
トルクスは1967年にアメリカのテキストロン・カムカー社によって開発された六角星形のねじ頭部形状の規格です。当初は商標登録された名称でしたが、構造に関する特許が失効した後、国際的な標準化が進みました。
日本では、JIS B 1015:2018として「おねじ部品用ヘクサロビュラ穴」の規格が制定されています。この規格では、ボルト及び小ねじ及びタッピンねじ用のヘクサロビュラ穴の形状及び基準寸法、並びにゲージによる検査方法について規定されています。
建築業界においても、高精度な締結が求められる構造部材や金属建具において、このJIS規格の活用が増加しています。
トルクスのサイズは「T」で始まる数字で表され、この数字が大きいほどネジ穴も工具先端も大きくなります。建築現場で使用される主要なサイズは以下の通りです:
ヘクサロビュラ穴の寸法は、ISO 10664の国際規格に準拠しており、T形の基準寸法はねじの呼び径に応じて決定されます。
トルクスネジの最大の特徴は、工具とネジ穴が面で接触することです。従来の六角穴付きボルトが点で接触するのに対し、トルクスは曲線で構成された穴形状により、工具を穴に入れた際に面接触となります。
この面接触により以下の機械的優位性が実現されます。
建築用途では、特に高力ボルト接合や重要な構造接合部において、この高いトルク伝達効率が安全性の向上に直結します。
JIS B 1015では、ヘクサロビュラ穴の検査方法についても詳細に規定されています。検査は専用のT形ゲージを使用して行われ、穴の形状精度と寸法精度を確認します。
検査項目は以下の通りです。
建築現場での品質管理においても、これらの検査基準を満たすことで、長期的な構造安全性を確保できます。
建築業界におけるトルクスネジの活用は、従来のプラスねじや六角穴付きボルトでは対応困難な高精度締結が求められる箇所で特に有効です。
構造用鋼材での活用事例。
品質管理のポイント。
また、トルクスには「タンパープルーフ・トルクス」という、いたずら防止機能を備えた規格も存在します。ネジのリセス中央部に突起を設けることで、一般的なドライバーでは操作できない仕様となっており、公共建築物のセキュリティ向上に活用されています。
建築現場においては、JIS規格に準拠したトルクスネジの採用により、施工品質の向上と長期耐久性の確保が可能となります。特に高層建築や重要構造物においては、この規格化された高性能締結システムの導入が今後さらに拡大していくことが予想されます。