複層ガラスの特徴と断熱効果・省エネ性能

複層ガラスの特徴と断熱効果・省エネ性能

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複層ガラスの特徴と効果

複層ガラスの基本情報
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構造

2枚以上のガラスの間に空気層を持つ二重構造

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主な効果

断熱性・結露防止・防音性の向上

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普及率

新築戸建住宅では97%以上(2019年時点)

複層ガラスの基本構造と仕組み

複層ガラスは、2枚以上のガラスの間に空気層を挟んだ二重構造のガラスです。一般的には、2枚のガラスの間に約6〜16mmの空気層を設けた構造となっています。この空気層が断熱効果を生み出す重要な役割を果たしています。

 

複層ガラスの構造を詳しく見ていくと、以下の要素から成り立っています。

  1. 外側ガラス:外気に接する側のガラス
  2. 中空層(空気層):乾燥空気が封入された空間
  3. 内側ガラス:室内側のガラス
  4. スペーサー:ガラス間の距離を一定に保つ金属または樹脂製の部材
  5. シーリング材:ガラスとスペーサーを密封する材料

この構造の最大の特徴は、中空層に封入された乾燥空気です。空気は熱を伝えにくい性質を持っているため、この層が外部と室内の熱の移動を抑制します。スペーサー部分には乾燥剤が入っており、中空層内の湿度を低く保ち、結露を防止する役割も果たしています。

 

製造工程としては、2枚のガラスの周辺部にスペーサーをセットし、封着剤で周囲を密封した後、乾燥・養生を経て完成します。この工程により、気密性の高い二重構造が実現されています。

 

複層ガラスの断熱性能と熱貫流率

複層ガラスの最大の特徴は、優れた断熱性能です。一般的な単板ガラス(1枚ガラス)と比較すると、複層ガラスの断熱性能は約1.7〜2倍も高いとされています。

 

断熱性能を数値で表す指標として「熱貫流率(U値)」があります。これは1時間あたり、ガラス1㎡を通過する熱量をワットで表したもので、単位は「W/(㎡・K)」で表されます。この数値が小さいほど断熱性に優れていることを意味します。

 

一般的な熱貫流率の比較。

  • 単板ガラス(3mm):約6.0 W/(㎡・K)
  • 複層ガラス(3mm+空気層12mm+3mm):約2.7 W/(㎡・K)
  • Low-E複層ガラス:約1.4 W/(㎡・K)

この断熱性能の高さにより、複層ガラスには以下のような効果があります。

  1. 冬場の暖房効率向上:室内の暖かい空気が窓から逃げるのを防ぎ、暖房効率を向上させます。
  2. 夏場の冷房効率向上:外部の熱が室内に入るのを抑制し、冷房効率を向上させます。
  3. 結露防止効果:ガラス表面の温度差が小さくなるため、結露が発生しにくくなります。

特に結露防止効果は、室内環境の快適性だけでなく、カビやダニの発生防止にも寄与するため、健康面でも重要な利点となっています。室内温度20℃、湿度60%の条件下では、単板ガラスは外気温8℃で結露が始まるのに対し、Low-E複層ガラスでは外気温-22℃まで結露しないというデータもあります。

 

複層ガラスとLow-E複層ガラスの違い

複層ガラスの性能をさらに向上させたものが「Low-E複層ガラス」です。Low-Eとは「Low Emissivity(低放射)」の略で、ガラスの表面に特殊な金属膜(Low-E膜)をコーティングしたものを指します。

 

Low-E複層ガラスには主に以下の2種類があります。

  1. 断熱型Low-E複層ガラス:室内側ガラスに金属膜をコーティングし、室内の暖房熱を反射して外に逃がさない効果があります。冬の寒さが厳しい地域に適しています。
  2. 遮熱型Low-E複層ガラス:室外側ガラスに金属膜をコーティングし、太陽熱を反射して室内への熱の流入を抑制します。夏の暑さが厳しい地域や日射の強い南向きの窓に適しています。

通常の複層ガラスとLow-E複層ガラスの性能比較。

性能指標 一般複層ガラス Low-E複層ガラス
熱貫流率 2.7 W/(㎡・K) 1.4 W/(㎡・K)
日射熱取得率 約80% 断熱型:約58%、遮熱型:約38%
紫外線カット率 約40% 約70〜80%

Low-E複層ガラスの特徴的な点は、可視光はある程度透過させながら、赤外線(熱線)を選択的に反射する点です。これにより、明るさを確保しながら断熱性能を高めることができます。

 

また、Low-E膜の放射率は0.1以下と非常に低く、一般的な単板ガラスの放射率0.85と比較すると、熱の放射を大幅に抑制できることがわかります。

 

複層ガラスの種類とバリエーション

複層ガラスには、用途や性能によってさまざまな種類とバリエーションがあります。主な種類を紹介します。

 

ガラス枚数による分類

  • ペアガラス(2枚構造):最も一般的な複層ガラスで、2枚のガラスと中空層からなります。
  • トリプルガラス(3枚構造):3枚のガラスと2つの中空層からなる高断熱タイプ。北海道や東北地方などの寒冷地で普及しています。

中空層の内容による分類

  • 乾燥空気封入タイプ:標準的な複層ガラスで、中空層に乾燥空気を封入しています。
  • アルゴンガス封入タイプ:中空層に空気より熱伝導率の低いアルゴンガスを封入し、断熱性能を向上させたタイプです。
  • 真空タイプ:中空層を真空にすることで、熱伝導をさらに抑制したハイエンドタイプです。

機能による分類

  • 防音複層ガラス:特殊な中間膜を使用して防音性能を高めたタイプ。
  • 防犯複層ガラス:破壊されにくい合わせガラスを使用したタイプ。
  • デザイン複層ガラス:中空層に樹脂製の格子を挟み込むなど、デザイン性を高めたタイプ。
  • ブラインド内蔵複層ガラス:中空層にブラインドを内蔵し、視線や日射をコントロールできるタイプ。

コーティングによる分類

  • 通常の複層ガラス:特殊なコーティングのないスタンダードタイプ。
  • Low-E複層ガラス(断熱型):室内の熱を反射して逃がさないタイプ。
  • Low-E複層ガラス(遮熱型):外部からの熱の侵入を防ぐタイプ。
  • Low-E複層ガラス(日射取得型):冬の太陽熱を取り込む性能を高めたタイプ。

これらの中から、地域の気候条件や窓の向き、求める性能などに応じて最適なタイプを選択することが重要です。例えば、寒冷地では断熱型Low-E複層ガラスやトリプルガラス、暑い地域では遮熱型Low-E複層ガラスが適しています。

 

LIXILの複層ガラスバリエーション詳細

複層ガラスの省エネ効果と経済性

複層ガラスの導入は、初期投資は必要ですが、長期的には省エネ効果による経済的メリットが期待できます。ここでは、複層ガラスの省エネ効果と経済性について詳しく見ていきましょう。

 

省エネ効果
複層ガラスの断熱性能向上により、以下のような省エネ効果が期待できます。

  1. 暖房エネルギーの削減:冬季は室内の暖かい空気が窓から逃げるのを防ぎ、暖房効率が向上します。一般的な住宅では、熱損失の約20〜30%が窓から生じるとされており、複層ガラスの導入により暖房エネルギーを10〜20%程度削減できるケースもあります。
  2. 冷房エネルギーの削減:夏季は外部からの熱の侵入を抑え、冷房効率が向上します。特に遮熱型Low-E複層ガラスを使用した場合、冷房負荷を大幅に軽減できます。
  3. 快適な室内環境の維持:窓付近の冷輻射(窓の冷たさを感じる現象)やコールドドラフト(窓付近の冷たい空気の下降流)が軽減され、室内全体を均一な温度に保ちやすくなります。これにより、過剰な暖房・冷房を避けられます。

経済性の検討
複層ガラスの導入コストと省エネ効果による経済的メリットを比較してみましょう。

  • 初期投資:単板ガラスから複層ガラスへの交換には、ガラス自体の価格差に加え、サッシの交換が必要になる場合もあります。一般的な住宅の窓全体の交換費用は、規模や種類によって数十万円から百万円以上になることもあります。
  • ランニングコスト削減:複層ガラスによる冷暖房費の削減効果は、地域の気候条件や住宅の断熱性能全体、使用状況によって異なりますが、年間で数千円から数万円の削減が期待できます。
  • 投資回収期間:初期投資額とランニングコスト削減額から計算すると、一般的に10〜15年程度で投資回収が可能と言われています。ただし、エネルギー価格の上昇や補助金の活用によって、この期間は短縮される可能性があります。

補助金・助成制度の活用
複層ガラスを含む省エネリフォームには、国や自治体による補助金・助成制度が利用できる場合があります。

  • 国の補助金:「こどもエコすまい支援事業」や「住宅省エネ2023キャンペーン」などの制度があります。
  • 自治体の助成金:地方自治体独自の省エネリフォーム助成制度も多数あります。

これらの制度を活用することで、初期投資の負担を軽減し、投資回収期間を短縮することができます。

 

長期的な価値
複層ガラスの導入は、単なるエネルギーコスト削減だけでなく、以下のような長期的な価値も生み出します。

  1. 住宅の資産価値向上:省エネ性能の高い住宅は、将来的な資産価値の維持・向上につながります。
  2. 居住環境の快適性向上:結露防止や室温ムラの軽減により、快適な居住環境が実現します。
  3. 環境負荷の軽減:エネルギー消費量の削減によるCO2排出量の削減に貢献します。

複層ガラスの導入を検討する際は、初期コストだけでなく、これらの長期的なメリットも含めて総合的に判断することが重要です。

 

複層ガラスの施工と導入時の注意点

複層ガラスを導入する際には、いくつかの重要な注意点があります。適切な施工と選択によって、複層ガラスの性能を最大限に引き出すことができます。

 

既存住宅への導入方法
既存住宅に複層ガラスを導入する方法は主に3つあります。

  1. ガラス交換のみ:既存のサッシをそのまま使用し、ガラスだけを交換する方法です。ただし、古いサッシの場合、複層ガラスの重量に耐えられない可能性があります。また、サッシ自体の断熱性が低いと、窓全体としての断熱効果が限定的になることがあります。
  2. サッシごと交換:窓枠とガラスを一体で交換する方法です。最も効果的ですが、工事の規模が大きくなり、コストも高くなります。
  3. 内窓の追加(二重窓化):既存の窓の室内側に新たに窓を追加する方法です。既存の窓を活かせるため、比較的コストを抑えられます。また、二重窓にすることで、単純な複層ガラスよりも高い断熱・防音効果が期待できます。

サッシの選択
複層ガラスの性能を最大限に発揮するためには、サッシの選択も重要です。

  • 樹脂サッシ:熱伝導率が低く、断熱性に優れています。寒冷地での使用に適しています。
  • アルミ樹脂複合サッシ:アルミの強度と樹脂の断熱性を兼ね備えています。
  • アルミサッシ:強度があり価格も比較的安価ですが、熱伝導率が高いため断熱性はやや劣ります。

施工上の注意点
複層ガラスの施工時には、以下の点に注意が必要です。

  1. 気密性の確保:複層ガラスとサッシの間の気密性が不十分だと、隙間から熱が逃げてしまい、断熱効果が低下します。適切なシーリング処理が重要です。
  2. 結露対策:複層ガラス自体は結露しにくいですが、サッシ部分で結露が発生する場合があります。特にアルミサッシでは注意が必要です。
  3. 重量への配慮:複層ガラスは単板ガラスより重いため、既存のサッシに取り付ける場合は、耐荷重性を確認する必要があります。
  4. 遮熱・断熱バランス:Low-E複層ガラスを選ぶ際は、地域の気候や窓の方角に応じて、遮熱型と断熱型のどちらが適しているかを検討する必要があります。

メンテナンスと耐久性
複層ガラスのメンテナンスと耐久性についても理解しておきましょう。

  • 耐用年数:適切に施工された複層ガラスの耐用年数は一般的に15〜20年程度とされています。
  • シール劣化:長期間使用すると、ガラス間のシール材が劣化し、中空層に湿気が入り込む場合があります。これにより、ガラス内部に曇りが生じることがあります。
  • 修理の難しさ:複層ガラスは一体構造のため、破損した場合は部分修理ができず、全体交換が必要になります。
  • 清掃方法:通常のガラス清掃と同様ですが、強い衝撃を与えないよう注意が必要です。

複層ガラスの導入を検討する際は、これらの点を踏まえ、信頼できる業者に相談することをおすすめします。適切な製品選択と施工により、複層ガラスの性能を最大限に活かし、快適な住環境を実現することができます。

 

複層ガラスと二重サッシの違いに関する詳細情報