
フラットバー規格は、JIS G 3194「熱間圧延平鋼」で詳細に定められています。この規格では、フラットバーを「長方形の断面をした棒鋼で、製品は4面とも圧延される。板厚は一般に5mm以上、高さ(幅)は500mmを超えない」と定義しています。
フラットバーの寸法表記は、「H(厚さ)× B(幅)× L(長さ)」の順序で記載されます。例えば「9.0 × 50 × 6000」と表記された場合、厚さ9.0mm、幅50mm、長さ6000mmを意味します。
注意すべき点として、一部のメーカーや資料では厚さと幅の表記順序が異なる場合があります。発注時には必ず寸法の確認を行い、誤発注を防ぐことが重要です。
フラットバーで使用される主要材質は、用途に応じて選択されます。最も一般的なSS400から、機械構造用のS45C、S50Cまで幅広い選択肢があります。
SS材(一般構造用圧延鋼材)
S45C材(機械構造用炭素鋼)
S50C材(機械構造用炭素鋼)
材質選択では、要求される機械的性質、加工性、コストバランスを総合的に判断することが不可欠です。
効率的なフラットバー寸法選定には、製品設計段階からの検討が重要です。市場で流通している標準サイズを把握し、可能な限り標準寸法を活用することでコスト削減と納期短縮が実現できます。
寸法選定のチェックポイント
標準在庫品の活用メリット
標準在庫品を選択することで、以下の利点が得られます。
特殊寸法が必要な場合でも、標準寸法からの加工で対応できるかを検討し、トータルコストでの比較判断を行うことが賢明です。
フラットバー選択では、材料費以外の隠れたコスト要因を見落としがちです。これらの要因を事前に把握することで、真のコスト最適化が可能になります。
表面仕上げによるコスト差
定尺長さと歩留まり効率
フラットバーの定尺長さは5.5mまたは6mが標準です。製品長さと定尺長さの関係を最適化することで、材料歩留まりを大幅に改善できます。
例:製品長さ1.8mの場合
加工性とコストバランス
材質選択では、単純な材料単価だけでなく、加工時間、工具寿命、不良率なども含めた総合コストで判断することが重要です。
適切なフラットバー規格選択により、製造現場での作業効率を大幅に向上させることができます。特に反りや歪みの抑制、加工工数の削減において顕著な効果が期待できます。
反りと歪みの制御技術
鋼板からの切り出しでは熱切断による熱応力で反りや歪みが発生しますが、フラットバーを使用することでこれらの問題を根本的に解決できます。
加工工程の最適化
従来の鋼板加工では「切断→加工→仕上げ」の工程が必要でしたが、フラットバー使用により「加工→仕上げ」に短縮可能です。
工程短縮による効果。
ニアネットシェイプの活用
異形平鋼などの特殊形状フラットバーを活用することで、最終製品により近い形状(ニアネットシェイプ)での材料調達が可能になります。これにより自社加工工数を最小限に抑え、設備投資や光熱費などの間接コストも大幅に削減できます。
フラットバー規格の深い理解と適切な選択により、製造業における競争力向上と収益性改善を同時に実現することが可能です。単なる材料選択を超えて、製造プロセス全体の最適化視点でフラットバー規格を活用することが、現代の製造業に求められる重要なスキルといえるでしょう。