
住宅用フロアコンセントの開口寸法は、パナソニックのF型アップコンを基準として標準化されています。最も普及している住宅用製品では、以下の開口寸法が採用されています。
丸型フロアコンセントの開口寸法
角型フロアコンセントの開口寸法
住宅用フロアコンセントの特徴として、ワンプッシュで床から飛び出すアップ式構造が採用されており、普段は床面とフラットになっています。この設計により、リビングルームなどの美観を重視する空間でも違和感なく設置できます。
住宅用製品は一般的にケーブル工事用ボックス付きで提供されるため、アウトレットボックスや丸穴カバーが不要となり、施工の簡素化が図られています。また、安全扉付きコンセントが標準装備されており、片刃挿入を防止する構造となっています。
色彩バリエーションも豊富で、アイボリー、ブラウン(ナチュラルバーチ)、ブラウン(バーチ)、ダークブラウン(オーク)の4色から選択可能です。これにより、床材の色調に合わせた統一感のある仕上がりを実現できます。
業務用フロアコンセントは、主にOAフロア(フリーアクセスフロア)環境での使用を前提として設計されており、住宅用とは異なる開口寸法が設定されています。
標準型フリーアクセスフロア用アップコンの開口寸法
インナーコンセントスクエア90の開口寸法
インナーコンセントスクエア70の開口寸法
業務用製品の特徴として、電力2個+弱電用モジュラ最大3個の取り出しが可能な製品や、電力2個+弱電用モジュラ2個対応の製品など、多様な配線ニーズに対応できる設計となっています。
オフィス環境では頻繁なレイアウト変更が発生するため、はさみ込み固定仕様が採用されており、工具を使わずに設置・撤去が可能です。これにより、メンテナンス性と作業効率の向上を図っています。
また、業務用製品では耐久性が重視されており、-10℃~+40℃の使用周囲温度に対応しています。ただし、床暖房が施されている床に取り付ける場合は、熱源から十分に離して施工する必要があります(目安50mm以上)。
近年の建築では、天井高の確保や構造的制約により床高が制限される場合が増加しており、低床用フロアコンセントの需要が高まっています。
低床用フリーアクセスフロア用アップコンの開口寸法
低床用製品の最大の特徴は、必要床仕上げ高さが41mm以上と、標準型の58mm以上と比較して大幅に薄型化されている点です。これにより、構造上の制約が厳しい環境でもフロアコンセントの設置が可能となります。
ただし、低床用製品では取付可能パネル厚みが14mm以下に制限されるため、使用するフロアパネルの仕様を事前に確認する必要があります。また、プレート仕上がり高さが11.6mmと通常の製品より高くなるため、車椅子でのアクセス性や清掃性への配慮が必要です。
床高50mm対応製品の開口寸法
モノタロウで取り扱われている製品の中には、床高50mmより対応可能な超低床タイプも存在します。これらの製品は、従来では設置困難だった極めて床高の低い環境での施工を可能にしています。
低床用製品を選択する際は、将来的なメンテナンス性も考慮する必要があります。床高が低いほど配線スペースが制限されるため、ケーブルの取り回しや点検作業の難易度が上がることを理解しておくことが重要です。
フロアコンセントの適切な選択には、開口寸法と床高の関係を正確に理解することが不可欠です。床高が不足すると、コンセント機能が十分に発揮できないだけでなく、安全性にも問題が生じる可能性があります。
床高による製品分類と対応開口寸法
📊 超低床環境(41mm以上)
📊 標準低床環境(58mm以上)
📊 住宅標準環境(60mm以上)
📊 住宅角型環境(63mm以上)
📊 高床環境(70mm以上)
📊 充実機能環境(90mm以上)
床高と開口寸法の関係で特に注意すべき点は、タイルカーペットの厚み(一般的にt=6.5mm)が必要床高に含まれることです。また、床暖房システムが導入されている場合は、熱の影響を考慮してより大きな床高が推奨されます。
構造設計段階では、将来的な設備変更の可能性も考慮して、余裕のある床高を確保することが望ましいとされています。特にオフィスビルでは、テナントの要求に応じて配線設備を変更する可能性が高いため、フレキシビリティを重視した設計が求められます。
フロアコンセントの開口加工は、施工品質と安全性に直結する重要な工程です。適切な加工が行われないと、コンセントの固定不良や防塵性能の低下、さらには床構造の強度不足につながる可能性があります。
開口加工の基本原則と寸法管理
🔧 寸法精度の確保
開口寸法の許容差は製品により異なりますが、一般的に±2mm程度の精度が求められます。パナソニックのフリーアクセスフロア用製品では、Φ80~90mmと10mmの幅を持たせていますが、これは施工誤差を吸収するためのマージンです。実際の加工では、製品仕様書に記載された推奨寸法での施工が重要です。
🔧 フロアパネル強度の保持
フロアパネルへの開口は、パネル強度の低下を招く可能性があります。特に支柱間の中央部や端部への開口は避け、補強の要否を構造設計者と協議することが必要です。角型開口の場合、角部にΦ16mmの丸み処理を施すことで応力集中を緩和できます。
🔧 ディンプル形状・リブ形状フロアへの対応
アクセスフロアの裏面がディンプル形状またはリブ形状の場合、十分な取り付け強度を確保するため、専用の取付プレート(NE64988)の使用が推奨されています。この対応を怠ると、使用中にアップコンがぐらつく原因となります。
特殊環境での加工配慮事項
⚠️ 防水・防塵性能の確保
食品工場や医療施設などの特殊環境では、開口部周辺のシーリング処理が重要です。切削加工により生じる微細な隙間から異物が侵入することを防ぐため、適切なシーリング材の選定と施工が必要です。
⚠️ 静電気対策環境での配慮
精密機器を扱う環境では、開口加工時に発生する金属粉や切削屑が静電気の原因となる可能性があります。加工後の清掃を徹底し、必要に応じて導電性床材との整合性を確認することが重要です。
⚠️ 床暖房システムとの干渉回避
床暖房が設置されている場合、加工位置の選定には特別な注意が必要です。熱源から50mm以上離すことが推奨されており、事前に床暖房システムの配管図面を確認し、干渉のない位置を選定する必要があります。
品質管理と検査体制
📋 加工精度の検査手順
📋 仮組み確認の実施
実際の製品取り付け前に、仮組みによる適合性確認を行うことで、施工不良を未然に防ぐことができます。特に初回施工時や新製品導入時には、この確認作業が重要となります。
パナソニック配線器具総合カタログには、各製品の詳細な取付条件が記載されており、施工前の確認に有用です。
https://www2.panasonic.biz/jp/densetsu/haisen/switch_concent/floor_outlet/
フロアコンセントの開口加工は、建築物の長期使用を考慮した品質確保が求められる重要な工程です。適切な加工技術と品質管理により、安全で機能的なフロアコンセント設備を実現することができます。