

塩化アルミニウムの化学式がAlCl3になる最大の理由は、「電荷(価数)のつり合い」で最小の整数比を取るからです。
アルミニウムは典型的に3価(Al3+)として振る舞い、塩化物イオンは1価(Cl−)なので、電気的に中性へ戻すにはCl−が3個必要になり、結果としてAlCl3が最小単位になります。
ここで重要なのは、「Cl3という塩素が存在する」という意味ではなく、Al1個に対しClが3個結び付いた“化合物の組成”を表している点です。
建築従事者の視点で言い換えると、化学式の「3」は暗記のための飾りではなく、薬品の反応量・中和量・腐食リスクの見積もりに直結する“設計値の入口”です。
参考)塩化アルミニウム - Wikipedia
たとえば、酸(塩酸)と金属アルミの反応で塩化アルミニウムができる反応式は、係数をそろえると 2Al + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2 となり、「Clが3個必要」という関係が反応式にも現れます。
高校化学の範囲で最も誤解が少ない説明は、「Alは3価、Clは1価なので、電荷が打ち消し合う比が1:3」という整理です。
この“価数で組成が決まる”という考え方は、塩化アルミニウムだけでなく、多くの無機塩(例:Al(OH)3のような水酸化物)にも共通します。
ただし現場で注意したいのは、溶液中では単純な「AlCl3分子」がそのまま漂っているとは限らず、水和・錯体化・加水分解で化学種が変わり得る点です。
つまり、帳票やSDSに「AlCl3」と書かれていても、実際の水環境では“Al3+を中心に水が取り巻く形”へ寄っていき、酸性化や沈殿(Al(OH)3)へ連鎖します。
このギャップを埋めると、「なぜ化学式はAlCl3なのに、現場では酸として暴れるのか?」が理解しやすくなります。
塩化アルミニウムには無水物と6水和物があり、化学式の見た目が似ていても性質が大きく変わるのが落とし穴です。
6水和物は AlCl3・6H2O と表され、アルミニウムに水分子が6個配位した錯イオンと塩化物イオンからなる、より“イオン性の強い”姿として説明されています。
そして水に溶けると、部分的に水酸化アルミニウムと塩酸へ加水分解する(AlCl3・6H2O ⇄ Al(OH)3 + 3HCl + 3H2O)ため、溶液は酸性に寄りやすくなります。
ここが建築で実害に直結します。
酸性化=腐食性の立ち上がりで、金属部材・設備配管・仮設タンクの材料選定を間違えると、短期でも漏えい・閉塞・劣化の引き金になります。
また、無水塩化アルミニウムは湿気を含む空気中で白煙を発することがある、と説明されており、これは“水と反応して塩化水素を生じる方向へ進む”性質を示すサインです。
粉体や固体の取り扱いを「ただの塩」と同じ感覚で行うと、保管環境の湿度や開放時間がそのまま危険度に変わるので、現場では「水が敵」として扱う方が安全です。
建築・土木の現場で「塩化アルミニウム系」に触れる機会が多いのは、水処理(濁水処理、排水処理、循環水の清澄化)で凝集剤として使われる流れがあるためです。
代表例のPAC(ポリ塩化アルミニウム)は、一般式 Al2(OH)nCl6-nm で表され、水溶液中で多核錯体(ポリマー)を作り、濁質の負電荷を電気的中和してフロック形成を進める、と説明されています。
さらにPACは凝集pH範囲が広く「通常pH 6~8」で使用可能、という実務に近い目安が示されています。
このセクションでの「化学式 なぜ」の答えは、暗記ではなく運転管理に変換できます。
参考:PACの性質・適性凝集pH・腐食性・材質選定・混合禁止(取り扱い注意)がまとまっているリンク
ポリ塩化アルミニウム(PAC)
参考:塩化アルミニウムの無水物・6水和物・加水分解(HCl発生)・反応式の根拠を確認できるリンク
塩化アルミニウム - Wikipedia