化点の周りで、設計者の思い込みや見落としがないか」を関係者で徹底的に議論して掘る色合いが強い、と整理できます。
参考)DRBFMとは?正しい進め方やFMEAとの違いを解説
ここが分かっていないと、DRBFMを“点検会議”のように扱ってしまい、肝心の心配点の深掘りが弱くなるのが典型的な失敗です。
DRBFMは、変更点・変化点を一覧化したワークシートを起点に、心配点(故障モード)→起こり得るケース→顧客への影響→設計の打ち手→推奨対応→結果、のように“議論が流れる器”を作るのが特徴です。
紹介されているワークシート項目としては、変更点(変化点)と目的、変更に関わる心配点、心配点が起こり得るケース、顧客への影響、心配点を除くための設計、推奨する対応、対応の結果、といった構成が挙げられます。
つまり「会議の場で良い議論を起こすための前処理」がDRBFMの半分で、残り半分が部門横断の設計レビュー(議論)です。
また、DRBFMのDRは単なる「設計審査」より「設計の考察・議論」と捉えた方が実態に近い、という説明があり、ここが運用の肝になります。
建築の現場でありがちな落とし穴は、設計・施工・調達・検査の情報が分断され、変更点が誰かの手元で止まって“周辺影響”がレビューされないことなので、ワークシートは「一元管理」と「共有」に効きます。
使い分けの大枠は、「全体のリスク把握はFMEA」「設計変更や条件変更の局面はDRBFM」と考えると整理しやすいです。
Koto Onlineの説明でも、FMEAは製品やプロセス全体での問題の未然防止、DRBFMは変更点・変化点に着目した変更起因問題の未然防止、という目的の差が明確に示されています。
また、DRBFMは設計ノウハウの蓄積にもつながる、という点が挙げられており、単発のリスク潰しで終わらせない設計組織の運用に向きます。
建築従事者の実務に合わせると、次のように「いつ・誰が・何を入力するか」を決めると形骸化しづらくなります。
特に、変更点が増えるプロジェクト(VE、納期短縮、代替材、法規・指針改定、現場条件差)ではDRBFMの“変更点ドリブン”が効きやすいです。
| 観点 | FMEA | DRBFM |
|---|---|---|
| スタート地点 | 全体の故障モード洗い出し | 変更点・変化点の明確化 |
| 強み | 重要度で優先順位を付けやすい | 見落としを議論で潰しやすい |
| 向く局面 | 新規・全体設計、プロセス設計の基礎固め | 仕様変更、代替材、条件変更、改修の局面 |
検索上位の記事では「変更点に着目」「議論が重要」という正攻法が多い一方で、現場での盲点になりがちなのが「変更点の“粒度”がバラバラ」なままDRBFMを始めてしまうことです。
例えば「外装材を変更」とだけ書くと、材料特性・留め付け・下地・防水層・熱伸縮・施工手順・検査方法まで影響範囲が広すぎて、結局“広く浅い”議論になりやすく、DRBFMの良さが出ません。
逆に粒度を「材料の変更」「固定方法の変更」「目地の変更」「養生条件の変更」のように分け、各変更点ごとに“心配点→起こり得るケース→顧客への影響”を回すと、議論の深さが担保されます。
もう一つの落とし穴は、FMEAが「過去の事故・不良の記録帳」になってしまい、重点化や実施時期がズレて効果が出ない、という指摘です。
ここから逆算すると、FMEAは“学習の記録”より“意思決定の道具”として運用し、変更が入った瞬間にDRBFMへ切り替えて議論を濃くする、という連携が現実的です。
参考)DRBFMとは?FMEAの違いと設計リスクを防ぐ手法を解説
参考:DRBFMの定義・手順・ワークシート項目(変更点・変化点、重要度計算、DRは議論)
DRBFMとは?正しい進め方やFMEAとの違いを解説
参考:DRBFMはFMEAとデザインレビューを複合し、変化点に注目し「なぜなぜ」を繰り返す(形骸化の指摘も含む)
https://www.monodukuri.com/gihou/article/1372