
不動産クラウドファンディングが儲からないと言われる最大の理由は、元本保証がないことです。投資家の出資金は株式投資やREITと同様に元本保証されておらず、想定通りの賃料収入や売却益を得られなければ、想定利回りより分配金が下がったり、最悪の場合は元本割れを起こす可能性があります。
元本割れが発生する主な要因。
特に海外不動産を対象とするファンドでは、政治情勢や社会情勢の変化により急激に価値が下がる場合もあるため、投資する際は十分な注意が必要です。
優先劣後方式による投資家保護の仕組みがあるものの、劣後出資の割合はファンドによって異なり、大きな損失が発生した場合は投資家の元本も保護されない可能性があります。
不動産クラウドファンディングが「儲からない」と言われる理由の一つに、レバレッジ効果が得られない点があります。現物不動産投資では金融機関の融資を活用して自己資金以上の不動産を購入し、大きな資産を運用する「レバレッジ効果」が得られますが、不動産クラウドファンディングでは自己資金のみで出資するため、このレバレッジ効果は期待できません。
レバレッジ効果の比較。
投資方法 | 自己資金 | 融資額 | 総投資額 | レバレッジ倍率 |
---|---|---|---|---|
現物不動産投資 | 500万円 | 2,000万円 | 2,500万円 | 5倍 |
不動産クラウドファンディング | 500万円 | 0円 | 500万円 | 1倍 |
現物不動産投資のように借入を活用して投資規模を広げ、収益を数倍にすることはできません。出資金のみで運用されるため、株式やFX、仮想通貨のように2倍・3倍といった大きなリターンは期待できず、利回りは高くても10%前後が一般的です。
短期間で一気に儲けたい投資家には不向きですが、年3〜8%の安定した収益をコツコツ得る長期運用向きの投資をしたい方には適した投資手法と言えるでしょう。
不動産クラウドファンディングで投資家が直面する現実的な問題として、人気案件の競争率の高さがあります。多くのファンドが抽選制を採用しており、投資したい案件があっても必ずしも投資できるとは限りません。
抽選制度の実態。
この問題により、投資家は「投資したくても投資できない」状況に陥りやすく、結果として期待していた収益を得られないケースが多発しています。コンスタントに運用し続けることにハードルがあるため、長期的な資産形成計画が立てにくいのが現実です。
さらに、抽選に外れ続けることで投資資金が現金のまま眠ってしまい、機会損失が拡大する問題も指摘されています。
不動産クラウドファンディングには税制上の優遇措置がないという大きなデメリットがあります。現物不動産投資で利用できる減価償却費や各種経費の計上、損益通算などの税制メリットは一切適用されません。
税制面での不利な点。
また、不動産クラウドファンディングでは振込手数料や各種手数料が投資家負担となることが多く、これらの手数料が利益を圧迫する「手数料負け」の事態に陥るケースも報告されています。
手数料の例。
利回りが低い不動産クラウドファンディングにおいて、これらの手数料負担は投資収益に大きな影響を与える要因となっています。
不動産クラウドファンディングで見落とされがちなリスクとして、運営事業者の倒産リスクがあります。分別管理が行われていても、運営事業者が破綻した場合は投資資金の回収が困難になる可能性があります。
事業者選定で確認すべきポイント。
実際に、不動産クラウドファンディング業界では運営事業者の経営悪化により、投資家への分配が遅延したり、最悪の場合は投資資金の回収ができなくなった事例も報告されています。
さらに、中途解約ができないという制約も大きなリスク要因です。原則として運用期間中の解約は認められておらず、まとまった資金が必要になった際に換金できない流動性リスクを抱えています。
業界の透明性向上のため、投資家は事業者の経営状況を定期的にチェックし、複数の事業者に分散投資することでリスクを軽減する必要があります。
不動産クラウドファンディングの運用期間は通常1〜3年程度ですが、この期間中は基本的に資金が拘束されるため、生活資金や緊急時の備えとは別に、余裕資金での投資が前提となります。
国土交通省の不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインでは、申込みから8日間のクーリングオフ期間のみ解約が可能とされていますが、それ以降は運用終了まで解約できないのが一般的です。