フランジナット規格と種類選定の完全ガイド

フランジナット規格と種類選定の完全ガイド

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フランジナット規格完全解説

フランジナット規格の基礎知識
📋
JIS B1189規格概要

国際基準に準拠した最新規格の詳細

📏
サイズと寸法規格

M5~M20まで対応する標準寸法表

🔧
材質別特性比較

ステンレス、鉄、チタン材質の選定ポイント

フランジナット規格の基本概念とJIS B1189の詳細

フランジナットの規格はJIS B1189:2014に規定されており、ISO規格に準じた国際基準として制定されています。この規格では、従来の日本独自規格である付属書JA規定と、国際標準規格の2つのサイズ体系が併存している状況です。
現在市場で主流となっているのは、付属書JA規定(旧来からの規格)に基づくフランジナットです。例えば、M10サイズの場合、ISO準拠の現行規格では六角対辺が15mmとなっているのに対し、付属書JA規定では14mmとなっており、日本国内では14mmの方が広く流通しています。
フランジナットの基本的な構造は以下の要素から構成されます。

  • 六角部:工具による締付け部分
  • フランジ部:荷重分散を行うツバ状の部分
  • セレート:緩み止め効果のあるギザギザ部(有無を選択可能)

この一体構造により、通常のナットと比較してワッシャーが不要となり、組立て工程の簡素化と誤組立ての防止を実現しています。

フランジナット規格別サイズ表と寸法詳細

現在主流の付属書JA規格(旧来規格)の詳細寸法は以下の通りです:

ねじの呼び 平径(s) 対角(e) フランジ径(dc) 全高(m) 六角部高さ(m1) フランジ厚さ(c)
M3×0.5 5.5mm 6.08mm 8mm 3.7mm 2.4mm 1mm
M4×0.7 7mm 7.74mm 10mm 4.2mm 3mm 1.1mm
M5×0.8 8mm 8.87mm 12mm 5.5mm 3.3mm 1.1mm
M6×1.0 10mm 11.05mm 13mm 6mm 4mm 1.5mm
M8×1.25 12mm 13.25mm 17mm 7.5mm 5mm 1.5mm
M10×1.5 14mm 15.5mm 19mm 9mm 6mm 1.8mm

ISO準拠の現行JIS規格では、より大きなサイズまで対応しており、M20まで標準化されています:

ねじの呼び 六角対辺 フランジ外径 フランジ厚み 高さ
M5 8mm 11.8mm 1.0mm 5.0mm
M6 10mm 14.2mm 1.1mm 6.0mm
M8 13mm 17.9mm 1.2mm 8.0mm
M10 15mm 21.8mm 1.5mm 10.0mm
M12 18mm 26.0mm 1.8mm 12.0mm
M16 24mm 34.5mm 2.4mm 16.0mm
M20 30mm 42.8mm 3.0mm 20.0mm

細目ねじも規格化されており、M8(1.0mm)、M10(1.0mm、1.25mm)、M12(1.25mm、1.5mm)などの選択肢があります。

フランジナット材質規格と特性比較

フランジナットの材質は用途に応じて以下の種類から選定します:
🔩 ステンレス鋼(SUS304/316L相当)

  • 耐食性に優れ、屋外や湿潤環境に適用
  • 強度等級:A2-50相当
  • 主要型番:3FLNCL系(セレート付)、3FLN系(セレート無)

⚙️ 鉄(SWCH相当)

  • 一般的な建築・機械分野で使用
  • 表面処理:三価クロメートユニクロ
  • 強度等級:4T相当
  • 主要型番:WFLNCL系(セレート付)、WFLN系(セレート無)

✨ チタン合金

  • 軽量かつ高耐食性が要求される特殊用途
  • 航空機、医療機器、海洋構造物などに使用
  • 主要型番:TIFLNCL系(セレート付)、TIFLN系(セレート無)

🏗️ BUMAX88(スーパーステンレス)

  • 超高耐食性と高強度を併せ持つ特殊鋼
  • 化学プラント、海水環境での使用に最適
  • 主要型番:BU8.8FLN系

材質選定時の重要なポイントは、接触する相手材との電位差を考慮することです。異種金属接触による腐食を防ぐため、同一材質もしくは近い電位を持つ材質同士を組み合わせることが推奨されます。

 

フランジナット規格に基づく施工方法と注意点

フランジナットの施工において、規格に準拠した正しい取付け方法を理解することが重要です。

 

📐 適正トルク値の設定
各サイズに応じた締付けトルクの管理が必要です。過度な締付けはフランジ部の変形や破損を引き起こし、不足は緩みの原因となります。

 

🔄 緩み止め効果の活用
セレート付きフランジナットは、フランジ底面のギザギザが相手材に食い込むことで緩み止め効果を発揮します。この効果を最大限活用するため、相手材の表面状態(塗装、メッキ厚など)を考慮した選定が必要です。
⚡ 電気的接続での注意点
電気機器の接続では、フランジナットの導電性を活かした施工が可能です。従来のスプリングワッシャーを併用する方法と異なり、フランジナット単体で導電性と締結力を同時に確保できます。
🛠️ 工具選定のポイント
付属書JA規格品を使用する場合、対辺寸法が従来サイズのため、一般的なスパナ・レンチが使用可能です。一方、ISO準拠品では対辺が大きくなるため、対応する工具の準備が必要となります。
施工時の品質管理では、以下の検査項目を設定することを推奨します。

  • トルク値の記録管理
  • フランジ部の変形有無の確認
  • セレート部の食い込み状況確認
  • 電気的接続が必要な場合の導通確認

フランジナット規格選定時の独自検討ポイント

一般的な規格解説では触れられない、実際の現場で重要となる選定ポイントを解説します。

 

🌡️ 温度環境での材質劣化対策
高温環境(150℃以上)では、ステンレス鋼でも炭化物析出による粒界腐食が発生する可能性があります。このような環境では、BUMAX88インコネル系合金製フランジナットの採用を検討すべきです。
🔬 微細振動下での緩み防止
従来のセレート付きフランジナットでも、微細で連続的な振動環境では緩みが発生することがあります。この場合、フランジ底面に嫌気性接着剤を塗布する手法や、ダブルナット構造との併用が効果的です。

 

💧 防水・防塵性能の向上
IP等級が要求される機器では、フランジナットの選定だけでなく、Oリング溝付きワッシャーとの組み合わせや、シーリング材の併用による防水対策が必要となります。

 

⚖️ 法規制対応での材質証明
建築基準法消防法が適用される構造物では、使用する締結部材の材質証明書試験成績書の提出が求められる場合があります。特にJIS認証品の使用が指定されることが多く、海外製品では対応できない場合があります。

 

🔄 メンテナンス性を考慮した選定
定期点検が必要な設備では、フランジナットの再使用可能回数を考慮する必要があります。セレート付きタイプは初回締付け時に相手材に食い込むため、再使用時の緩み止め効果が低下します。メンテナンス頻度が高い箇所では、セレート無しタイプ液状ガスケットの併用が推奨されます。

 

これらの検討ポイントを総合的に評価することで、長期間にわたって安定した性能を発揮するフランジナット選定が可能となり、建築物や設備の信頼性向上に寄与します。