
2025年4月21日から、所有権の保存登記や移転登記など不動産の権利に関する登記申請を行う際、「検索用情報」の申出が義務化されました。検索用情報とは、所有者を正確に特定するための情報で、氏名のフリガナ、生年月日、メールアドレスの3点が新たに必要となります。この制度は、2026年4月1日から始まる住所変更登記義務化の負担軽減策として導入されたもので、検索用情報を申し出ておけば、法務局が住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)を通じて住所変更を確認し、職権で登記を更新する「スマート変更登記」が利用可能になります。
参考)不動産登記法が改正! 2025年から始まる検索用情報の申出義…
建築業に従事する方にとって、土地の売買や建物の所有権移転など、不動産取引に関わる機会は多くあります。今後は全ての所有権移転登記において、これらの情報提供が必須となるため、契約時に顧客から正確な情報を取得する体制整備が求められます。メールアドレスについては、代理人による申請の場合でも登記名義人本人のみが利用するものを記載する必要があり、メールアドレスがない場合は「なし」と記載することも可能です。
参考)不動産登記法改正とは?相続登記の義務化などの新ルールをわかり…
法務省|検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)
検索用情報制度の詳細な手続き方法や申出書の記載例が掲載されている法務省の公式ページです。
2024年4月1日には相続登記の義務化も既に施行されており、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行わなければなりません。正当な理由なく義務を怠った場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。建築業界では、古い建物の解体や建て替え、土地の開発案件において、所有者不明土地に直面するケースが少なくありません。
参考)https://www.homes.co.jp/cont/press/opinion/opinion_00329/
所有者不明土地は全国で九州の面積に匹敵するとも言われ、公共事業や復興事業の妨げとなってきました。相続登記義務化により、今後は相続発生時に必ず登記が行われるため、建築プロジェクトにおける土地所有者の特定作業が円滑化されることが期待されます。また、施行日より前に発生した相続にも遡及適用されるため、過去に相続した不動産を放置している場合も、2027年3月31日までに登記する必要があります。
参考)法務省:住所等変更登記の義務化特設ページ
2026年4月1日からは、不動産の所有者は氏名や住所に変更があった場合、変更日から2年以内に変更登記を申請することが義務付けられます。正当な理由なくこの義務を怠ると、5万円以下の過料が科される可能性があります。ただし、登記官が義務違反を把握しても直ちに過料が科されるわけではなく、相当の期間を定めて履行を催告し、それでも対応がない場合に限られます。
参考)法務省:住所等変更登記の義務化について
建築業従事者の場合、事務所移転や法人の本店所在地変更などで住所が変わることがあります。従来は任意だった住所変更登記が義務化されることで、定期的な登記状況の確認が必要となります。正当な理由としては、検索用情報を申し出ているが職権変更登記がまだ行われていない場合、行政区画の変更による住所変更、重病等の事情がある場合、DV被害で避難している場合、経済的困窮により費用負担ができない場合などが認められます。
参考)【2026年4月義務化】住所変更登記の完全ガイド:手続き・期…
法務省|住所等変更登記の義務化について
住所変更登記義務化の詳細、過料の運用方針、正当な理由の具体例などが記載されている法務省の公式情報です。
スマート変更登記は、所有者が検索用情報を申し出ることで、法務局が住基ネットを通じて住所変更を自動的に検索し、職権で登記を更新する画期的な制度です。この制度を利用すれば、住所変更のたびに登記申請を行う手間が省け、2026年4月以降の住所変更登記義務化による負担が大幅に軽減されます。
参考)2025年4月から始まる登記の新ルール:何が変わるのか?|お…
具体的には、2025年4月21日以降に所有権移転登記等を行う際に検索用情報を申し出るか、既に不動産を所有している方は別途単独で検索用情報の申出手続きを行うことができます。申出手続きは登録免許税などの費用がかからず、Webブラウザ上で完結する「かんたん登記申請」が利用可能で、押印や電子署名も不要です。建築業で複数の不動産を所有している場合、管轄の異なる複数の不動産についても、いずれかの管轄登記所にまとめて申出ができる点も便利です。
参考)【令和7年4月21日より】検索用情報が所有権移転登記申請の際…
建築業における実務への影響は多岐にわたります。まず、顧客との契約時に検索用情報(氏名フリガナ、生年月日、メールアドレス)を正確に取得する必要があり、契約書類や情報管理システムの見直しが求められます。特にメールアドレスについては、本人のみが利用するものを取得する必要があり、メールアドレスを持たない高齢者への対応も考慮しなければなりません。
参考)しほサーチ 令和7年4月21日から「検索用情報の申出」が始ま…
また、建設プロジェクトにおける用地取得では、相続登記義務化により所有者特定が容易になる一方、過去に相続が発生した土地では2027年3月31日までの経過措置期間中に相続人が登記手続きを行う可能性があり、一時的に権利関係の変動が増加することも予想されます。さらに、建築会社自身が所有する事務所や資材置き場などの不動産について、2025年4月21日時点で既に所有している物件については、別途検索用情報の申出手続きを行っておくことで、将来の住所変更登記の手間を削減できます。これらの新制度に対応するため、社内研修の実施や司法書士等の専門家との連携強化が重要となります。
参考)【2026年施行】住所変更登記の義務化と検索用情報届出の重要…